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1話:孤独な歌声と出会い
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辺境の森の奥深くに、朽ちかけた塔がひっそりと佇んでいた。王都から追いやられた私、リリアは、その塔に幽閉されていた。「罪人」の姫、それが私に与えられた呼称だった。私の歌声は美しすぎて人々を惑わす、ゆえに王家によって隔離されるべきだとされたのだ。王都での幼い日々、その歌は「呪い」と忌み嫌われ、やがてこの苔むした塔へと私を追いやった。希望はとうに失い、絶望だけが私を囲んでいたけれど、それでも歌うことだけは止められなかった。もし歌うことをやめてしまえば、私はこの世界に何一つ痕跡を残せなくなる気がして――それが、何よりも怖かったのだ。
王宮には、私の歌を、ただ美しい旋律として愛してくれた老いた楽師がいた。彼は、歌声が持つ力に理解を示し、幼い私に「その歌は、いつか世界を救う光になる」と囁いてくれた、ただ一人の人物だった。しかし、彼の声は、私の歌の力を恐れる王には届かなかった。かつて、私の歌声に涙を流したという第一妃は、それからほどなくして心を病み、王のもとから遠ざけられた。王はきっと、最愛の人を壊したのはこの歌だと信じたのだろう。そうでなければ、あの夜、私の歌に微笑んでくれた妃の顔を、私は今でも思い出せるはずがない。王の恐怖は、やがて私をこの塔に閉じ込めるという、冷酷な結論へと導いた。
夜が帳を下ろし、森のざわめきだけが響く頃、私はいつものように窓辺に立ち、月に向かって歌を紡いだ。誰にも届かない、誰にも聞かせられない、私のための歌。その旋律は、塔の石壁に吸い込まれていくかのように、静かに夜の闇に溶けていった。塔の中は、月の光すらも届かない。けれど、その夜だけは違った。
その時だった。
月が一瞬、何かに覆われた。次の瞬間、遠い空から、夜そのものを引き裂くように巨大な影が音もなく滑り降りてきた。それは、この国に滅びをもたらすと恐れられる、伝説の竜族の青年――ゼノスだった。夜空の色を映したような蒼い瞳が、私を見据える。私は息を呑んだ。恐怖に体が竦むはずなのに、なぜか、心が不思議なほど穏やかだった。彼の視線は、私の歌に深く耳を傾けている。まるで、私の一音一音が、彼の魂に直接触れているかのように。生まれて初めて、私の歌が誰かの心に「届いた」。それだけで、崩れかけていた私という存在が、静かに輪郭を取り戻していくような気がした。
王宮には、私の歌を、ただ美しい旋律として愛してくれた老いた楽師がいた。彼は、歌声が持つ力に理解を示し、幼い私に「その歌は、いつか世界を救う光になる」と囁いてくれた、ただ一人の人物だった。しかし、彼の声は、私の歌の力を恐れる王には届かなかった。かつて、私の歌声に涙を流したという第一妃は、それからほどなくして心を病み、王のもとから遠ざけられた。王はきっと、最愛の人を壊したのはこの歌だと信じたのだろう。そうでなければ、あの夜、私の歌に微笑んでくれた妃の顔を、私は今でも思い出せるはずがない。王の恐怖は、やがて私をこの塔に閉じ込めるという、冷酷な結論へと導いた。
夜が帳を下ろし、森のざわめきだけが響く頃、私はいつものように窓辺に立ち、月に向かって歌を紡いだ。誰にも届かない、誰にも聞かせられない、私のための歌。その旋律は、塔の石壁に吸い込まれていくかのように、静かに夜の闇に溶けていった。塔の中は、月の光すらも届かない。けれど、その夜だけは違った。
その時だった。
月が一瞬、何かに覆われた。次の瞬間、遠い空から、夜そのものを引き裂くように巨大な影が音もなく滑り降りてきた。それは、この国に滅びをもたらすと恐れられる、伝説の竜族の青年――ゼノスだった。夜空の色を映したような蒼い瞳が、私を見据える。私は息を呑んだ。恐怖に体が竦むはずなのに、なぜか、心が不思議なほど穏やかだった。彼の視線は、私の歌に深く耳を傾けている。まるで、私の一音一音が、彼の魂に直接触れているかのように。生まれて初めて、私の歌が誰かの心に「届いた」。それだけで、崩れかけていた私という存在が、静かに輪郭を取り戻していくような気がした。
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