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巻き戻った世界
他国を目指して 1
しおりを挟む聖女なんていって酷使されず、さらに彼と出会わないことを目的とするならば他国へ逃げるしかない。
そう考えた私は国を越えることを決意し、ひたすら歩いていた。途中の町や村なんかに寄っている場合ではない。だって、そこに神官たちがきたら私の人生とジェリーの人生は終わり&ドン底だ。
それに、野営が特に嫌なわけじゃない。
狩った動物は取り上げられずに食べられるし、薬草も取り上げられないし自分に使っても怒られない。山菜だって取り上げられない。最高。
……いや、コレ最高とかじゃなくて冷静に考えると奴隷以下の扱いを受けてたな。奴隷は犯罪奴隷でない限りは法律できちんとした保護を受けられるもんね。令嬢に付き従ってた首輪付きメイドさんのとかのが肉付きも良かった。
「やっぱりこの国で生きるの向いてないんだわ、私」
身体を抱きしめてぶるりと震える身体を抑えた。やはり、攻撃力。パワーで全てを薙ぎ払うしか生きていられる方法ってないんじゃない?
肉を豪快に齧りながらそんなことを思っていると、結界に何か当たった。いい匂いに釣られて何かやってきたのかも。
強化強化~!
「お肉最高……でもやっぱ調味料欲しいなぁ」
一応はいくつか持ってきていたけど、こんなものはすぐになくなってしまう。ハーブとかで誤魔化そうにも限界があるし。
調味料は希少だ。田舎でも多少は手に入るけれど、基本的には良く言えば素材の味を活かした、悪く言えば素材の味そのままの味である。
例外といえば、魔物を倒した時やダンジョンと呼ばれる土地?空間?内でのドロップアイテムなんかで手に入ることがある。それと、木の実。一部の木の実は調味料として利用できる。まぁ、そんなことは強制的に戦争の治癒隊に従事させられてなければ知らなかったことだけれど。
彼らも大変だっただろうし、鬱憤も溜まっていたのだろうけど、ストレス発散にいびられていた身としては私が逃げたことで被害を受けたとしてもそこまで罪悪感は湧かない。
良いところのお坊ちゃんだったのもあるかもしれないけれど、ジェリーとその側近の人が人生で一番優しかった。側近の方々の「殿下のために死んでくれ」も苦虫を噛み潰したような表情だったから受け入れられた部分もある。彼らがどれだけジェリーと仲良しだったかは知っているし。
ただ……まぁ、時勢が悪かったなって。
私が居なくなるんだから、彼らも婚約破棄されたり廃嫡されたりはしないだろう。
彼らも、廃嫡されたことによる恨み言を何も言わなかったあたり人間性が出来すぎてると思う。
食べ終わって歩いていると、木がありえない様子で倒れていた。私が動くと結界に押されて位置がずれるあたりで魔物だと気づく。
ダミーツリーだ。
木のふりをして人や動物を食べちゃうやべー魔物である。行軍していると餌がたくさんやってきたと思うのかそこそこの頻度で出会った。木のふりをしているからか、元々の相性からか、彼らは火や引火性のものを嫌う。
私に火の属性はないけれど、火打ちがねで火くらいならつけられる。カチンカチンと枯枝に火をつけて、それを少し長めの枝に移す。
ダミーツリーが逃げないよう、囲うように結界を張った。通常は1つしか結界を張れないものらしいけれど、国の無茶振りのせいでやらざるを得なくなった。うん。できるようになると役に立つね!
ちょっと遠い目をしてしまうのはしかたがない。
「えい!」
お肉の油も再利用!してみたけど結構燃えるもんだなぁ。魔物とそこらの木って燃え方が違うのでそこらの木はここまで簡単には燃えないだろう。乾いてない木って火つかないし。……いや、でも数年に一回くらい山火事云々って聞くからわかんないけど。詳しくないし。
念のために結界内で暴れているダミーツリーを眺めているだけなのでそんなことを考える余裕もある。あと、火はちゃんとみてないと怖いし。
悲鳴が完全に消えて止まった頃には夜だった。完全に炭だ。
ドロップアイテムは暗がりで見えないので、寝ることにした。周囲にはやっぱり結界を張る。自分一人でいいから楽だし、そんなに魔力も減らない。国を覆うわけじゃないので気楽だ。
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