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24.実地訓練
しおりを挟む少ししてユウタもだいぶ魔力に慣れてきたところで彼の魔法の性質を調べると、肉体強化と少しの光魔法への適性が見られた。光魔法は光魔法でも、あまり治癒や守りには適性がなく、攻撃に特化しているようで「そこは満遍なく覚えられるようにしとけよ神様!!」と悔しそうに地面を叩いた。
最初こそ、その身に宿る武器、心象武器の発現をワクワクしながら待っていたユウタであったが、クレアはそれを教えるのはもう少し後だと言って彼の元々持っていた剣を手渡した。
「まずは、適性のある魔法に慣れるところからだな。これは意地悪ではなく、単純に君の内に眠るそれの力が強すぎる可能性を加味してのことだ。あまり落ち込まないで欲しい」
「はぁい」
若干不服ではあるが、ユウタはユウタで魔力測定器を持ってきたエリアスに「それだけの魔力を持っていれば、確かに暴走した時に国一つくらい消えるな」などと言われていたので言うことはちゃんと聞いた。彼は特にこの国に恨みを持っているわけではない。そうであるならば、安全を優先するのは当然のことだった。ユウタだって基本的には自分が可愛いのだ。保護者を失ってまで通す我はない。
元の世界では両親を亡くし、親戚中にたらい回しにされた。この世界に来てからは召喚してしまったからとそれなりに扱っては貰えた。けれど、結局のところユウタが求められていたのは魔王と戦うための戦力だ。それが倒されてしまったこともあってか、一気に厄介者になってしまった。王太子である青年は生きるための方法をある程度教えてくれはしたし、剣を覚えるための手配もしてくれた。最終的には外に出た方がまだ生き残れる可能性があると城を出された。どれだけ殺伐とした世界なんだろうと思ったが、ユウタは言われた通りに城を出た。彼だって自分の命が惜しかったので。
そんなところに出会ったまともな庇護者を失ってもいいと思えるほど、無謀ではなかったし、恩も忘れていなかった。
「自活するためにはコツコツとした努力が必要なものだ」
クレアは表情は分かりづらいが人が良く、優しい。分かりやすく教えてもらえるし、振り返りは欠かさない。姉がいたらこんな感じだろうか、と思ったりする。親戚ですら、一緒に住むと何かしら虐げられていた。他人である以上仕方のない話ではあったのかもしれないが、少しとはいえ血がつながっていた人たちより親しみを感じてしまうことに苦笑した。
「そういうわけで実地訓練を行う」
当初はクレアのみの付き添いということで予定を組んでいたが、ソフィーとクロエだけでなく、レディアからも「それはちょっと」と言われてしまったため、予定は変更された。何故か背後にエリアスの姿も見える。
「先生、王子って暇なの?」
「暇ではないらしいぞ」
たまに部下に泣きつかれているのを思い出してそう返すと、ユウタも複雑そうな顔を見せた。それから、クレアとエリアスの顔を交互に見て、隣にいるクレアにも聞こえないような小声で呟いた。
「先は長そう」
ごもっともである。
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