傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件

篠の目

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第199章 計算された殲滅戦

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彼の獣じみた咆哮とともに、ボア・マンの軍勢が一斉に進軍を開始した。
その光景を、城壁の上に布陣する弩砲手たちは無言で見下ろしていた。
人手不足という現実的な理由から、フィルードはこの弩砲の操作を農奴兵二百名に任せ、残りはすべてカールトン子爵配下の農奴で補っていた。
城壁上は比較的安全であり、複雑な判断も必要ない。――この程度の配置で十分だ。
ボア・マンが百メートル圏内に踏み込んだ瞬間、城壁の上の弩砲が一斉にうなりを上げた。
狙いは明確。重装甲を身にまとったボア・マンの集団のみ。
空気を切り裂く轟音とともに、最前列のボア・マンがまとめて倒れ伏した。
目測でも百名以上。
ボア・マンの首領は一瞬、表情を強張らせたが、ここで踏みとどまる選択肢はなかった。前衛の豚頭族が崩れれば、次に潰されるのは自分たちだ。
――そして、この軍が「異常」だという事実を、彼はこの時ようやく理解した。
四百名以上を犠牲にして、ようやく彼らは軍列の端に到達した。
首領は冷静だった。両翼の兵力が中央より弱いことを正確に見抜き、そこを突破口として定める。
(悪くない判断だ。だが……)
フィルードはその動きを見て、即座に配下の見習い超凡者を呼び寄せた。
自らも魔力の使用を極力抑え、徹甲矢へと持ち替える。
一射ごとに最低限の魔力。
だが、すべてが致命傷だった。
――一矢、一殺。
ほぼ機械的に、ボア・マンが次々と崩れ落ちていく。
協議の結果、エレナには通常のボア・マン戦士を任せ、上位超凡者は片牙の老者とカールトン領の上位超凡者が相手取ることとなった。
フィルードとエレナは、戦場に舞う二色の死神となった。
矢が放たれるたび、命が一つ消える。
数名のボア・マン超凡戦士が二人を止めようと突撃したが、その瞬間、自軍の超凡者が一斉に集まり、完全包囲を形成した。
二つの子爵領に加え、フィルード領地の見習い超凡者も含め、こちらはほぼ二十名。
対する相手は六、七名。
結果は語るまでもなかった。
数分後、ボア・マンの超凡戦士たちは全滅し、二十名の超凡者がそのまま敵陣へと雪崩れ込む。
人数は増えていたが、質もまた増していた。
前回よりも、はるかに楽だ。
体力切れを待つ必要すらない。
一方、ボア・マンの上位首領も追い詰められていた。
二名の上位超凡者に挟まれ、防戦一方。反撃の余地は皆無。
片牙の老者が隙を捉え、巨大な斧を振り抜く。
鈍い破砕音とともに、腕の骨が砕け、だらりと垂れ下がった。
救援に駆け寄ろうとするボア・マンたちを、フィルードとエレナの矢が次々と薙ぎ倒す。
そこに生まれたのは、まるで真空地帯だった。
片腕を失った首領は、背から骨製の片手剣を抜いた。
――以前の首領と同じ材質。
フィルードは即座に叫ぶ。
「その骨剣に注意を!極めて鋭利だ、武器で打ち合うな!」
二人の老者は短く頷いた。
武器を得た首領は、なおも粘ったが――
フィルードの魔力はすでに大半を使い切っていた。
それでも、彼一人で六十名以上。
エレナは百名以上。
(十分だ。ここで終わらせる)
フィルードは大黒の背から徹甲騎馬槍を引き抜き、怒号とともに突撃した。
全力疾走する大黒。
背後など、敵が警戒できるはずもない。
衝突音。
槍は砕けたが、敵の体勢も崩れた。
その一瞬を、片牙の老者が逃さなかった。
もう一方の腕を粉砕。
直後、カールトン領の上位超凡者が跳躍し、首を刎ねる。
上位超凡者同士の戦いは、ここに終結した。
指揮官の死は、即座に戦場全体を崩壊させた。
豚頭族は悲鳴を上げて逃げ散り、武器を捨て始める。
フィルードは叫んだ。
「追撃しろ!獣人を殲滅しろ!こいつらは、同胞と子供たちを殺した敵だ!」
兵士たちは血に飢えたかのように突撃した。
残存兵は五百に満たず、すでに疲弊している。
その時、城門が開き、農奴兵――いや、農民たちが雪崩れ出てきた。
鍬を持つ者、白髪の老人までいる。
フィルードは苦笑する。
「子爵様、ずいぶん元気な領民ですね」
カールトンも肩をすくめた。
「息子たちでしょうな」
「賢明です。敗走兵を狩るのは、豚を屠るより簡単ですから」
こうして、ボア・マンは完全に殲滅された。
戦場には静寂が戻り、勝利だけが残った。
六千の死体と引き換えに。
――計算どおりの、完全勝利だった。
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