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第5話
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帰宅しても俺は小説の続きを読むことが出来なかった。なまじ主人公と自分を重ねて読んでいた部分もあり、続きがどうなるか知る事が怖かった。
例えそれがハッピーエンドであれ、そんなもの小説の中の話で現実とは違うんだ、と鼻で笑ってしまいそうで怖かった。
パソコンには神姫からの「何か進展あった?」というメールが来ていたが、返事をする気にはなれなかった。
誰かに何かを話して、今の自分が客観的に不利な立場であることを突き付けられそうで怖かった。
『そうなったら・・・まぁもう祈るしかないよ』
そんな言葉をかけられるものなら……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日の朝、学校に行くか迷ったが、ここでふさぎ込んでいても何も変わらないと自分を奮い立たせた。心の中では『ただデートするだけだよきっと』という天使の思考と、『もうこの時点でお前の負けじゃん?』という悪魔の思考がぐるぐるめぐっている。
憂鬱だった。先日までの浮かれ具合が嘘のように情けないくらい足取りが重い。昨日聞いた話が原因だということは分かるが、だからと言って自分が何をしたいか、どうすればいいか見当もつかない。
今日は一日中この雰囲気で過ごすのかと思うとかなり辛い。
「ねぇちょっと」
「え?」
俯き加減に廊下を歩いていた俺は、目の前で仁王立ちしている女子生徒に慌てて立ち止まる。
短い髪に勝気そうな容姿。バスケ部が似合いそう、と言ったら偏見かもしれないが、とてもはきはきとした雰囲気。ただ見たこと無い女子生徒だ。もっとも俺の交友関係は決して広いとは言えるわけではないが。
「あなた高崎裕樹よね?」
「あぁ、そうだけど」
「あたしは竹原紀美香、和泉の友人よ」
和泉の友人?一体それが俺に何の用だ?
それにまるで待ち構えていたように悠長に語る竹原に思わず不信感を抱いてしまう。
「突然だけど、あなた和泉から本借りてるわよね?」
「借りてるけど」
「それ和泉が返して欲しがっているの。あたしが渡しておくから返してくれない?」
「え?和泉が?」
「そう、出来れば直ぐに返して欲しいみたいなんだけど今日あの子風邪で学校休んでいるのよ。だから私が代わりに回収に来たの」
竹原は使い走りされていることにうんざりするようにため息をつく。
小説は鞄の中に入っている。
まだ読み終わってないが、持ち主の和泉が返して欲しいというのなら断るのは違う気がした。それにまだ借りていたとしても読むかどうかも分からず、持っているだけで少し気分が落ち込んでしまう。
「これでいいか?」
鞄から出した小説を竹原に差し出す。
しかし竹原は直ぐに小説を受け取らなかった。受け取らず、黙って俺の顔を見ている。
「えっと、これじゃなかったか?」
「いいえ、それで合ってるわ。ところであなた、読み終わった?」
「いや、まだ途中だけど」
「ふ~ん」
すると竹原は値踏みするように俺を見た。あまりいい気はしない。
「でも和泉が返して欲しいんなら途中でも」
「ダメ、最後まで読んで」
竹原は俺の言葉を遮るように言う。
「じゃあ明日までに読んでね。また明日来るわ。それじゃあ」
そしてその場を立ち去っていく。
俺は去っていく竹原と、自分が差し出した小説を呆然と見つめた。
一体竹原が何を考えているのか分からない。だが、俺にこの小説を最後まで読ませようとしている事は理解が出来た。
例えそれがハッピーエンドであれ、そんなもの小説の中の話で現実とは違うんだ、と鼻で笑ってしまいそうで怖かった。
パソコンには神姫からの「何か進展あった?」というメールが来ていたが、返事をする気にはなれなかった。
誰かに何かを話して、今の自分が客観的に不利な立場であることを突き付けられそうで怖かった。
『そうなったら・・・まぁもう祈るしかないよ』
そんな言葉をかけられるものなら……。
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次の日の朝、学校に行くか迷ったが、ここでふさぎ込んでいても何も変わらないと自分を奮い立たせた。心の中では『ただデートするだけだよきっと』という天使の思考と、『もうこの時点でお前の負けじゃん?』という悪魔の思考がぐるぐるめぐっている。
憂鬱だった。先日までの浮かれ具合が嘘のように情けないくらい足取りが重い。昨日聞いた話が原因だということは分かるが、だからと言って自分が何をしたいか、どうすればいいか見当もつかない。
今日は一日中この雰囲気で過ごすのかと思うとかなり辛い。
「ねぇちょっと」
「え?」
俯き加減に廊下を歩いていた俺は、目の前で仁王立ちしている女子生徒に慌てて立ち止まる。
短い髪に勝気そうな容姿。バスケ部が似合いそう、と言ったら偏見かもしれないが、とてもはきはきとした雰囲気。ただ見たこと無い女子生徒だ。もっとも俺の交友関係は決して広いとは言えるわけではないが。
「あなた高崎裕樹よね?」
「あぁ、そうだけど」
「あたしは竹原紀美香、和泉の友人よ」
和泉の友人?一体それが俺に何の用だ?
それにまるで待ち構えていたように悠長に語る竹原に思わず不信感を抱いてしまう。
「突然だけど、あなた和泉から本借りてるわよね?」
「借りてるけど」
「それ和泉が返して欲しがっているの。あたしが渡しておくから返してくれない?」
「え?和泉が?」
「そう、出来れば直ぐに返して欲しいみたいなんだけど今日あの子風邪で学校休んでいるのよ。だから私が代わりに回収に来たの」
竹原は使い走りされていることにうんざりするようにため息をつく。
小説は鞄の中に入っている。
まだ読み終わってないが、持ち主の和泉が返して欲しいというのなら断るのは違う気がした。それにまだ借りていたとしても読むかどうかも分からず、持っているだけで少し気分が落ち込んでしまう。
「これでいいか?」
鞄から出した小説を竹原に差し出す。
しかし竹原は直ぐに小説を受け取らなかった。受け取らず、黙って俺の顔を見ている。
「えっと、これじゃなかったか?」
「いいえ、それで合ってるわ。ところであなた、読み終わった?」
「いや、まだ途中だけど」
「ふ~ん」
すると竹原は値踏みするように俺を見た。あまりいい気はしない。
「でも和泉が返して欲しいんなら途中でも」
「ダメ、最後まで読んで」
竹原は俺の言葉を遮るように言う。
「じゃあ明日までに読んでね。また明日来るわ。それじゃあ」
そしてその場を立ち去っていく。
俺は去っていく竹原と、自分が差し出した小説を呆然と見つめた。
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