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第301章膛線――精度という名の壁を越えて
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この工具に要求される精度は、決して極端に高いわけではない。
だがそれでも、最低限ミリ単位の精度は必要だった。
――理論は分かっている。問題は、再現性だ。
フィルードは運に頼るしかなく、五日目になってようやく「使える」と言えるレベルのフックナイフを完成させた。
もし熟練の職人がこの刃先を見れば、間違いなく声を上げただろう。
それほどまでに完成度は高い。
形状は完全なフック状のバイト。ただし、わずかに短い。
無数の失敗の末に、ようやく辿り着いた形だった。
それでも、この超凡魔鉄製の刃で木材を削るだけで一苦労する。
この時点で、フィルードは薄々理解していた。
――前世では、旋盤でやっていた作業だ。
どれほどの動力が必要か、考えるまでもない。
素材が極めて硬くなければ、鋼鉄を削ることなど不可能だ。
だが大まかな法則を掴んだフィルードは、黒精鉄を取り出し、本格的な製作に踏み切った。
溶解と成形を何度も繰り返し、丸一日を費やしてようやく高精度のフックナイフを完成させる。
代償として、上位木材を燃料に大量消費した。
次は、ルーン刻印だ。
失敗は許されない。
同じ精度のナイフをもう一度作るとなれば、何日かかるか分からない。
――ここは、完全に運だな。
要求精度が高すぎるため、手作業で均一な膛線を刻むのは至難。
それでも慎重に、集中し続けた。
幸いにも、事故は起きなかった。
完成したナイフを手に取った瞬間、フィルードは思わずそれに強く口づけた。
エレナ以上に愛着が湧いた、と本気で思った。
それほどまでに苦労した成果だ。
――これで、ようやく膛線を試せる。
早速、銃身にフックナイフを当てる。
だが、再び問題が発生した。
削れない。
見習い初級魔鉄が、まったく削れない。
この光景を前に、フィルードは発狂寸前だった。
数日間、手の皮は剥け、頭も限界まで酷使している。
――だが、ここまで来て諦めるわけがない。
フィルードは大黒を呼び、簡易的な歯車装置を作らせ、粗末な木製旋盤へと接続した。
非常に、非常に粗末だ。
大黒にウィンチを引かせたが、木製の回転輪はすぐに悲鳴を上げ、力を込めた瞬間に崩壊した。
仕方なく素材を強化。
コア部分をすべて魔鉄製に変更する。
再挑戦。
それでも失敗。
ここでフィルードは気づいた。
これは技術ではなく、連携の問題だ。
大黒の出力が均一でないため、銃身に即座に傷が入る。
危険を承知で、フィルード自身が手で支えた。
それでもダメ。
――原因は、俺だな。
前世で旋盤を扱った経験がない。
そのため、膛線の深さがどうしても均一にならない。
何度も調整を重ね、フィルードは大黒に「少し速く」走らせる判断を下した。
完全に回転すれば、操作感度は上がる。
代償として、大黒は相当きつい。
こうして誕生したのが、世界初の牛駆動式簡易旋盤だった。
一、二日かけて連携を練習した後、ついに本番。
フィルードは、完全に膛線を刻んだ銃身を完成させた。
しかも全体が見習い初級魔鉄製。
前世で作られた最初期の膛線銃身より、間違いなく優れている。
――俺の限界は、この辺りだろうな。
大黒が上位に進化しない限り、上級見習いレベルの膛線は無理だ。
だが問題ない。
火薬は結局、凡物だ。
上級見習いレベルを超えれば、反動に耐えられない。
それなら小型砲を持たせた方が合理的。
今回の成功は、前世の知識、大黒の補助、黒精鉄ドリル。
どれが欠けても成立しなかった。
銃身が完成すると、すぐに火槍を組み上げる。
領地初の膛線付き火槍。
フィルードはこれを「大黒一号」と名付けた。
銃床には、上級見習い素材の聚魔樹を使用。
完成後、即座に実射試験に入る。
100m先、木に止まった鳥。
装填、照準、点火――動作は淀みない。
パン!
鳥は瞬時に落下した。
手応えは完璧。
150mでも十分。
200mでも失望はない。
250mになると、ようやく威力低下を感じ始めた。
――有効射程、約200m。
これは恐ろしい数値だ。
上位超凡者でも、この距離に攻撃を届かせるのは難しい。
ベッドクロスボウでは、完全に力不足。
フィルードは考え、火薬を増量。
70gは危険だ。なら60g。
結果、射程はさらに50m延びた。
250m以内なら精度も維持される。
――250m専殺、か。
新銃を手にした高揚感で、何でも撃ちたくなる。
60g装薬で、五、六十発。
その瞬間、銃身が爆裂した。
肝を冷やし、砕けた銃身を見つめる。
悔しさが込み上げた。
――大黒一号、栄光の引退だな。
原因は装薬量だろう。
そもそも膛線銃身は寿命が短い。
50gに戻しても、数百~千発で限界。
つまり、この武器は消耗品。
冷兵器にすれば、代々受け継げるほどの耐久がある。
やはり、普通の人間が扱う武器ではない。
考えた末、フィルードは損傷したドワーフ製鉄甲を取り出した。
高炭素鋼の可能性が高い。
魔器精錬で溶かし、鉄棒に成形。
普通素材で膛線銃身を作れば、どうなるか。
再び大黒の補助を借りる。
魔鉄ほどではなく、作業は格段に楽だった。
こうして、通常素材製の膛線銃身が、静かに完成した。
だがそれでも、最低限ミリ単位の精度は必要だった。
――理論は分かっている。問題は、再現性だ。
フィルードは運に頼るしかなく、五日目になってようやく「使える」と言えるレベルのフックナイフを完成させた。
もし熟練の職人がこの刃先を見れば、間違いなく声を上げただろう。
それほどまでに完成度は高い。
形状は完全なフック状のバイト。ただし、わずかに短い。
無数の失敗の末に、ようやく辿り着いた形だった。
それでも、この超凡魔鉄製の刃で木材を削るだけで一苦労する。
この時点で、フィルードは薄々理解していた。
――前世では、旋盤でやっていた作業だ。
どれほどの動力が必要か、考えるまでもない。
素材が極めて硬くなければ、鋼鉄を削ることなど不可能だ。
だが大まかな法則を掴んだフィルードは、黒精鉄を取り出し、本格的な製作に踏み切った。
溶解と成形を何度も繰り返し、丸一日を費やしてようやく高精度のフックナイフを完成させる。
代償として、上位木材を燃料に大量消費した。
次は、ルーン刻印だ。
失敗は許されない。
同じ精度のナイフをもう一度作るとなれば、何日かかるか分からない。
――ここは、完全に運だな。
要求精度が高すぎるため、手作業で均一な膛線を刻むのは至難。
それでも慎重に、集中し続けた。
幸いにも、事故は起きなかった。
完成したナイフを手に取った瞬間、フィルードは思わずそれに強く口づけた。
エレナ以上に愛着が湧いた、と本気で思った。
それほどまでに苦労した成果だ。
――これで、ようやく膛線を試せる。
早速、銃身にフックナイフを当てる。
だが、再び問題が発生した。
削れない。
見習い初級魔鉄が、まったく削れない。
この光景を前に、フィルードは発狂寸前だった。
数日間、手の皮は剥け、頭も限界まで酷使している。
――だが、ここまで来て諦めるわけがない。
フィルードは大黒を呼び、簡易的な歯車装置を作らせ、粗末な木製旋盤へと接続した。
非常に、非常に粗末だ。
大黒にウィンチを引かせたが、木製の回転輪はすぐに悲鳴を上げ、力を込めた瞬間に崩壊した。
仕方なく素材を強化。
コア部分をすべて魔鉄製に変更する。
再挑戦。
それでも失敗。
ここでフィルードは気づいた。
これは技術ではなく、連携の問題だ。
大黒の出力が均一でないため、銃身に即座に傷が入る。
危険を承知で、フィルード自身が手で支えた。
それでもダメ。
――原因は、俺だな。
前世で旋盤を扱った経験がない。
そのため、膛線の深さがどうしても均一にならない。
何度も調整を重ね、フィルードは大黒に「少し速く」走らせる判断を下した。
完全に回転すれば、操作感度は上がる。
代償として、大黒は相当きつい。
こうして誕生したのが、世界初の牛駆動式簡易旋盤だった。
一、二日かけて連携を練習した後、ついに本番。
フィルードは、完全に膛線を刻んだ銃身を完成させた。
しかも全体が見習い初級魔鉄製。
前世で作られた最初期の膛線銃身より、間違いなく優れている。
――俺の限界は、この辺りだろうな。
大黒が上位に進化しない限り、上級見習いレベルの膛線は無理だ。
だが問題ない。
火薬は結局、凡物だ。
上級見習いレベルを超えれば、反動に耐えられない。
それなら小型砲を持たせた方が合理的。
今回の成功は、前世の知識、大黒の補助、黒精鉄ドリル。
どれが欠けても成立しなかった。
銃身が完成すると、すぐに火槍を組み上げる。
領地初の膛線付き火槍。
フィルードはこれを「大黒一号」と名付けた。
銃床には、上級見習い素材の聚魔樹を使用。
完成後、即座に実射試験に入る。
100m先、木に止まった鳥。
装填、照準、点火――動作は淀みない。
パン!
鳥は瞬時に落下した。
手応えは完璧。
150mでも十分。
200mでも失望はない。
250mになると、ようやく威力低下を感じ始めた。
――有効射程、約200m。
これは恐ろしい数値だ。
上位超凡者でも、この距離に攻撃を届かせるのは難しい。
ベッドクロスボウでは、完全に力不足。
フィルードは考え、火薬を増量。
70gは危険だ。なら60g。
結果、射程はさらに50m延びた。
250m以内なら精度も維持される。
――250m専殺、か。
新銃を手にした高揚感で、何でも撃ちたくなる。
60g装薬で、五、六十発。
その瞬間、銃身が爆裂した。
肝を冷やし、砕けた銃身を見つめる。
悔しさが込み上げた。
――大黒一号、栄光の引退だな。
原因は装薬量だろう。
そもそも膛線銃身は寿命が短い。
50gに戻しても、数百~千発で限界。
つまり、この武器は消耗品。
冷兵器にすれば、代々受け継げるほどの耐久がある。
やはり、普通の人間が扱う武器ではない。
考えた末、フィルードは損傷したドワーフ製鉄甲を取り出した。
高炭素鋼の可能性が高い。
魔器精錬で溶かし、鉄棒に成形。
普通素材で膛線銃身を作れば、どうなるか。
再び大黒の補助を借りる。
魔鉄ほどではなく、作業は格段に楽だった。
こうして、通常素材製の膛線銃身が、静かに完成した。
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