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第304章誘い込まれた獣――冷静なる罠の起動
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首領の一喝が響いた瞬間、攻め上がっていた超常者たちは我先にと撤退を始めた。
木寨への奇襲は、見事なまでの虎頭蛇尾。
戦場に残ったのは、理解できない死と、恐怖だけだった。
――学習した、か。遅いが悪くない。
その後の数日間、フィルードは超常者小隊を率い、各地の寨を転戦した。
やることは一つ。
遠距離から、敵の超常者を確実に狙い撃つ。
結果は明白だった。
獣人側は夜襲すら躊躇するようになり、小型寨への夜間攻撃は完全に消えた。
やむを得ず普通兵だけで攻めるしかない状況に追い込まれたのだ。
当然、防備は大きく変わる。
各木寨には複数の投石機が配備され、すべて事前調整済み。
獣人が近づけば、即座に石弾が降り注ぐ。
落着点は固定。
超凡戦力を投入しない限り、突破は不可能だった。
――無理に来れば、死ぬ。それだけだ。
一、二日様子を見たが、獣人はついに小型寨攻略を諦めた。
大軍を再び耀獣城周辺に集結。
包囲戦へと回帰する。
フィルードはそれを見て、静かに判断を下した。
獣人どもは、もう限界に近い。
あと十日、長くて半月。
それ以上の包囲は保たない。
すでに死体すら食い尽くし、日々届く補給では到底足りていないという情報もある。
ローセイの本拠が、ここまで堅牢だとは思っていなかったのだろう。
――普通の獣人が、ここまでの城を築くとはな。
十分に震え上がらせたところで、フィルードは超常者たちを連れ、人族の略奪軍へと合流した。
今度は、追撃してくる五万の獣人大軍に「本物の驚き」を与える番だ。
合流した時、エレナはすでに軍団を率い、何日も山中を巡っていた。
追う獣人軍は痕跡すら掴めず、山中を彷徨うばかり。
ミノタウロスだけは何とか腹を満たしていたが、ジャッカルマンたちは飢えで目を血走らせていた。
フィルードは帰還するとすぐ、軍に休養を命じた。
その後、エレナと三人で大鳥に乗り、周囲を偵察。
急峻な崖、不安定な巨岩――条件の良い地形を探す。
ほどなく、いくつかの候補が見つかった。
その中でも、特に目を引く場所があった。
今にも崩れそうな巨大岩が三つ。
崖壁には、はっきりと分かるほどの亀裂が走っている。
時間の問題で崩落する地形だ。
――ここだな。
フィルードは即座に決めた。
計画は単純だ。
亀裂に火薬を仕込み、獣人を誘導して集める。
そして――爆破。
崖ごと落とし、下にいる連中をまとめて潰す。
もちろん前提は、一度戦うこと。
今が、その好機だった。
二人は獣人の必経路に待ち伏せを仕掛けた。
すでに獣人軍団は我慢の限界を超えている。
何度も痛撃を受けたせいで、無謀な突撃はしなくなったが、
隊列は散漫で、苛立ちが隠せない。
先頭には大量の斥候を出し、慎重に道を切り開いていた。
フィルードの陣取る山頭も、すぐに斥候に発見された。
それを見た指揮官は大喜びし、即座に全軍へ命令。
丘を包囲し、逃がさず潰す――その一点だけを考えていた。
……。
やがて、戦端が開かれる。
ジャッカルマンの体を、何本もの矢が貫いた。
中には一矢で三体を串刺しにするものすらあり、凄惨な光景が広がる。
それでも彼らは勇敢だった。
射程に入ったと悟るや、全力で突進。
真っ赤に染まった目は、まるで人を喰らう獣そのもの。
――負けたら、喰われるな。
フィルードは冷静にそう評価した。
ベッドクロスボウは二斉射。
それだけで、敵は百メートル圏内へ突入してきた。
続いて弓矢。
この二年で、領地の弓矢生産能力は飛躍的に向上している。
十分に乾燥した木材、工房の増設、蓄積された在庫。
高強度の消耗戦にも耐えられる。
――それでも、矢は高い。
もし火槍を全軍規模で配備できれば、
遠距離打撃は質的に変わる。
領地の負担も、職人の負荷も、大幅に減るだろう。
千本を超える矢が、一斉に放たれた。
高所から降り注ぐ矢の雨は、密集した敵を容赦なく刈り取る。
一本一本が、死神の宣告だった。
突進していたジャッカルマンが、次々と倒れていく。
山頂から見下ろしながら、フィルードは満足した。
――威力も射程も、問題なし。
帰ったらシャルドゥンたちを褒めてやる必要がある。
数十メートルまで接近したところで、今度は投槍。
段階的に、間断なく放たれる。
今回は大量に携行している。
大規模包囲戦でなければ、これだけで致命傷を与えられる。
山頂からの投槍は尽きることなく降り注ぎ、
高所の優位を活かして、一万のジャッカルマンを完全に崩壊させた。
残った五千余りは、負傷者を捨てて山下へ逃走。
それを見ていたミノタウロス首領は、抑えきれない咆哮を上げた。
理解できなかった。
なぜ、ここまで遠距離打撃が強いのか。
百五十メートルからの攻撃、弓矢、投槍。
まだ接触すらしていないのに、数千を失う。
――同数で当たっていたら……。
想像するだけで背筋が冷えた。
フィルードの実力を思い知り、首領は軽率に動けなくなる。
時刻は正午近く。
決戦をするなら、兵に食事を与え、体力を回復させねばならない。
彼は即断した。
炊事開始。
秘蔵の干し肉と食糧を解放し、腹いっぱい食わせろ。
その様子を見て、フィルードは兵に命じた。
矢と投槍の回収。
――このままでは、あと数度で尽きる。
罠は、まだ始まったばかりだった。
木寨への奇襲は、見事なまでの虎頭蛇尾。
戦場に残ったのは、理解できない死と、恐怖だけだった。
――学習した、か。遅いが悪くない。
その後の数日間、フィルードは超常者小隊を率い、各地の寨を転戦した。
やることは一つ。
遠距離から、敵の超常者を確実に狙い撃つ。
結果は明白だった。
獣人側は夜襲すら躊躇するようになり、小型寨への夜間攻撃は完全に消えた。
やむを得ず普通兵だけで攻めるしかない状況に追い込まれたのだ。
当然、防備は大きく変わる。
各木寨には複数の投石機が配備され、すべて事前調整済み。
獣人が近づけば、即座に石弾が降り注ぐ。
落着点は固定。
超凡戦力を投入しない限り、突破は不可能だった。
――無理に来れば、死ぬ。それだけだ。
一、二日様子を見たが、獣人はついに小型寨攻略を諦めた。
大軍を再び耀獣城周辺に集結。
包囲戦へと回帰する。
フィルードはそれを見て、静かに判断を下した。
獣人どもは、もう限界に近い。
あと十日、長くて半月。
それ以上の包囲は保たない。
すでに死体すら食い尽くし、日々届く補給では到底足りていないという情報もある。
ローセイの本拠が、ここまで堅牢だとは思っていなかったのだろう。
――普通の獣人が、ここまでの城を築くとはな。
十分に震え上がらせたところで、フィルードは超常者たちを連れ、人族の略奪軍へと合流した。
今度は、追撃してくる五万の獣人大軍に「本物の驚き」を与える番だ。
合流した時、エレナはすでに軍団を率い、何日も山中を巡っていた。
追う獣人軍は痕跡すら掴めず、山中を彷徨うばかり。
ミノタウロスだけは何とか腹を満たしていたが、ジャッカルマンたちは飢えで目を血走らせていた。
フィルードは帰還するとすぐ、軍に休養を命じた。
その後、エレナと三人で大鳥に乗り、周囲を偵察。
急峻な崖、不安定な巨岩――条件の良い地形を探す。
ほどなく、いくつかの候補が見つかった。
その中でも、特に目を引く場所があった。
今にも崩れそうな巨大岩が三つ。
崖壁には、はっきりと分かるほどの亀裂が走っている。
時間の問題で崩落する地形だ。
――ここだな。
フィルードは即座に決めた。
計画は単純だ。
亀裂に火薬を仕込み、獣人を誘導して集める。
そして――爆破。
崖ごと落とし、下にいる連中をまとめて潰す。
もちろん前提は、一度戦うこと。
今が、その好機だった。
二人は獣人の必経路に待ち伏せを仕掛けた。
すでに獣人軍団は我慢の限界を超えている。
何度も痛撃を受けたせいで、無謀な突撃はしなくなったが、
隊列は散漫で、苛立ちが隠せない。
先頭には大量の斥候を出し、慎重に道を切り開いていた。
フィルードの陣取る山頭も、すぐに斥候に発見された。
それを見た指揮官は大喜びし、即座に全軍へ命令。
丘を包囲し、逃がさず潰す――その一点だけを考えていた。
……。
やがて、戦端が開かれる。
ジャッカルマンの体を、何本もの矢が貫いた。
中には一矢で三体を串刺しにするものすらあり、凄惨な光景が広がる。
それでも彼らは勇敢だった。
射程に入ったと悟るや、全力で突進。
真っ赤に染まった目は、まるで人を喰らう獣そのもの。
――負けたら、喰われるな。
フィルードは冷静にそう評価した。
ベッドクロスボウは二斉射。
それだけで、敵は百メートル圏内へ突入してきた。
続いて弓矢。
この二年で、領地の弓矢生産能力は飛躍的に向上している。
十分に乾燥した木材、工房の増設、蓄積された在庫。
高強度の消耗戦にも耐えられる。
――それでも、矢は高い。
もし火槍を全軍規模で配備できれば、
遠距離打撃は質的に変わる。
領地の負担も、職人の負荷も、大幅に減るだろう。
千本を超える矢が、一斉に放たれた。
高所から降り注ぐ矢の雨は、密集した敵を容赦なく刈り取る。
一本一本が、死神の宣告だった。
突進していたジャッカルマンが、次々と倒れていく。
山頂から見下ろしながら、フィルードは満足した。
――威力も射程も、問題なし。
帰ったらシャルドゥンたちを褒めてやる必要がある。
数十メートルまで接近したところで、今度は投槍。
段階的に、間断なく放たれる。
今回は大量に携行している。
大規模包囲戦でなければ、これだけで致命傷を与えられる。
山頂からの投槍は尽きることなく降り注ぎ、
高所の優位を活かして、一万のジャッカルマンを完全に崩壊させた。
残った五千余りは、負傷者を捨てて山下へ逃走。
それを見ていたミノタウロス首領は、抑えきれない咆哮を上げた。
理解できなかった。
なぜ、ここまで遠距離打撃が強いのか。
百五十メートルからの攻撃、弓矢、投槍。
まだ接触すらしていないのに、数千を失う。
――同数で当たっていたら……。
想像するだけで背筋が冷えた。
フィルードの実力を思い知り、首領は軽率に動けなくなる。
時刻は正午近く。
決戦をするなら、兵に食事を与え、体力を回復させねばならない。
彼は即断した。
炊事開始。
秘蔵の干し肉と食糧を解放し、腹いっぱい食わせろ。
その様子を見て、フィルードは兵に命じた。
矢と投槍の回収。
――このままでは、あと数度で尽きる。
罠は、まだ始まったばかりだった。
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