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1章 救世のユミル
2話 クラスメイト
しおりを挟む「…エリン!ユミル!俺たち同じクラスだった!」
入学式後、新入生たちは各々のクラスに割り振られるため、1年生用の塔に移動していた。
先ほどの入学式の並びで左隣だった、エリンという少女と共に待機していると、そのまた左に座っていたダニエル少年が、クラス分けの紙を持って走り戻ってくる。
「やったー!早速できた友達が一緒でひと安心だわ」
「やっぱり、さっきの入学式はクラス順の並びだったみたいだね」
3人は、入学式の席順もそうだが、エリンは下級魔道家、ダニエルは中級家といってもなりたての新参ということで、互いに気を使わないということで意気投合した。
「ユミルもダニエルも、一年間よろしくね!他に友達ができても仲良くしてよね」
「もちろんだぜ!」
「こちらこそ、よろしくね」
幸先の良い学園生活の開幕ににっこりと笑みを浮かべたエリンに肩を組まれ、ユミルもダニエルもつられて笑顔になる。
社交的で陽気なエリンの性格はとても良いところで、彼女はすでにたくさんの人に話しかけて、周りの顔と名前を一致させる作業を開始していた。
「あ、ちょっとそのクラス別名簿見せて」
エリンはダニエルが持つ名簿を覗き込み、大事なことを思い出したというように目を走らせる。
「何か気になる人でもいるのか?」
有名人か、危険人物か、とダニエルとユミルも横から一緒になって見てみる。
「えー、ちょっと、2人は気にならないの?今年は「あの人」が1年生にいるらしいじゃない」
「あの人?」
首を傾げるユミルに対して、ダニエルは合点がいったようにうなずいた。
「あー、『孤高の美丈夫』の4公家若君か」
「何よ孤高の美丈夫って呼び方。ダサくない?ま、眉目秀麗って噂だものね」
うんうんとうなずきあう二人をユミルが見つめる。
「有名な人?」
問いかけに、エリンは胸の前で手を結び、恋愛ものの演劇のようにホウっと息を吐いて空を見た。
「そりゃあもう、この学園1の有名人よ。眉目秀麗、お家柄は超有名大VIP、筆記も実技も優秀なのに、事情により出席日数が足らず進級はしないという謎の多さ。人と群れることもしなくて、少し危険な噂もあるって話よ。まあ何といっても特筆すべきはその美貌。私は直接見たことないけど、神様の最高傑作だって私の国にも噂が届くもの。そんな人に私たちみたいな平凡な魔導士が会えるのは幸運以外の何物でもないわ!」
一息で言い切ったエリンに、ユミルがニコッと笑って頷く。
「そうなんだ。すごいんだね」
エリンは興奮のまま崩れ落ちた。
「っあぁ、反応が薄い!けど会ったら変わるはずよ。学園で見かけるのは超レアらしいけど、流石に初日はいるはずだもの。その姿を見たが最後、学園のファンクラブに即入会してしまうってもっぱらの噂だわ。もしそうなったら、3人で走ろう」
「ふふ、楽しそうな学園だね」
ニコニコと微笑ましそうにうなずくユミルに、エリンはこの興奮は伝わるまいと諦め、再び名簿に目を走らせる。
「って言っても、6クラスでひと学年600人くらいはいるもんね。名前を見つけるだけでも大変…、て、あったッ!!」
エリンが指で指し示したところを、左右から2人で覗き込む。
「 S クラスじゃねーか」
「進級はできないけど、能力が高いって言ってた通りみたい」
オストラントのクラス分けは全部で6つ。
能力の高さに家柄などを加味して入学試験時に評価され、上からSクラス、A、B、C、D、Eクラスへと振り分けられる。
なお、ユミルは最初、クラス毎の待遇のことも考えて、BかCクラスあたりに入るよう調整しようとしていたのだが、実技試験では上手く調整できたものの、筆記での加減がわからずDクラスに所属することになった。しかしまあ、本人は特にどちらでも良かったので気にはしていない。
「Sクラスってことは、私たちとは関わる機会なんて全然巡ってこないじゃない」
ユミルは、嘆息するエリンの肩をポンポンと叩いて慰めながら、もう一度名簿に視線を落とした。
「ゼクトラ=オルロス=ゼルクエイム君か。そんなに気になるんなら、Sクラスまで話しかけに行ってみる?俺たちも着いて行くよ。ねえ、ダニエル」
「俺も!?」
突然矢印を向けられたダニエルが狼狽えるが、すぐにエリンは首を振る。
「えぇ!?…それは流石に烏滸がましいよ!迷惑になりたいわけじゃないもん」
「そっかぁ」
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