40 / 156
第2章:赤いタスクと二つの正義
第40話:作戦目標の再定義
しおりを挟む
夜明けとともに、ケンジたちは野営地を後にし、風鳴りの山へと足を踏み入れた。昨夜のゴードンの話が、鉛のように重く心にのしかかる。それは、感情的な判断がいかに危険で、悲劇を招くかという痛切な教訓だった。
山に入ると、空気が一変する。微かに響く風の唸り声は、ワイバーンの咆哮に似て不気味だった。ケンジはタブレットを片手に、足元の植生を注意深く観察する。報告書にはなかった、不自然に黒く変色した葉や、硬質化した土壌。魔力乱流がこの山の生態系を蝕んでいる証拠だ。
ルリエルは遠見の魔法で、山の奥深くまで魔力の流れを追った。彼女の視界に映る魔力は、荒れ狂う海そのもの。不規則に渦を巻き、淀む魔力は、報告書にある「魔力乱流」をはるかに上回る規模だった。まるで、この山自体が大きな病を患っているかのようだった。
シーナは岩陰から身を乗り出し、鋭い視線で空を睨む。風の流れが、わずかに乱れた。ワイバーンが滑空した後の風の余韻だ。彼女は岩肌に残された爪痕、風化した糞、そして風の軌跡を繋ぎ合わせ、ワイバーンの出現パターンを分析する。その爪痕は、他のワイバーンのものより遥かに深く、岩盤を抉っていた。
ゴードンは誰よりも前を歩き、盾となって仲間を守っていた。彼の表情は、硬い岩のように動かない。しかし、その瞳の奥には、二度と同じ悲劇を繰り返させまいという、燃えるような決意が宿っていた。
数日間にわたる現地調査の結果、ケンジの頭の中には、一つの結論が導き出されていた。それは、「討伐」という手段が、最もリスクが高いということだ。
野営の夜。焚き火の炎がパチパチと音を立てる。その音だけが響く中、ケンジは皆の前にタブレットを置いた。
「皆さん。これまでの調査結果を統合・分析した結果、ワイバーン討伐という手段は、最もリスクが高いと結論付けました」
ケンジの言葉に、皆は顔を見合わせる。彼らはワイバーンを討伐するためにここに来た。その目的が否定されたことに、戸惑いを隠せない。
ルリエルが震える声で尋ねた。「なぜですの? ケンジさん。わたしたちは、討伐のために……」
ケンジは、彼女の信頼に満ちた瞳を見つめて答えた。「理由は三つあります」
彼はタブレットに三つのデータを投影した。
一つ目は、「ワイバーンの異常な攻撃性」。
「これまでの報告書を分析した結果、このワイバーンは、通常よりも遥かに神経質で攻撃性が高いことが分かりました。縄張りに侵入した相手を無闇に攻撃することはないはずが、この個体は目撃した冒険者を執拗に追いかけ、殺害している。まるで、何かにおびえているかのように」
二つ目は、「魔力乱流」。
「この魔力乱流は、ワイバーンの予測不能な動きを生む最大の要因です。私たちが討伐を試みれば、必ずその影響を受けます。いつ、どこからワイバーンが出現するか分からない、非常に危険な状況を作り出します」
そして三つ目は、ゴードンが重く口を閉ざした。
「ゴードンさんの妹の死に繋がった、あの無謀な判断です」
その言葉に、焚き火の音が途切れる。シーナは舌打ちを一つ、ルリエルは息を呑んだ。ゴードンは、硬く握りしめた拳を震わせる。
「ワイバーンは竜族の中でも特に知能が高い。僕たちが仕掛ける罠を簡単に見破る可能性が高い。もし罠が失敗し、ワイバーンを怒らせてしまえば……僕たちはあのリーダーと同じく、根拠のない『いける!』という感情的な判断に頼るしかなくなる。それは、ゴードンさんの妹が経験したような、悲劇を招く可能性があります」
ケンジの言葉は、ただの論理的な説明ではなかった。それは、ゴードンの過去を真っ直ぐに見つめ、二度と同じ過ちを繰り返させないという強い意志だった。
ゴードンの沈黙が、重く場を支配する。
先に口を開いたのは、シーナだった。彼女は腕を組み、冷ややかな視線をケンジに向ける。
「話は分かった。要するに、真っ向から戦うのは得策じゃねぇってことだろ。で? 結論はなんだ、ボス。お前がこの状況でただ立ち止まるようなタマだとは思えねぇ」
彼女は、ケンジが必ず次の手を持っていると確信していた。
「討伐という手段を諦めるわけではありません。ですが、もっと良い方法があるはずです」
ケンジは皆の顔を見回した。
「このワイバーンの異常な攻撃性には、必ず理由がある。それを知る必要があります。そして、その理由を知ることで、討伐以外の、より良い解決策が見つかるかもしれません」
それは、単に与えられたタスクをこなすのではなく、タスクの本質を理解し、より良い結果(ベターエンド)を導き出すための、彼のプロジェクトマネジメントの哲学そのものだった。
だが、そのためには、最後の、そして最も危険な手段に打って出る必要があった。
ケンジは焚き火の炎を見つめながら、静かに、皆に一つの提案をした。
「……ワイバーンの巣の内部を、直接観察する」
その言葉に、焚き火の爆ぜる音さえ止まったように感じられた。皆が息をのむ。
「ケンジさん、それはあまりにも危険ですわ! 魔力乱流の影響で、ワイバーンはいつ、どこに出現するか分からない。巣の内部であれば、その危険性はさらに増します。わたくしの魔法も、巣の奥深くまでは届きません!」
ルリエルが不安げに叫んだ。彼女の口調は丁寧だが、その声は震えていた。
「おい、ボス。冗談はよしな。ワイバーンの巣に乗り込むなんて、俺たちの得意分野じゃねぇ。あんた、いったい何を考えてるんだ?」
シーナは不満げに腕を組み、皮肉を交えながら問いかける。彼女はプロとして、無謀な作戦には決して乗らない。
そして、最も強く反発したのはゴードンだった。
彼はゆっくりと立ち上がり、ケンジを睨みつけた。その巨大な身体は怒りで震え、瞳には過去の悲劇が蘇っている。
「……それは、無謀な判断だ。根拠のない『いける!』だ。俺は、そんな作戦には、絶対に乗らない」
ゴードンの声は、低く、重く響いた。彼は二度と仲間を失いたくなかった。
ケンジは、ゴードンの怒りを真正面から受け止めた。彼の感情を理解し、その痛みを認めた上で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「皆さんの言う通りです。これは、非常に危険な作戦です。無謀だと言われても仕方ありません。しかし……」
ケンジはそこで言葉を区切り、皆をまっすぐに見つめた。彼の瞳は、焚き火の炎よりも強く、真剣な光を宿していた。
「この作戦は、無謀な『いける!』ではありません。これは、悲劇を避けるための、唯一の道です」
再び、皆が息をのんだ。
「なぜ、このワイバーンが異常な攻撃性を持っているのか。なぜ、魔力乱流が発生しているのか。その理由を、私たちはまだ知らない。もし、その理由を知らずに討伐しようとすれば、それはあの無謀なリーダーと同じです。僕たちも根拠のない『いける!』に頼ることになります」
ケンジの言葉は、ゴードンの胸に深く突き刺さった。
「僕はこのワイバーンの異常な行動に、何か理由があると考えています。もし、その理由が、ワイバーン自身が抱える、何らかの苦しみや、危機感だとしたら……?」
ケンジはルリエルに視線を向けた。
「ルリエルさん。あなたの遠見の魔法は、魔力の流れだけでなく、その魔力が持つ『感情』も、かすかに感じ取ることができますよね?」
ルリエルはハッとした表情を浮かべた。彼女の魔法は、確かにそれを可能にする。
「そして、シーナさん。あなたの隠密行動は、ワイバーンに気づかれることなく巣の奥深くまで潜入できる、唯一の手段です。あなたが、ワイバーンに気づかれることなく、巣の内部を観察し、ワイバーンの行動を客観的に記録する」
ケンジは、今度はシーナに視線を向けた。
「そして、ゴードンさん。あなたの役目は、僕たちの護衛です。もしワイバーンに発見されれば、あなたは、僕たちを守るためにワイバーンを食い止めなければならない。それは、あなたの最も得意な仕事です」
それは、このパーティのメンバー、一人ひとりの能力を最大限に活かす、完璧な作戦だった。無謀な『いける!』ではなく、論理的で、確固たる根拠に基づいた計画(プロジェクト)だったのだ。
ケンジは最後に、皆の目を見て、真剣な声で言った。
「僕は、この作戦を無謀な行為だとは思いません。これは、悲劇を避けるための、最も安全な道です。この作戦を成功させることができれば、私たちはワイバーン討伐という危険な手段に頼らずに、この問題を解決できるかもしれません」
ゴードンはケンジの言葉に、じっと耳を傾けていた。彼の心の中には、妹の悲劇の記憶と、ケンジの言葉が交互に響く。感情を排した純粋な論理で、ケンジは二度と同じ悲劇を繰り返さないと誓ってくれているかのようだった。
ゴードンは、ゆっくりと、そして力強く頷いた。
「……分かった。俺は、お前の作戦に乗る。だが、約束してくれ。無謀なことは、絶対にしないと」
ケンジは深く頷いた。
「約束します。僕はもう二度と、仲間を失うようなことはしません」
ケンジの真剣な目と強い決意に、ルリエルとシーナも心を動かされ、ゆっくりと頷いた。
「まったく、ボスには敵わねぇな。だが、やるからには最高の仕事をしてやるぜ」
シーナが不敵な笑みを浮かべて言う。
「わたくしも、ケンジさんを信じますわ。わたくしの魔法で、必ず、ワイバーンの感情を読み取ってみせます」
ルリエルもまた、決意を新たにする。
こうして、ケンジの最後の偵察作戦が正式に承認された。それは危険な賭けだった。だが、彼らは、最高のプロジェクトマネージャーであるケンジを信じていた。そして、彼らの間に生まれた、強い絆を信じていた。
彼らは、ワイバーンの巣の内部を直接観察し、この世界の「バグ」の、本当の正体へと、一歩、足を踏み入れることになる。
山に入ると、空気が一変する。微かに響く風の唸り声は、ワイバーンの咆哮に似て不気味だった。ケンジはタブレットを片手に、足元の植生を注意深く観察する。報告書にはなかった、不自然に黒く変色した葉や、硬質化した土壌。魔力乱流がこの山の生態系を蝕んでいる証拠だ。
ルリエルは遠見の魔法で、山の奥深くまで魔力の流れを追った。彼女の視界に映る魔力は、荒れ狂う海そのもの。不規則に渦を巻き、淀む魔力は、報告書にある「魔力乱流」をはるかに上回る規模だった。まるで、この山自体が大きな病を患っているかのようだった。
シーナは岩陰から身を乗り出し、鋭い視線で空を睨む。風の流れが、わずかに乱れた。ワイバーンが滑空した後の風の余韻だ。彼女は岩肌に残された爪痕、風化した糞、そして風の軌跡を繋ぎ合わせ、ワイバーンの出現パターンを分析する。その爪痕は、他のワイバーンのものより遥かに深く、岩盤を抉っていた。
ゴードンは誰よりも前を歩き、盾となって仲間を守っていた。彼の表情は、硬い岩のように動かない。しかし、その瞳の奥には、二度と同じ悲劇を繰り返させまいという、燃えるような決意が宿っていた。
数日間にわたる現地調査の結果、ケンジの頭の中には、一つの結論が導き出されていた。それは、「討伐」という手段が、最もリスクが高いということだ。
野営の夜。焚き火の炎がパチパチと音を立てる。その音だけが響く中、ケンジは皆の前にタブレットを置いた。
「皆さん。これまでの調査結果を統合・分析した結果、ワイバーン討伐という手段は、最もリスクが高いと結論付けました」
ケンジの言葉に、皆は顔を見合わせる。彼らはワイバーンを討伐するためにここに来た。その目的が否定されたことに、戸惑いを隠せない。
ルリエルが震える声で尋ねた。「なぜですの? ケンジさん。わたしたちは、討伐のために……」
ケンジは、彼女の信頼に満ちた瞳を見つめて答えた。「理由は三つあります」
彼はタブレットに三つのデータを投影した。
一つ目は、「ワイバーンの異常な攻撃性」。
「これまでの報告書を分析した結果、このワイバーンは、通常よりも遥かに神経質で攻撃性が高いことが分かりました。縄張りに侵入した相手を無闇に攻撃することはないはずが、この個体は目撃した冒険者を執拗に追いかけ、殺害している。まるで、何かにおびえているかのように」
二つ目は、「魔力乱流」。
「この魔力乱流は、ワイバーンの予測不能な動きを生む最大の要因です。私たちが討伐を試みれば、必ずその影響を受けます。いつ、どこからワイバーンが出現するか分からない、非常に危険な状況を作り出します」
そして三つ目は、ゴードンが重く口を閉ざした。
「ゴードンさんの妹の死に繋がった、あの無謀な判断です」
その言葉に、焚き火の音が途切れる。シーナは舌打ちを一つ、ルリエルは息を呑んだ。ゴードンは、硬く握りしめた拳を震わせる。
「ワイバーンは竜族の中でも特に知能が高い。僕たちが仕掛ける罠を簡単に見破る可能性が高い。もし罠が失敗し、ワイバーンを怒らせてしまえば……僕たちはあのリーダーと同じく、根拠のない『いける!』という感情的な判断に頼るしかなくなる。それは、ゴードンさんの妹が経験したような、悲劇を招く可能性があります」
ケンジの言葉は、ただの論理的な説明ではなかった。それは、ゴードンの過去を真っ直ぐに見つめ、二度と同じ過ちを繰り返させないという強い意志だった。
ゴードンの沈黙が、重く場を支配する。
先に口を開いたのは、シーナだった。彼女は腕を組み、冷ややかな視線をケンジに向ける。
「話は分かった。要するに、真っ向から戦うのは得策じゃねぇってことだろ。で? 結論はなんだ、ボス。お前がこの状況でただ立ち止まるようなタマだとは思えねぇ」
彼女は、ケンジが必ず次の手を持っていると確信していた。
「討伐という手段を諦めるわけではありません。ですが、もっと良い方法があるはずです」
ケンジは皆の顔を見回した。
「このワイバーンの異常な攻撃性には、必ず理由がある。それを知る必要があります。そして、その理由を知ることで、討伐以外の、より良い解決策が見つかるかもしれません」
それは、単に与えられたタスクをこなすのではなく、タスクの本質を理解し、より良い結果(ベターエンド)を導き出すための、彼のプロジェクトマネジメントの哲学そのものだった。
だが、そのためには、最後の、そして最も危険な手段に打って出る必要があった。
ケンジは焚き火の炎を見つめながら、静かに、皆に一つの提案をした。
「……ワイバーンの巣の内部を、直接観察する」
その言葉に、焚き火の爆ぜる音さえ止まったように感じられた。皆が息をのむ。
「ケンジさん、それはあまりにも危険ですわ! 魔力乱流の影響で、ワイバーンはいつ、どこに出現するか分からない。巣の内部であれば、その危険性はさらに増します。わたくしの魔法も、巣の奥深くまでは届きません!」
ルリエルが不安げに叫んだ。彼女の口調は丁寧だが、その声は震えていた。
「おい、ボス。冗談はよしな。ワイバーンの巣に乗り込むなんて、俺たちの得意分野じゃねぇ。あんた、いったい何を考えてるんだ?」
シーナは不満げに腕を組み、皮肉を交えながら問いかける。彼女はプロとして、無謀な作戦には決して乗らない。
そして、最も強く反発したのはゴードンだった。
彼はゆっくりと立ち上がり、ケンジを睨みつけた。その巨大な身体は怒りで震え、瞳には過去の悲劇が蘇っている。
「……それは、無謀な判断だ。根拠のない『いける!』だ。俺は、そんな作戦には、絶対に乗らない」
ゴードンの声は、低く、重く響いた。彼は二度と仲間を失いたくなかった。
ケンジは、ゴードンの怒りを真正面から受け止めた。彼の感情を理解し、その痛みを認めた上で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「皆さんの言う通りです。これは、非常に危険な作戦です。無謀だと言われても仕方ありません。しかし……」
ケンジはそこで言葉を区切り、皆をまっすぐに見つめた。彼の瞳は、焚き火の炎よりも強く、真剣な光を宿していた。
「この作戦は、無謀な『いける!』ではありません。これは、悲劇を避けるための、唯一の道です」
再び、皆が息をのんだ。
「なぜ、このワイバーンが異常な攻撃性を持っているのか。なぜ、魔力乱流が発生しているのか。その理由を、私たちはまだ知らない。もし、その理由を知らずに討伐しようとすれば、それはあの無謀なリーダーと同じです。僕たちも根拠のない『いける!』に頼ることになります」
ケンジの言葉は、ゴードンの胸に深く突き刺さった。
「僕はこのワイバーンの異常な行動に、何か理由があると考えています。もし、その理由が、ワイバーン自身が抱える、何らかの苦しみや、危機感だとしたら……?」
ケンジはルリエルに視線を向けた。
「ルリエルさん。あなたの遠見の魔法は、魔力の流れだけでなく、その魔力が持つ『感情』も、かすかに感じ取ることができますよね?」
ルリエルはハッとした表情を浮かべた。彼女の魔法は、確かにそれを可能にする。
「そして、シーナさん。あなたの隠密行動は、ワイバーンに気づかれることなく巣の奥深くまで潜入できる、唯一の手段です。あなたが、ワイバーンに気づかれることなく、巣の内部を観察し、ワイバーンの行動を客観的に記録する」
ケンジは、今度はシーナに視線を向けた。
「そして、ゴードンさん。あなたの役目は、僕たちの護衛です。もしワイバーンに発見されれば、あなたは、僕たちを守るためにワイバーンを食い止めなければならない。それは、あなたの最も得意な仕事です」
それは、このパーティのメンバー、一人ひとりの能力を最大限に活かす、完璧な作戦だった。無謀な『いける!』ではなく、論理的で、確固たる根拠に基づいた計画(プロジェクト)だったのだ。
ケンジは最後に、皆の目を見て、真剣な声で言った。
「僕は、この作戦を無謀な行為だとは思いません。これは、悲劇を避けるための、最も安全な道です。この作戦を成功させることができれば、私たちはワイバーン討伐という危険な手段に頼らずに、この問題を解決できるかもしれません」
ゴードンはケンジの言葉に、じっと耳を傾けていた。彼の心の中には、妹の悲劇の記憶と、ケンジの言葉が交互に響く。感情を排した純粋な論理で、ケンジは二度と同じ悲劇を繰り返さないと誓ってくれているかのようだった。
ゴードンは、ゆっくりと、そして力強く頷いた。
「……分かった。俺は、お前の作戦に乗る。だが、約束してくれ。無謀なことは、絶対にしないと」
ケンジは深く頷いた。
「約束します。僕はもう二度と、仲間を失うようなことはしません」
ケンジの真剣な目と強い決意に、ルリエルとシーナも心を動かされ、ゆっくりと頷いた。
「まったく、ボスには敵わねぇな。だが、やるからには最高の仕事をしてやるぜ」
シーナが不敵な笑みを浮かべて言う。
「わたくしも、ケンジさんを信じますわ。わたくしの魔法で、必ず、ワイバーンの感情を読み取ってみせます」
ルリエルもまた、決意を新たにする。
こうして、ケンジの最後の偵察作戦が正式に承認された。それは危険な賭けだった。だが、彼らは、最高のプロジェクトマネージャーであるケンジを信じていた。そして、彼らの間に生まれた、強い絆を信じていた。
彼らは、ワイバーンの巣の内部を直接観察し、この世界の「バグ」の、本当の正体へと、一歩、足を踏み入れることになる。
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!
飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。
貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。
だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。
なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。
その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる