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第302章膛線火槍――量産と決断の分岐点
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フィルードは間を置かず、試射に入った。
魔法素材製のときと同じ感覚で50gなど、論外だ。
普通素材の銃身では危険すぎる。
今回は装薬量を20gに抑えた。
パンッ、と乾いた破裂音。
100m先の標的は、あっさりと撃ち抜かれる。
距離を150mに伸ばすと、さすがに勢いは落ち始めた。
弾道も安定を欠く。
――原因は明白だ。装薬量の限界。
つまり、この普通素材・膛線銃身の有効射程は、100~150m。
それでも、十分すぎる成果だった。
射程だけで武器の価値は決まらない。
この火槍の殺傷力は、弓矢とは次元が違う。
とりわけ甲冑に対する破壊力は凄まじく、しかも素材が安価だ。
ただし――。
これを一般兵に広く配備するのは、まだ現実的ではない。
常人でも扱えるとはいえ、生産速度がまったく追いつかない。
本格的な旋盤を大規模導入できて、ようやく検討段階だ。
フィルードはすぐに結論を出した。
次の目標は、普通兵向けの初期型・火縄滑腔銃。
射程は短いが、構造が単純で量産しやすい。
数を揃え、一斉射撃を行えば、殺傷力は跳ね上がる。
一方、この膛線火槍は小規模生産に留める。
精鋭専用。
役割分担は明確だ。
ちょうど火砲研究に移ろうとした、その時。
ローセイから急報が入った。
――ミノタウロスの大軍が、耀獣城付近まで進出。
どうやら連中は、まずこの脅威を排除し、
その後でボア・マンを片付ける算段らしい。
フィルードは即座に援軍へ向かうことはしなかった。
まず銃身製作を続行する。
経験を積んだ今、成功率はほぼ100%。
製作速度も段違いだ。
わずか二日で二十本の膛線銃身を完成させ、すべてに銃床を取り付けた。
これらは、領内の超常者たちに秘密兵器として配備する。
フィルードは厳命した。
「どんな状況でも、この銃だけは失うな」
それからようやく、超常者小隊を率いて北へ進軍。
道中も魔法素材を携行し、移動しながら銃身製作を続けた。
理想は、小隊全員の火縄膛線銃装備。
この時代を逸脱した武器が揃えば、戦闘力は爆発的に跳ね上がる。
魔法と物理、その完全融合――それ自体が脅威だ。
一日後、耀獣城に到着。
眼前には、およそ二十万のミノタウロス大軍。
城を完全包囲し、そのうち数万は本物の戦士階級。
全軍ではないにせよ、主力級の投入は明白だった。
――ここまで本気か。
これほどの規模で攻めてくる理由が、すぐには理解できない。
ミノタウロスは、まだボア・マンと激戦中のはずだ。
これだけ兵を割けば、前線が崩れかねない。
やがて峡谷内でローセイと合流した。
彼は顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「団長! 俺たちは完全に裏切られました!
あのクソ畜生、ボア・マン獣皇は俺たちを切り捨てたんです!
今、ミノタウロスと停戦したって話です!
俺の父親が向こうに古い知り合いがいて……
俺たちが滅びようが知ったことじゃない、と約束したらしい!
目先の利益しか見えないクズどもが……!」
フィルードは一瞬呆然とし、すぐに納得した。
――まあ、想定内だ。
そもそも敵同士だ。
最初から、こうなる可能性は織り込んでいた。
ただ、牛と黒精鉄の魅力が大きすぎただけ。
特に黒精鉄は、王都ですら入手困難な希少品だ。
フィルードは苦笑し、首を振る。
「ローセイ、落ち着け。
卑劣だが、理屈は通っている。
あいつらは今、ボロボロだ。
休戦して立て直さなきゃ、内部から崩れる。
それに、俺たちの城壁が堅牢なのは承知のはずだ。
ミノタウロスが遠征して、簡単に落とせるとは思っていない。
下手をすれば、今回の攻撃で大失敗するぞ。
……それで、攻城の様子は?」
ローセイは深く息を吐き、報告する。
「昨日到着してすぐ総攻撃です。
城壁はまだ未完成ですが、石壁部分はほぼ仕上がっています。
敵に工兵戦力はなく、梯子攻撃ばかり。
城内にはジャッカルマン新兵が多数おり、
今のところ、まったく突破されていません。
ここ二日で、少なくとも数千は削っています」
フィルードは頷いた。
「いい。
お前は何もするな。城を死守しろ。
高さ十数メートルの城壁だ。正面突破は不可能。
警戒すべきは周囲の木寨だ。
今回は、ミノタウロスの超常者が相当数随行しているはずだ。
分兵して木寨を攻める兆しがあれば、即座に知らせろ」
ローセイは力強く頷き、去っていった。
城壁上で防衛に当たるジャッカルマンたちを眺めながら、
フィルードは静かに理解した。
――理由は、これだ。
領内に大量のジャッカルマン眷属が存在すること。
ここで大規模な部族国家が成立すれば、
ミノタウロス領内のジャッカルマンにも反乱の火種が広がる。
加えて、この数ヶ月で凶暴なジャッカルマンを大量に腹地へ押し込んだ。
死を恐れない連中だ。
神経を逆撫でされないはずがない。
――外敵を討つ前に、内を安定させる。
合理的な判断だ。
すべてを把握したフィルードは、
エレナに超常者小隊を率いさせ、獣定城方面へ向かわせた。
自分はチャチャに跨り、単身で先行。
目的は一つ――
一万の人間兵を率い、ミノタウロスの補給路を叩く。
この人間軍団は、長らく実戦から遠ざかっている。
腕が鈍る前に、血を見せる必要がある。
しかも補給路奇襲は、獣人より人間兵の方が適任だ。
彼らは日々、負重長距離走を続けてきた。
――さあ、次は戦場だ。
魔法素材製のときと同じ感覚で50gなど、論外だ。
普通素材の銃身では危険すぎる。
今回は装薬量を20gに抑えた。
パンッ、と乾いた破裂音。
100m先の標的は、あっさりと撃ち抜かれる。
距離を150mに伸ばすと、さすがに勢いは落ち始めた。
弾道も安定を欠く。
――原因は明白だ。装薬量の限界。
つまり、この普通素材・膛線銃身の有効射程は、100~150m。
それでも、十分すぎる成果だった。
射程だけで武器の価値は決まらない。
この火槍の殺傷力は、弓矢とは次元が違う。
とりわけ甲冑に対する破壊力は凄まじく、しかも素材が安価だ。
ただし――。
これを一般兵に広く配備するのは、まだ現実的ではない。
常人でも扱えるとはいえ、生産速度がまったく追いつかない。
本格的な旋盤を大規模導入できて、ようやく検討段階だ。
フィルードはすぐに結論を出した。
次の目標は、普通兵向けの初期型・火縄滑腔銃。
射程は短いが、構造が単純で量産しやすい。
数を揃え、一斉射撃を行えば、殺傷力は跳ね上がる。
一方、この膛線火槍は小規模生産に留める。
精鋭専用。
役割分担は明確だ。
ちょうど火砲研究に移ろうとした、その時。
ローセイから急報が入った。
――ミノタウロスの大軍が、耀獣城付近まで進出。
どうやら連中は、まずこの脅威を排除し、
その後でボア・マンを片付ける算段らしい。
フィルードは即座に援軍へ向かうことはしなかった。
まず銃身製作を続行する。
経験を積んだ今、成功率はほぼ100%。
製作速度も段違いだ。
わずか二日で二十本の膛線銃身を完成させ、すべてに銃床を取り付けた。
これらは、領内の超常者たちに秘密兵器として配備する。
フィルードは厳命した。
「どんな状況でも、この銃だけは失うな」
それからようやく、超常者小隊を率いて北へ進軍。
道中も魔法素材を携行し、移動しながら銃身製作を続けた。
理想は、小隊全員の火縄膛線銃装備。
この時代を逸脱した武器が揃えば、戦闘力は爆発的に跳ね上がる。
魔法と物理、その完全融合――それ自体が脅威だ。
一日後、耀獣城に到着。
眼前には、およそ二十万のミノタウロス大軍。
城を完全包囲し、そのうち数万は本物の戦士階級。
全軍ではないにせよ、主力級の投入は明白だった。
――ここまで本気か。
これほどの規模で攻めてくる理由が、すぐには理解できない。
ミノタウロスは、まだボア・マンと激戦中のはずだ。
これだけ兵を割けば、前線が崩れかねない。
やがて峡谷内でローセイと合流した。
彼は顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「団長! 俺たちは完全に裏切られました!
あのクソ畜生、ボア・マン獣皇は俺たちを切り捨てたんです!
今、ミノタウロスと停戦したって話です!
俺の父親が向こうに古い知り合いがいて……
俺たちが滅びようが知ったことじゃない、と約束したらしい!
目先の利益しか見えないクズどもが……!」
フィルードは一瞬呆然とし、すぐに納得した。
――まあ、想定内だ。
そもそも敵同士だ。
最初から、こうなる可能性は織り込んでいた。
ただ、牛と黒精鉄の魅力が大きすぎただけ。
特に黒精鉄は、王都ですら入手困難な希少品だ。
フィルードは苦笑し、首を振る。
「ローセイ、落ち着け。
卑劣だが、理屈は通っている。
あいつらは今、ボロボロだ。
休戦して立て直さなきゃ、内部から崩れる。
それに、俺たちの城壁が堅牢なのは承知のはずだ。
ミノタウロスが遠征して、簡単に落とせるとは思っていない。
下手をすれば、今回の攻撃で大失敗するぞ。
……それで、攻城の様子は?」
ローセイは深く息を吐き、報告する。
「昨日到着してすぐ総攻撃です。
城壁はまだ未完成ですが、石壁部分はほぼ仕上がっています。
敵に工兵戦力はなく、梯子攻撃ばかり。
城内にはジャッカルマン新兵が多数おり、
今のところ、まったく突破されていません。
ここ二日で、少なくとも数千は削っています」
フィルードは頷いた。
「いい。
お前は何もするな。城を死守しろ。
高さ十数メートルの城壁だ。正面突破は不可能。
警戒すべきは周囲の木寨だ。
今回は、ミノタウロスの超常者が相当数随行しているはずだ。
分兵して木寨を攻める兆しがあれば、即座に知らせろ」
ローセイは力強く頷き、去っていった。
城壁上で防衛に当たるジャッカルマンたちを眺めながら、
フィルードは静かに理解した。
――理由は、これだ。
領内に大量のジャッカルマン眷属が存在すること。
ここで大規模な部族国家が成立すれば、
ミノタウロス領内のジャッカルマンにも反乱の火種が広がる。
加えて、この数ヶ月で凶暴なジャッカルマンを大量に腹地へ押し込んだ。
死を恐れない連中だ。
神経を逆撫でされないはずがない。
――外敵を討つ前に、内を安定させる。
合理的な判断だ。
すべてを把握したフィルードは、
エレナに超常者小隊を率いさせ、獣定城方面へ向かわせた。
自分はチャチャに跨り、単身で先行。
目的は一つ――
一万の人間兵を率い、ミノタウロスの補給路を叩く。
この人間軍団は、長らく実戦から遠ざかっている。
腕が鈍る前に、血を見せる必要がある。
しかも補給路奇襲は、獣人より人間兵の方が適任だ。
彼らは日々、負重長距離走を続けてきた。
――さあ、次は戦場だ。
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