106 / 167
第四章 世界の工場
インジスカン王国の医師のレベル
しおりを挟む
汲広、省語、多田之助がケネヴァ・フォン・バーラルの治療を終えて戻って来たのは、アカツキ伯爵領の城下町、ハーパヤに唯一ある治療院。
そこにはストレッチャーを準備していつお呼びがかかるか待ち構えていたこの治療院の医師、ゴードン・ラリーの姿があった。
ちなみにストレッチャーというのは折りたためて自在車の付いた寝台。救急車でけが人、病人を寝かせたまま運ぶ、あれである。
「お姫様をこちらへ運ぶ準備は整い… ってあれ?全員戻って来たのですか?」
「あぁ。治療が終わったのでな」
ゴードンはストレッチャーを仕舞い、姫様が治ったというのに浮かない顔をしている3人を、とりあえず、待合室の椅子に座らせ、テーブルを持って来てお茶を注ぎ、自分も椅子に座る。
「姫様は治ったのでしょ?何故そんな苦虫をかみつぶしたような顔を皆さんしているのですか?」
「いやなに、あまりにも治療が簡単だったのでな」
汲広の後に、省語が続ける。
「我々は、バーラル子爵が、色々な名医に診せて、それでも異常を発見できなかったので、大病を患っているものだと思って、場合によっては日本で手術をさせる心づもりであちらに行ったのだよ。そしたら我々の画像診断で原因がすぐに発見でき、短時間で処置ができ、経過は見ないといけないのだが、それでも姫様は今後快方に向かうだろうと確信を持っている」
「それは、つまり…」
「こちらの名医様は、たった1時間もかからずに治療できるものを、原因すらつかめず何の処置もできないことに我々3人は頭を抱えているのだよ」
汲広は、
「レベルが低い。低すぎる」
と言い、4人に一時沈黙が走った。すると、汲広は、
「私は、どうもこの国の医療レベルを知り、国民のために医者のレベルアップを図らねばならぬようだ」
再び4人は沈黙に包まれた。
*
領主邸に戻った汲広は、代官のミラトに指示を出す。
「ミラト、国中の名医をリストアップし、どこへ行けば会えるか調べてくれ」
「いきなりどうしたのですか?アカツキ伯爵?」
汲広は今日の事をミラトに話して聞かせた。汲広は、
「この国の医者のレベルを知りたい」
そう、ミラトに言うのであった。
「あと、これは時間がかかってもいいのだが、医者という高い立場の待遇に溺れず、患者を救いたいと本気で思っている医者もリストアップして、治療院や自宅の住所を調べておいてくれ」
「と、言うと、教育されるのですか?」
「このままこの状態を見過ごせん。何らかの処置を施す」
汲広は、ミラトとの話を終えると、報告のため、念話を飛ばした。
(アカツキ伯爵、今いいですか?)
(大丈夫だ。よくやってくれた。バーラルのお姫様を無事、治療できたそうではないか)
(そのことについて、気づいたことでお話しがあります)
汲広は一度深呼吸をして、
(我々は3人でまず、診断をしました。全員一致で胃に大きめのポリープがあると3人とも同じ意見でした。その意見にたどり着くまで、10分程です)
(ふむ)
(そこで、こちらの西洋医で、魔術医療の心得もある多々身省語に処置を任せました。魔術医療を駆使してポリープを小さくして、豆粒くらいにしたところで切除しました。処置が終わったのが姫様の部屋に到着してから30分くらいです)
(ふむ)
(それから、3人で腹部をもう一度画像診断し、念のため、省語が体全体を画像診断で異常がないか調べました。姫様の部屋に入ってから1時間もかからずに全ての診断を終えました)
(…つまり、こちらでは名医と言われる者が、原因も分からず取る手段を持たなかった病気を、お前達は1時間もかからずに完治させたということか)
(そのとおりです)
(ふむ。こちらの国の医者と、お前達とでは、医療技術に大きな差があるということだな)
(そのとおりです)
汲広は、噴き出した汗を拭い、一口茶を飲んだ後、深呼吸して、
(私は、この国の医療をレベルアップさせたいと思います)
(それはいいことだ。こちらも王に話しを通しておく)
*
インジスカン王国では早朝、日本では仕事が一段落し、仕事を終えようかというような時間帯である。
汲広は”トンデモな世界の第一人者”の人脈を生かし、医療ルポライターをしている記者に、日本で名医と言われている人物のリストアップと、どの病院に勤めているかを調べて欲しいと頼み込むのであった。
そこにはストレッチャーを準備していつお呼びがかかるか待ち構えていたこの治療院の医師、ゴードン・ラリーの姿があった。
ちなみにストレッチャーというのは折りたためて自在車の付いた寝台。救急車でけが人、病人を寝かせたまま運ぶ、あれである。
「お姫様をこちらへ運ぶ準備は整い… ってあれ?全員戻って来たのですか?」
「あぁ。治療が終わったのでな」
ゴードンはストレッチャーを仕舞い、姫様が治ったというのに浮かない顔をしている3人を、とりあえず、待合室の椅子に座らせ、テーブルを持って来てお茶を注ぎ、自分も椅子に座る。
「姫様は治ったのでしょ?何故そんな苦虫をかみつぶしたような顔を皆さんしているのですか?」
「いやなに、あまりにも治療が簡単だったのでな」
汲広の後に、省語が続ける。
「我々は、バーラル子爵が、色々な名医に診せて、それでも異常を発見できなかったので、大病を患っているものだと思って、場合によっては日本で手術をさせる心づもりであちらに行ったのだよ。そしたら我々の画像診断で原因がすぐに発見でき、短時間で処置ができ、経過は見ないといけないのだが、それでも姫様は今後快方に向かうだろうと確信を持っている」
「それは、つまり…」
「こちらの名医様は、たった1時間もかからずに治療できるものを、原因すらつかめず何の処置もできないことに我々3人は頭を抱えているのだよ」
汲広は、
「レベルが低い。低すぎる」
と言い、4人に一時沈黙が走った。すると、汲広は、
「私は、どうもこの国の医療レベルを知り、国民のために医者のレベルアップを図らねばならぬようだ」
再び4人は沈黙に包まれた。
*
領主邸に戻った汲広は、代官のミラトに指示を出す。
「ミラト、国中の名医をリストアップし、どこへ行けば会えるか調べてくれ」
「いきなりどうしたのですか?アカツキ伯爵?」
汲広は今日の事をミラトに話して聞かせた。汲広は、
「この国の医者のレベルを知りたい」
そう、ミラトに言うのであった。
「あと、これは時間がかかってもいいのだが、医者という高い立場の待遇に溺れず、患者を救いたいと本気で思っている医者もリストアップして、治療院や自宅の住所を調べておいてくれ」
「と、言うと、教育されるのですか?」
「このままこの状態を見過ごせん。何らかの処置を施す」
汲広は、ミラトとの話を終えると、報告のため、念話を飛ばした。
(アカツキ伯爵、今いいですか?)
(大丈夫だ。よくやってくれた。バーラルのお姫様を無事、治療できたそうではないか)
(そのことについて、気づいたことでお話しがあります)
汲広は一度深呼吸をして、
(我々は3人でまず、診断をしました。全員一致で胃に大きめのポリープがあると3人とも同じ意見でした。その意見にたどり着くまで、10分程です)
(ふむ)
(そこで、こちらの西洋医で、魔術医療の心得もある多々身省語に処置を任せました。魔術医療を駆使してポリープを小さくして、豆粒くらいにしたところで切除しました。処置が終わったのが姫様の部屋に到着してから30分くらいです)
(ふむ)
(それから、3人で腹部をもう一度画像診断し、念のため、省語が体全体を画像診断で異常がないか調べました。姫様の部屋に入ってから1時間もかからずに全ての診断を終えました)
(…つまり、こちらでは名医と言われる者が、原因も分からず取る手段を持たなかった病気を、お前達は1時間もかからずに完治させたということか)
(そのとおりです)
(ふむ。こちらの国の医者と、お前達とでは、医療技術に大きな差があるということだな)
(そのとおりです)
汲広は、噴き出した汗を拭い、一口茶を飲んだ後、深呼吸して、
(私は、この国の医療をレベルアップさせたいと思います)
(それはいいことだ。こちらも王に話しを通しておく)
*
インジスカン王国では早朝、日本では仕事が一段落し、仕事を終えようかというような時間帯である。
汲広は”トンデモな世界の第一人者”の人脈を生かし、医療ルポライターをしている記者に、日本で名医と言われている人物のリストアップと、どの病院に勤めているかを調べて欲しいと頼み込むのであった。
0
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる