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守りの聖女と学園生活
温室と課題
しおりを挟む学生であるので当然課題は出る。しかも上のクラスに上がるほど、国にとって何が今必要か、ということを主軸に考える課題を出されることが多い。
今は、「ダンジョンの出現率の増加とそれによる医療への影響」という課題が出ている。
聖女がいるかどうかでダンジョンの出現率は変わったりしていない。そして、ボスモンスターを倒せば消えるダンジョンもあれば、コアが中にある限り消えないダンジョンもある。しかもコアがすっごく厳重に隠されてることって多い。
スタンピードは私がこの国に来てから少なくなったらしい。
少なくなったところで、なくなったわけではない。聖女がいれば魔物が近づきにくくなるのは確からしいけど、全く生まれないというわけじゃない。
それに、その土地を治める貴族によってどの程度管理する能力があるかは変わってくる。なので、どうしても全ての被害がなくなるといったことはない。
ダンジョンが現れることが魔王の陰謀だという説や、神からの試練だという説、それからただの自然災害であるという説がある。
ちなみにジェリーは自然災害説を推している。神からの試練とかクソ喰らえみたいなこと言ってました。最近ちょっとお口が悪い。
まぁ、そんなわけで私も医療問題について考えることになった。
影響とか言われても、探索に人が向かうと死傷者が出るし、間引き失敗したらスタンピード起こって周辺住民も危ないってことくらいしかわからなかったりする。
医療への影響はここあたりから考察していけばいいかなぁ?
考えをまとめて、少しずつ資料を見ながら紙に書いていく。
医療体制自体はアルマリアに比べて進んでいる。けれど、それは貴族社会のみに適応されていることであって、平民にまで開かれているかというとそうでもない。その辺りは各領主による。
じゃあ、平民も使える治療院を設置することからかなぁ?そうすれば、冒険者たちの死傷率も下がるし、探索も進みやすくなる筈だ。やっぱり領主の政策でそういった体制をとっているところもあるけど、持っている財産次第なところもある。…お金がなくっちゃ何もできないのだ。世知辛い。
温室に生えている薬草を見ながら、ポーションの配給についても触れるべきかな、と考えたがやめた。
「作れる人がまだ、そう多くないのですよねぇ」
辺境伯家の家臣の方々で水魔法の使い手の一部が作り上げることに成功しているけれど、まだ流通に足るほどではない。
これは聖女というシステムがなくても大丈夫なように考えたもの。誰か数人が犠牲になってすごく働かされるというのは違うんじゃないかなって思う。ここの薬草もその実験に一部使っている。今は王家の魔法使いとかも協力してくれている。水魔法を血統魔法として保持している貴族も結構協力してくれている。ありがたいことです。
そんなことを思いながら、まだ触れなくてもいいかと薬草から視線を外した。
そして、手を動かそうとしていたところ、ガサガサと気の揺れる音がした。
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