不倫の偽装に使われて、どうして私が隣国に嫁ぐことに?

柏木

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11話:

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 スタルク第一王子が邸宅に来訪したのは、知らせを受けて翌日のことだった。
 客間で待ちかねていた私が、スタルクを座らせて、自分もその正面に座る。

「それで、わざわざ知らせをよこしてまで来られたのはどうしてですか?」

 少し渋い顔をしてスタルクは私に告げた。

「少しまずいことになった」

 やはり、私がやらかした言動や態度のことだろうか。
 それに対して、国の上層部が問題として取り上げたと言ったところかと予想する。

「まずいとは?」

「国王の側近がブリジッドを国に返して、別の国から王女をおれに充てがうと提言を始めた」

 私の作戦がうまく言ったことを意味していた。

「そ、それで、私はどうなるのですか?」

 その先が聞きたかった。
 私としては、ここから様々な選択ができる。
 事故にあったことにして、身を隠すのも良いし、祖国に返って「王子に別に好きな人ができたから」とでも言って身分や名前を変えて暮らすのもありだ。
 あくまでも自分の責任ではないという体でいることが大事といえる。
 つまり、生きてこの意味のない使命を終わらせられるならそれでいい。

「いや、まだ決まりではない。が、このまま本当に上層部たちの意見に国王が承諾したら、お前の首をはねて、それを送り返すそうだ」

「なんでっ!」

 王女の替え玉がバレていないのに、予想以上の過激な対処が行われることが明かされた。処刑されるのと大して変わらない。

「そうか、知らないのだな。この国では、政略結婚する場合に、妻が夫にふさわしくない振る舞いをすると、首を送り返す風習があるんだ。書類に文面化していないことだし、最近は知らないものもいるがな」

 そんなの知るわけがない。
 国王たちもいい加減な下調べしかせずに王女(偽)を送り込んだものだ。

「そんな!」

 作戦が全部裏目に出ていた。
 というより状況が悪化した。ただ気になることもある。それは彼のことだ。

「それでなんだが、お前はどうしたい?」

 あ、振る舞いをもとに戻せばいいのかしら。
 それでは足りない気がする。そもそも自分の態度は始めから国王の気に障っていた。
 本音が変わったとは思われないだろう。

 それにこのスタルク王子からすれば、都合の良い話だ。期待に沿わない妻を始末できるチャンス……のはずである。
 絶望の壁に周囲を阻まれたようだった。

「どうするって……。どうにかなるのですか?」

「ああ、方法は四つある」

 四つもあることに私は驚いた。

「まず一つは、お前を死んだことにしてそのへんの山に捨ててくる」

 姥捨山ではなく、王女捨て山だった。
 彼は冗談を言わない性格なのだろう。真面目な顔をしたままだ。
 このまま1つ目を選べば、捨てられることが確実である。

「ふ、二つ目は?」

「二つ目はいま喚き散らしている側近をお前が皆殺しにすることだ」

「はぁ?」

 思わず変な声が出てしまった。
 この王子、見かけによらず、対処方法が脳筋である。

「三つ目って?」

 正直なんの期待も持てないが三つ目を聞いておくことにした。

「三つ目は、王を殺し、おれを国王にすることで上層部を黙らせる」

 王を打倒するということは、ようするにクーデーターである。そして、それを私が行えば、殺しきれなかったときに国家反逆罪で死刑確定だ。祖国もまるごと滅ぼされる。

 しかもそこに付け加えた言葉でガクリとなった。

「ついでに側近も始末すれば、無駄な命令も必要はなくなるが」
 
 結局、二つ目との違いがよくわからなかった。むしろ王を殺すほうが大変で、ハードルが挙がっている。

「その、一応聞きますけど、最後は?」

「四つ目は、お前を荷馬車に入れて出荷するように見せる」

「ん? 最後のだけは意味がよく……」

 どういうこと? 私を出荷って、まさか奴隷売買でもするつもりかしら?
 さらなる地獄である。
 いえ、ように見せるのだから、ごまかして国外逃亡を手伝ってくれるのよね。そのはずよ。

「つまり、ごまかして私が一人で国外に逃亡するのを手伝ってくれるのですか?」

「そうではない。私の私物に隠して、国を出るということだ。野生動物がいれば、他国に行っても生きてはいけるだろう」

 どこの原住民族の話ですか?
 と思わず聞き返しそうになった。

 それより気になった話が出てきた。なぜか、王子の私物に隠すと言い出したのだ。

「あのつかぬことをお聞きしますけど、それだと王子も一緒に出るみたいですけど」

「そうだが? ダメなのか?」

「いえ。あ、いやいやダメですよ。次期国王の有力な王子のご身分なのですから」

「では四はナシだな。それでどうする?」

 私は少し混乱していた。まさか、スタルク王子がそこまで手を貸してくれようとするとは思わなかったのだ。
 というよりも、その最後の提案って、国を捨てての駆け落ちのように聞こえた。

「気になることがあるのですが、スタルク様はその、なぜ私を助ける話をされにきたのですか?」
 
 これを聞くと後戻りはできないと感じながらも確かめる必要があった。
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