異世界の淫紋ダンジョン前の宿屋で働くおっさんの話

たこわさふりかけ

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エピソード2 お嬢様とメイド、淫紋ダンジョンの洗礼を受ける。

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 女騎士は淫紋ダンジョンに向かって歩を進めていた。

 歩く最中に考えているのは、金の使い道である。

 前回はおっさんにいいようにイカされまくり、イキ果て、ぼったくられ——いや、超過料金を払うことになってしまったので、殆ど儲けがなかった。

 なので、今回はもう少し深い階層まで潜り、前回より多めにアイテムを手に入れて、金に十分余裕を持たせてから黒魔女の館へ、おっさんの下へと向かうつもりである——が、果たしてこれで大丈夫なのか? という疑念がないではない。

 より深い階層へ潜るということは、より高いレベルの淫紋が刻まれるということ。

 並みの男を相手取るのであればアヘりまくって前後不覚になることなどなく、むしろ「何をチンタラ腰を振っているのだ! さっさと射精しろ! 子宮を喜ばせろっ!」と檄を飛ばすところなのだが、相手はあの精強無比なるおっさんであり、女騎士が求めているのはそのおっさんとの尋常なるセックスである。

 果たして淫紋のレベルが上がった状態でおっさんとセックスした場合、どれくらいイクことになるのか……。もしこの前以上にイキまくらされてイキ果ててしまえば、超過料金も増すことになり、そうするとまた儲けは少なくなってしまうが……。

「考えても仕方がないな、こればかりは」

 あれこれ考えてみるものの、答えなど出るわけもない。結局のところヤってみなければわからないのがセックスである。

「出たとこ勝負……いや、出されたところ勝負というやつか。ふふっ」

 おっさんとの激烈なるセックスを想像しただけでおまんこが濡れてきた。

(自分の股を淫紋ダンジョンに入る前からこんなビショビショビッチにしたおっさんにはきっちり責任を取って貰わなければな……)

 などとわけのわからないことを思いつつ到着した淫紋ダンジョンの入り口。

 そこには、

「む? 何だこれは?」

 普段見ることのない人だかりが出来ていた。

 順番待ち……などという無粋なものはここにはない。

 あるとすれば珍しいもの見たさのギャラリーだろう。そう予想して——実際それは当たりだった。

「馬車?」

 もちろんのこと、馬車は珍しくともなんともない。

 珍しいのは、街から徒歩五分圏内のこの場所に馬車で来ている者がいるということ——つまりは身分の高い者がいるということだ。

「ふむ……」

 女騎士はドスケベで淫乱だが騎士である。故に馬車に刻まれた家紋を見ればどこの貴族かはわかる。なので家紋を探したところ、馬車の側面に刻印されていたのは花の紋様であった。これはこの淫紋ダンジョンからは少しばかり離れた地域に住む貴族のものだと記憶している。

 恐らくは、物見遊山。

 淫紋ダンジョンは観光地としても名高い場所であるので、どんなものかと見物しにくる客はそれなりに多い。(当たり前だが子供は来てはいけない。おっさんの世界で例えるなら秘宝館といったところである)

 貴族というのは物好きである。自分の仕える主人も珍しい物が好きだ。金持ちほどそういう遊びが好きな傾向にある気がする。……まあ物好きではなくとも、淫紋ダンジョンを一目見たいという気持ちはわかる。 

 伝説の魔王が作りしダンジョン。魔法に造詣の深い者であれば何か感じるものがあるかもしれない……もちろん、性的な意味での感じるではなく、魔法の深淵とかそういう何かを感じるという意味だ。……まあ何にせよ、少しすればこの馬車もどこかに行くだろう……。

 女騎士は呑気にそう思っていた。

 しかしその呑気さも、ギャラリーが発する会話を耳にして吹き飛んだ。

「淫紋ダンジョンに入ったらしいね、貴族のお嬢様が」

「お付きのメイドも一緒だってさ」

「ふーん……そうなんだ」

「ねぇ、結構長い時間入ってない?」

「こういうダンジョンに入るの初めてらしいし、迷ってるんじゃない?」

「えー? そうかな? ここ殆ど一本道じゃん」

「一階層を見物するにしては長いよね~」

 何気ない会話。

 けれど、内容は恐ろしいものであった。

「い、いかん! いかんぞこれは!」

 女騎士は慌てて馬車に駆け寄ると、そこにぼけーと突っ立ていたフルアーマーの騎士に声を掛けた。

「おい! そこの騎士! お嬢様とメイドとやらが中に入ってどれくらい経った!?」

「え? さ、さあ……? 小一時間ほどかと……?」

 女騎士の剣幕に、騎士は驚いてか反射的に答えていた。

「なに!? その声、貴様男だな! 貴様がメイドとお嬢様の相手をするのか!?」

「そ、それは……まあ……一応……」

 おどおどとした態度。

 騎士ではあるが——否、真面目な騎士であるからこそ、この後のセックスを考えると浮き足立っているのか、はたまた緊張しているのか。

「二人はどこまで潜ると言っていた!?」

「どこまで?」

「何階層まで行くつもりだったのかと聞いている!」

「さ、さあ……行けるとこまでと聞いておりますが……」

「なん——だとっ!?」

 女騎士は絶句した。

 同じく、何だ何だと耳を澄ませていたギャラリーにもざわめきが奔った。

「え!? 一階層を攻略したら出てくるんじゃなかったの!?」

「初めてで更に下に!? う、嘘でしょ!?」

「やばいやばいやばい! やばいって!」

「誰か! 急いで黒魔女に連絡しろ!」

 最後の叫びは女騎士であった。

 通信用の魔法はある。小さな水晶を媒介に、魔力を用いて思念での通信を行う。水晶に魔力を登録した者同士でしか使えないが、長距離通信が出来るので重宝されている。おっさんの世界で例えるなら、水晶が携帯電話で魔力が電話番号と言ったところだ。なので、誰から連絡が来たかすぐわかる仕組みになっている。

 女騎士もそれを持っているので自分が連絡してもいいのだが、これから起こることを考えれば役割分担をする必要があった。

「え? え? 何ですか? このダンジョン、危険はないんですよね?」

 慌ただしさを増すこの場に於いて、未だ状況を理解しておらぬ騎士は震えた声で尋ねることしか出来ない。

 騎士は基本的に真面目だ。淫紋ダンジョンについてなど、入るとエッチがしたくなるダンジョンとしか思っていないに違いない。

 そして、それは正しい。

 間違っているのは認識だ。

 この騎士が思い描いているエッチな気分と、ダンジョンに入った者の身に湧き上がるエッチな気分というのは、全く異なるものである。

 ひのきの棒とドラゴン殺しくらいに異なるものなのである。

「危険はない。だがそれ以上の面倒事が起こる可能性が高い」

「え? 何ですかそれは?」

「それは——」

 淫紋ダンジョン歴の長い女騎士が一から懇切丁寧に説明しようとしたまさにその時、淫紋ダンジョンの入り口付近に輝きが奔った。

 転移の魔法陣の光である。

 現れたのは聞いた話しの通り、二人。

「本当に散歩するだけのダンジョンでしたわね」

 一人は成人したばかりと見える、まだ未成熟さを感じさせる肉体をドレスに包んだ、金髪ツインテールが眩しいお嬢様。

「お散歩をお楽しみになられたようで何よりです、お嬢様」

 もう一人は、長い黒髪と知的な眼鏡が印象的なメイド。

 メイドは色々とダンジョン内で獲得したアイテムで膨らんだ袋を持っている。

(あのアイテムの量! やはり一階層だけではないな!)

「そこの二人! そこで止まられよ!」

 女騎士は一瞬で状況を看破すると、貴族のお嬢様相手に失礼と思いながらも叫んだ。

「何ですの?」

「さあ? どこかの騎士のようですが……?」

 一方で、二人はきょとんと首を傾げた。が、それでも女騎士は続けた。

「その魔法陣から出てはいけません! 一歩でも外に出れば淫紋の効果が顕れてしまいます!」

「淫紋ダンジョンに入ったのだから、淫紋を刻まれるくらいは覚悟の上ですわ。そのような覚悟なくここに足を踏み入れる者がいるとでも?」

「いやそれはおっしゃる通りですが! ですが!」

(こいつぶん殴りてぇ……!)と内心では思いながらも、そこは流石の女騎士。本心を押し殺して説得を試みる。

「とにかく質問させて頂く! お二人は何階層まで下りられましたか!?」

「えぇっと……何階層だったかしら?」

「四階層までです。お嬢様」

「四階!? は、初めて淫紋ダンジョンに潜って四階層まで下りられてしまったのですか!?」

「え、えぇ……そうですわ」

 女騎士の驚き様。更にはギャラリーからも悲鳴が聞こえた。さしものお嬢様もこれには不味いことをしてしまったのではないか? という不安に駆られたが、そこは貴族精神で動揺を押し潰した。

 貴族とは常人とは異なる者。

 どのような時でもその高貴なる身分に与えられた精神に相応しい行いをせねばならない。

 淫紋ダンジョンを出た後でもそれは変わらない。

「皆様、何か驚かれている様ですけれど、少々驚きすぎではありませんか? 私も淫紋ダンジョンについてはきちんと調べてきました。一階層は中出し十発でしょう? そして確か四階層は……」

「一階層は中出し十発! 二階層はケツ穴に中出し十発! 三階層はクリトリスの感度上昇! 四階層は乳首の感度上昇! です!」

「え、ええ……。知っておりますわ。もちろん」

「なので! なのでどうかその場に止まりこちらが手配した者の到着を——!」

「その為に、きちんと婚約者を連れてきているのです。二十発というのがどれだけ大変かは女の身として存じ上げませんが、そこの彼ならばきっとこなしてくれるでしょう。誰とも知らぬ殿方の……その……だ、男性器をお借りになるまでもありませんわ」

 お嬢様は憮然とした態度でそう言い放つと、馬車の方に視線をやった。

 それを受けて、さっきまでふにゃふにゃとした態度だった騎士は、びしっと背筋を伸ばした。

 どうやらこの騎士が婚約者らしい。

 女騎士はそれを知ったが故に尚更不安になったが、彼女が更なる言葉を紡ぐ前に、お嬢様「それでは」と魔法陣から外に足を踏み出し、一歩、二歩と進んで——

「なっ!? んっ!? ひゃっ!? な、なんですのこれ!? ち、乳首と、あそこが——あっ、あっ、あひいいいいいいいいいい~~~!!!」

 ガクガクガクガクと震え、その場に跪いた。

 次いで、ぶっしゃああああああああああ!!! という盛大な音と共に吹き出した潮がドレスから滲み出し、地面を染めていく。

「あっああっ!? ひっ!? い、いやぁ……!? なんですの、これぇ……あ、熱いお汁がぁ……あっ、あ、あそこから……くひっ!? ち、乳首!? 乳首ぃ!? 布と、こすれた、だけっ、でぇ……あっ!? だ、だめぇ!!! これだめぇ!!! くぅっ!? うぅん~~~~~っ!!!!」

「お、お嬢様——はっ、はうっ!? こ、これは——あっ、くぅ、っ……!」

 お嬢様の後に続いて外に出てしまったメイドも、その身を折り、荒い呼気を吐き出し始めた。

 そう。二人に刻まれし淫紋が目を覚ましたのである。
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