不倫の偽装に使われて、どうして私が隣国に嫁ぐことに?

柏木

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 後日、私は国王に謁見することになった。
 国王の姿は外から何度かみたことがあるのと、大きな茶会に稀に出席していたことや貴族の会合で目にしたことがある。
 しかし、その内面はよく知らなかった。間近で話したことはないし、ろくに声を聞いたこともない。王というのは、それだけ気安く話しかけられる立場の人間ではなかった。

 だからだろうか。その態度に呆れた。
 これからお願いする相手に対して上から命令してくる態度は、立場相応といえば当たり前に聞こえる。
 国王の口から出たのは、他人だと決してバレないようにすること、国にたどり着くまで処女だけは失わないこと、余計なことはしないこと、国内の情報を渡さないことだった。
「我が娘の気が迷いが会ったとは言え、お主の夫はそれをたぶらかし、あまつさえ唆すなにか、家庭内の原因でもあったのだろう」

 そのセリフは、言葉だけならまだ許せたかも知れないが、国王が自分の娘のしでかしたことを全く悪いと思っていない。むしろ私が原因であるかのように言葉の端々にそれが伝わってきた。

「お主の夫も貴殿の妻としての器にいくら不満を持っていたとはいえ、それを繋ぎ止められなかったお主にもこうして責任はとってもらうことになるが、よろしいか?」

 最後はそう締めくくった。

 言葉でもはや隠すつもりもなく、明確に私が不倫の原因だと言い放つ。

 アホですか! 事実をどう歪曲したらそういう話になるの?

 そう言えば忘れていた。
 軍事大国ほどではないが、この王国も男尊女卑は大して変わらなかったのだということを。
 そう思えたから少し気が楽になると同時に、この国が大国に滅ぼされようがどうでも良いとさえ感じていた。

 特に国王と元夫。離縁が成立したからもう夫ではない公爵令息のあの人はというと、第一王女が私のふりをして、正式に住居を彼の家の別荘に移したらしい。
 順調に幸せの街道を走り出していた。



 私はというと、用意された馬車に乗って、軍事大国の道のりがはじまった。

「なによそれ……。これじゃまるで、私を犠牲にして、原因を作ったあの二人がハッピーエンドを迎えたみたいじゃないの!」

 いまさらながら強烈な怒りが湧き出してきて、馬車の側面に拳を叩きつけた。
 バキバキと木の壁が壊れる音がして、慌てて手で抑えて元通りにする。
 御者が驚いて声をかけてくるが、「大丈夫よ」と答えておいた。

 国王には余計なことはするなと言われたが、もう知ったことではない。
 あんなバカたちによる虚飾の国は、「滅んだほうがいいわよ」と心のなかで叫んだ。
 不敬とは思いつつも、思わず出てきた本音の言葉がこれだった。
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