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9話:
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多少不自由はあっても部屋でゆっくりできるものだと思っていたため、この忙しくなりそうな予定表は想定外だった。
最初の外出は、周辺地理を見て回ることで、公務とは別に護衛などを連れ添って行われた。隣にはスタルク第一王子もいる。
あまりにも邸宅にいなさすぎて顔を忘れるところだったが、今日ようやく思い出した。
さっきから歩いているとやたら距離を感じた。夫婦の距離感ではない。私が距離を取ろうとしていない以上、距離を取ろうと離れているのは夫のスタルクのほうだった。
「あの……なぜそんな距離をお取りに?」
スタルクは私の顔を見て首を横に振った。
「このくらいで勘弁してくれ。顔もできれば見ないようにする」
「は?」
私は思わず声に出ていて、手で口を押さえた。
それ以上近づきたくないとでも言うつもりなのかしら。しかも顔も見たくないように聞こえたわ。
たしかに王女の本物ではないけれど、直に見て幻滅してしまわれたのだろうか。
そうだとすると、私があまり男ウケしない容姿だったからかもしれない。
元の王女ほど美しさもないし、淑女と品格という印象も与えられてはいない。そうなると好かれる要素はたしかにないわけだが、好きではない相手とは言え、顔も見たくない女性だと言われたようで胸がズキンと痛くなった。
その後、都の町並みを観察し、公僕で働いている公的機関の者たちの姿を視察した。
衣装を着替えて住人に紛れて、下町を視察したのは昼下がりのことだった。
元の王国にはなかった食べ物や品物が置かれている。
隣を歩くスタルクは、食事をしたときだけ「うまい」と喋ったきり、私には話しかけてこなかった。
仕方なく、会話をこちらから振ることにした。
「あの、スタルク様には妹君もいらっしゃいましたけど、普段どうしているのですか?」
私のもとに来るのは王子の弟たちばかりで、妹君たちは来なかった。
弟たちは兄の結婚相手として興味を持っていたが、妹たちはその点について興味がないのだろうかとも邪推している。
「妹たちは普段からダンスや礼儀作法、勉学に励んでいる。いずれ婿を取るためだな」
「ああ、そういうことですか。では、レッスンがない日は何を?」
「一番上のは軍事教練を受けていた。二番目の妹は警務部の手伝いをしているそうだ」
「はあ、妹君はとても熱心に国のことを考えていらしているのですね?」
聞いてびっくりだ。その年で遊ばずに国の手伝いをしている。
祖国の王女と比べても雲泥の差である。務めをほっぽりだして浮気をし、挙げ句、私に責任のすべてを追わせたのだから。
「そうでもない。どちらも妹たちが好き勝手をしすぎて困るとこの前首根っこを捕まえてきたところだ」
その発言も意外だった。
妹たちの世話をわざわざ第一王子が焼いていたのだ。
それに、さすが軍事大国だけはある。女性のはずの妹でも戦争に備える教練に参加している。
でも好き勝手というのはどういうことだろうか?
疑問が顔に出ていたのか、スタルクは説明を補足した。
「軍事教練では過度な訓練を兵士にさせすぎて、恐怖で指揮が崩壊しているらしい。警務部では、尋問と称して刑の確定していない被疑者を痛めつけて、衛兵がビビって出勤を拒否するものも出たそうだ」
想像以上の王族の闇が語られた。
第二王子も大概だったが、妹君たちも普通とはかなり違う育ち方をしているようだ。
となると、私のところに来なかった理由は想像がついた。
そもそも好奇心や興味が身内ではなく、別のことや外に向かう性格なのだろう。
兄が誰と結婚しようが、彼女たちにはどうでも良いことなのだ。
そんなこんなで、初めてまともにスタルクと会話し、意外にも妹の話で盛り上がるのだった。表情も穏やかな気がする。
もしかすると、これほどの話の弾み方からして、少しシスコンの気があるのかも知れない。そんなどうでもよい事を考えながら、下町を一通り散策するのだった。
最初の外出は、周辺地理を見て回ることで、公務とは別に護衛などを連れ添って行われた。隣にはスタルク第一王子もいる。
あまりにも邸宅にいなさすぎて顔を忘れるところだったが、今日ようやく思い出した。
さっきから歩いているとやたら距離を感じた。夫婦の距離感ではない。私が距離を取ろうとしていない以上、距離を取ろうと離れているのは夫のスタルクのほうだった。
「あの……なぜそんな距離をお取りに?」
スタルクは私の顔を見て首を横に振った。
「このくらいで勘弁してくれ。顔もできれば見ないようにする」
「は?」
私は思わず声に出ていて、手で口を押さえた。
それ以上近づきたくないとでも言うつもりなのかしら。しかも顔も見たくないように聞こえたわ。
たしかに王女の本物ではないけれど、直に見て幻滅してしまわれたのだろうか。
そうだとすると、私があまり男ウケしない容姿だったからかもしれない。
元の王女ほど美しさもないし、淑女と品格という印象も与えられてはいない。そうなると好かれる要素はたしかにないわけだが、好きではない相手とは言え、顔も見たくない女性だと言われたようで胸がズキンと痛くなった。
その後、都の町並みを観察し、公僕で働いている公的機関の者たちの姿を視察した。
衣装を着替えて住人に紛れて、下町を視察したのは昼下がりのことだった。
元の王国にはなかった食べ物や品物が置かれている。
隣を歩くスタルクは、食事をしたときだけ「うまい」と喋ったきり、私には話しかけてこなかった。
仕方なく、会話をこちらから振ることにした。
「あの、スタルク様には妹君もいらっしゃいましたけど、普段どうしているのですか?」
私のもとに来るのは王子の弟たちばかりで、妹君たちは来なかった。
弟たちは兄の結婚相手として興味を持っていたが、妹たちはその点について興味がないのだろうかとも邪推している。
「妹たちは普段からダンスや礼儀作法、勉学に励んでいる。いずれ婿を取るためだな」
「ああ、そういうことですか。では、レッスンがない日は何を?」
「一番上のは軍事教練を受けていた。二番目の妹は警務部の手伝いをしているそうだ」
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「そうでもない。どちらも妹たちが好き勝手をしすぎて困るとこの前首根っこを捕まえてきたところだ」
その発言も意外だった。
妹たちの世話をわざわざ第一王子が焼いていたのだ。
それに、さすが軍事大国だけはある。女性のはずの妹でも戦争に備える教練に参加している。
でも好き勝手というのはどういうことだろうか?
疑問が顔に出ていたのか、スタルクは説明を補足した。
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となると、私のところに来なかった理由は想像がついた。
そもそも好奇心や興味が身内ではなく、別のことや外に向かう性格なのだろう。
兄が誰と結婚しようが、彼女たちにはどうでも良いことなのだ。
そんなこんなで、初めてまともにスタルクと会話し、意外にも妹の話で盛り上がるのだった。表情も穏やかな気がする。
もしかすると、これほどの話の弾み方からして、少しシスコンの気があるのかも知れない。そんなどうでもよい事を考えながら、下町を一通り散策するのだった。
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