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1章 救世のユミル
1話 学園入学
しおりを挟む時は移り、その数年後。
物語の舞台は、大陸唯一の巨大魔法学校施設、オストラント。
人族の中の僅か数%、上級国民とされる魔導士家系の子息子女が必ず通うことになる名門の学園だ。
魔力を持つ者はオストラントに通い、神聖力を持つ者は神殿に所属する。
壮大にして広大。ここ数百年圧倒的な地位と価値、歴史を持つこの立派な学園は、かつてこの大陸を救ったとされる、黄金時代の初代魔導士団団長の『魔剣聖オストロ』の意思を継ぐべく、その名からオストラントと名付けられた。
入学式や卒業式、他にも数々の祭典の会場となる大講堂には、技術の限りが尽くされた美しいステンドグラスの下に、かの初代魔導士団である7名全員の、20メートル以上ある巨大な石像が置かれていた。
中心から、団長である魔剣聖オストロ、その右に英雄ユミル、左に賢人リリアナ、そして聖者シモン、初代国王ルキウス、神子ニーア、氷龍アドレビットと、豪華で美しい像が魔導士の卵たちを祝福している。
彼ら魔導士団は、その歴史的時代から500年の月日が経とうとも人気は色褪せず、特に圧倒的な実績と強さを持つ魔剣聖オストロと、自身の身を捧げて大陸の崩壊を防ぐ要となった、英雄ユミルの人気が高い。
本日はそんなオストラント学園325期生の入学式が行われていた。
14歳の少年少女が、晴天の下で輝くステンドグラスと、威厳と美しさを持つ巨大な7つの石像を前にして、これからの学園生活への期待に目を輝かせている。
皆の視線が集まる中、この時代において最も偉大であるとされる、学長の大魔導士リンリンが登壇した。
彼は豊かな白髪に白髭を蓄えた好々爺といった印象だが、優しさを感じさせる目元をキリッとさせて、威厳のある声を発する。
「新入生諸君、此度は其方らのオストラント入学、誠に嬉しく思う。」
にっこりと微笑むと、有名な魔導士の直接の言葉に、新入生たちから歓声が上がった。
魔導士は老化で髪が白くなることはなく、かの英雄ユミルと同じ特徴の、白髪の魔導士であるリンリンは特に人気が高いのだ。
学長が手を挙げ、静まるのを待つと再び話し始める。
「ここオストラントは大陸唯一の魔導士学園。そのため、全ての魔導士はこの道を通って大成して行く。無論、わしもこの学園で学び、沢山の経験をしたことは今でも鮮明に覚えているのだ。この場での出会いは、一生のものとなる。学園内で何か困った時はもちろん、ここを巣立ってからも、助け合える人脈は何よりの宝となるだろう。…魔導士である其方らは、この世界に大いなる力を持って生まれてきた。与えられたものには必ず意味があるのだ。皆、この学園で自らを構築し、為すべきことを見つけなさい。豊かな経験と機会を。我々教員は全力で力になろう」
学長が一歩下がり、背後のオストロ像に視線をやって、大きな宝玉が細工された杖を持ち上げる。
「オストラントの新たな教え子に、幸多からんことを!」
その瞬間、魔法によって講堂中に行き渡るようにたくさんの楽器の演奏がなされ、フラワーシャワーや色が変化する炎などの、豪華で贅を尽くしたパフォーマンスが展開されて、新入生たちからは大歓声と拍手が上がった。
毎年のように繰り返し、年々パフォーマンスのレベルが上がっていく入学式で、はしゃぐ新入生たちを見守るように教員や先輩たちが微笑む中、感心したように講堂を見渡す、胸元に新入生用の花をつけた茶髪の平凡な少年がいた。
彼の名前は、ユミル=オズリーン。
かつて、黄金時代と呼ばれた500年前に、初代魔導士団の一員として名を馳せた、『英雄ユミル』が死した後に生まれ変わった姿であった。
ユミルはあの頃の親友、オストロの名を冠した学園に入学することを楽しみにしていたのだが、その能力を発揮し目立つつもりは毛頭なく、今世は平凡に生きることを決めている。
精神年齢は50代なため、その年齢に似合わず穏やかな表情を浮かべるユミルは、初々しい新入生たちの中では少々浮いていなくもないが、ユミルはユミルらしく、この入学式を楽しんでいた。
この地は、よくオストロと酒を飲み交わした思い出の地なのだ。
今世の親に迷惑をかけるつもりもないユミルは、自身の前世については、この世界の誰にも話してはいない。
果たして、500年越しにかの英雄がこの地を踏んでいるなどと、誰が思うだろうか。
元英雄の二度目の人生。
ピチピチの魔道学生1年生としての生活がはじまる。
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