傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件

篠の目

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第303章火槍が支配する戦場――冷静なる狙撃者

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この軍団の長距離強行軍能力は、この世界でも指折りだ。
フィルードはチャチャに跨り、山脈の一角へと降り立った。
――まだだ。騒ぐには早い。
ウェリアムは今もこの地に駐屯している。
城壁の周囲では、号令とともに兵たちが延々と走り続けていた。
城内の味方はもはや慣れたものだ。誰一人、眉一つ動かさない。
ほぼ毎日が訓練。
銃を持った刺突練習、重装備での強行走。
挙げ句の果てには「フィルード軍団は変態だ」と嘲笑される始末。
――望むところだ。弱いと思われるほど、後が楽になる。
将校たちも、田舎者に説明する気などない。
フィルードは軍営に降りると、ウェリアムに端的に告げた。
「北方で獣人が再び動き始めました。
 軍を率いて戻り、防衛線を固めます」
最近は略奪も沈静化していたため、ウェリアムはあっさりと頷いた。
「来年の春には城も完成する。
 その時は忘れずに受け取りに来い」
フィルードも頷き、即座に一万の兵を率いて北上した。
エレナ率いる超常者小隊は、三日ほどで追いつき合流。
メイヴは耀獣城に残り、伝令役を担うことになった。
大軍は二日で目的地へ到達。
山脈に入り駐屯した後、フィルードとエレナは獣人の補給路を探り始めた。
二十万の大軍が消費する食糧量は桁外れだ。
補給車列も、駱駝隊も、途切れることはない。
――必ず捕まる。
予想通り、ほどなく一隊を発見した。
規模は三千ほど。
フィルードは即断する。
「エレナ、ガロに連絡。
 軍を率いて物資を回収しろ」
一万の兵が十列縦隊で進み、補給隊を包囲。
隊内には百体を超えるミノタウロスが混じっていた。
フィルードはすでに、全超常者へ膛線火槍の扱いを叩き込んでいる。
装填は完了済み。
しかも全員が魔獣に騎乗し、地上を歩くかのような安定感。
――距離、二百。
「先頭のミノタウロスを狙え。
 全力で撃て!」
パン、パン――乾いた発射音。
隊列先頭の百余体のうち、二十体以上が一瞬で吹き飛んだ。
ミノタウロスの首領は凍りついた。
この距離、この威力。
魔法でもない。未知の武器――それが最も恐ろしい。
「ジャッカルマンの中に隠れろ!」
人族の大軍は、悠然と距離を詰める。
百メートルに入った瞬間、ベッドクロスボウが斉射。
前列のジャッカルマンがまとめて崩れ落ちた。
フィルードは超常者小隊を率い、敵陣の外周を回る。
火槍を収め、まずは弓。
魔力を削り切ったところで、再び火槍へ。
――弾は有限だ。だが、恐怖は無限に撒ける。
混乱の中、敵は統制を失い、各所で突破を許した。
戦闘は短時間で終結。
その後もフィルードは補給隊を狙い続け、
五日足らずで十二隊を壊滅させた。
鹵獲物資は深山各地に分散隠匿。水源も確保済みだ。
――五万来ようが、歓迎してやる。
一方、耀獣城周辺は獣人の死体で埋まっていた。
ローセイは城壁からそれを見下ろし、顔を歪める。
かつて、戦死者が引きずり戻され、腹を裂かれ、
内臓を軍糧にされる光景を見たことがある。
野蛮――その一言に尽きる。
やがて情報は獣人側にも届いた。
後方が荒らされ続ければ、補給が破綻する。
ミノタウロス獣皇は即断。
五万を分派し、そのうち一万を補給路防衛へ。
だが、その動きはすでに把握済みだった。
フィルードは迷わず深山へ退却。
その隙を突き、獣人は木寨を包囲し、
ローセイを誘い出そうとする。
情報を得たフィルードは超常者小隊のみを率い、耀獣城へ急行。
出発前、エレナを残し、包囲回避の案内役とした。
三日後、帰還。
その間に四つの寨が落ちたが、被害は最小限。
敵は大量の超常者で門を破壊。
上位中級も混じっていた。
夜、フィルードは包囲中の小寨へ潜入。
狙いは敵の超常者小隊。
夜明け前、暗夜小隊が報告する。
再び奇襲。
魔力探知で確認。
数十名、その半数以上が上位。
魔法装備持ち。
――だからこそ、銃だ。
距離二百。
簡易照準。
パン、パン――。
先頭の超常者が次々と崩れ落ちた。
一斉射で十数名即死。
上位超凡者すら、一撃で沈む。
彼らは最後まで理解できなかった。
何に殺されたのかを。
ミノタウロス首領が叫ぶ。
「怪しい武器がある!
 撤退だ! 今すぐ退け!」
フィルードは火槍を下ろし、静かに息を吐いた。
――戦場は、すでに俺の計算通りだ。
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