異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

文字の大きさ
135 / 167
第五章 流通革命

馬車での領地への移動―前編

しおりを挟む
「そんなもの、後で取りに来ればいいだろ?」

「これがないと不安なんです。それに、長旅になるんですから暇つぶしも必要でしょ?」

「だったら早めに準備しておくべきだったな」

「もう、あなたったら意地悪ばかり…」


 カンデラ子爵一家との語らいの数日後、アカツキ伯爵とステファニアは領地へと旅立つところだったのだが、ステファニアが、いきなりお守りと数冊の本を持って行きたいというものだから、少し出発が遅れ気味である。

 しかし、予定はゆるく決めているので、多少遅れても問題ないのだが、アカツキ伯爵はかなくても大丈夫なのに、ステファニアに厳しいことを言うのであった。


「ステファニア、準備は終わったか?」

「はい」

「それでは出発」


 王都のアカツキ邸には移動手段として、領主夫妻が使える、掃き出し窓の魔法、掃き出し窓の能力、それにオフロードもある程度走破できるファミリーカーがあるのだが、慣例に従って移動は馬車である。

 宿場町で出会う貴族と語らったり、街の様子を見てみるのも、また、貴族には必要なことらしい。


「掃き出し窓の能力で行けば、一瞬だし、時間の節約にもなるのにどうしてまた馬車なんだ?今度大型バスでも買おうか?」

「貴族の慣例ですもの。仕方ありませんわ。それに、大型バスで行ったとして、運転はあなたしかできないし、第一、宿場町に大型バスを停める駐車場はありませんわよ」


 馬車は4台連なっている。

 先頭は護衛と従者が相乗り、前から二番目が悠生ゆうせいとステファニア、三番目には荷物、最後尾は護衛と従者となっている。

 それぞれの馬車の後方にも荷物が積んである。

 護衛が別れているのは、敵が前から来ても、後ろから来ても対応できるようにするためである。


「そういえば、神代魔法の中級編はどこまで読めた?」

「もう最後まで読めましたわ。あとは、実験的に魔法を試してみて、自分のものにするだけですわ」

「私も似たようなものだ。さて、この暇な時間を生かして、その実験をしてみようかと思っているのだがどうだろう?」

「このせまい空間でできる実験ならいいんじゃありませんか?しかし爆発などのともなう危険な実験は、例え小さなものでもおめくださいませ。馬車が壊れて移動できなくなれば困りますし、怪我けがもしたくありませんし、衣装やお守りや本が駄目だめになるのはご勘弁かんべんですわ」

「じゃぁ、危険がない魔術の実験をして時間を潰そう。さて、何から試そうか…。そうだ。馬車馬と少し話しでもするか」


 この世界には、人語とは別に、たましい言語というものがあり、魂を持つ物とは大抵たいていたましい言語で言葉が通じるのである。

 アカツキ伯爵は、テレパスで、魂言語を使って馬車馬と世間話をしたり、疲れていないか質問したりして時間を潰すのであった。


「それでは私は、あの空を飛ぶ鳥と話でもしましょうか」


 ステファニアも悠生ゆうせいと同じ要領ようりょうで、馬車のはるか空高くを飛んでいる鳥と話を始めた。

 すると、1羽の鳥が、馬車のはるか前方に隠れるようにした人影がると教えてくれた。

 その人陰は武装しており、ひょっとすれば、盗賊団か何かで、襲いかかってくるかも知れない。


「あなた、進路上に盗賊らしき者たちがいるんですって」

「それでは護衛に知らせるか」


 アカツキ伯爵は念話で前後の護衛たちに盗賊らしき人影を見つけたことを教える。

 御者ぎょしゃには気づかないフリをしてそのまま進むように指示するように伝える。


「ステファニア、私は前を担当するから、お前は後ろの盗賊団を混乱させろ。初めて試す魔術だから相手が少ない方がいいだろう」

「あなたの言う通りにしますわ」


 案の定あんのじょう、近づくと、盗賊団は姿を現し、止まった馬車の前後に展開した。

 前に4人、後ろにも4人である。


「やっぱり。ではステファニア、手はず通りに」

「はい。あなた」


 悠生ゆうせいとスレファニアが魔術を使うと、盗賊団たちは防具を脱ぎ捨て自傷行為じしょうこういを始めた。


「邪魔だ。道を空けろ」


 馬車の前方にた盗賊団たちは、素直に道を空ける。

 悠生ゆうせいとステファニアとその護衛は再び馬車に乗り込むと、御者たちに進みように命令した。


「追いつけないくらい引き離したら解除しよう」

「初めてでしたがうまくいきましたね」


 盗賊団は馬車が遠く離れるまで自傷行為じしょうこういを続け、その後、正気に戻って何故自分たちは防具を脱ぎ捨て傷だらけになっているのか分からず混乱した。

 もうすぐ夕暮れ時、宿場町、グレゾームはもうすぐである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...