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第336章 玉座を踏み砕く
フィルード様は、すべてを拒絶した。
理由は幾つも用意されていた。
だが本質は一つだ。
——王都へは行かない。
それだけで十分だった。
これにより、王国との関係は完全に断たれた。
エドモンも、ここまで早く事態が進むとは思っていなかったはずだ。
だが、仮面は外れた。
エドモンは、文字通り卓をひっくり返した。
王国内すべての領主へ通達——
フィルードとの取引を全面禁止。
さらに正式宣言。
フィルードの貴族位を剥奪。
罪状は——
「獣人と狼狽為奸し、王国の利益を侵食した逆賊」。
そして、とどめ。
フィルードの首級を王都へ持ち帰った者に、即座に子爵位を授与する。
……懸賞首だ。
その大胆さに、貴族たちは呆然とした。
だがフィルード様も、もはや遠慮はしない。
同時に情報を拡散。
エドモンの失策を一つ一つ列挙した。
北方防衛初期の混乱。
敵国との戦争での連敗。
草原国の独立。
そして——
自分を北方へ追いやろうとした件。
警戒心と猜疑。
無能と焦燥。
在位中、王国は衰退の一途。
それを数字と事実で突きつけた。
空を隔てた罵り合い。
だが、この情報戦で揺れたのは——王国内の貴族たちだ。
(使い捨てか……)
彼らは内心で震えた。
フィルード様は、次の一手をすでに打っていた。
草原伯国へ使者を派遣。
内容は簡潔だ。
アモン王国が侵攻を企図している。
城を固守せよ。
騎兵は外で遊撃し、機を窺え。
そして明記。
自分はすでに王国と決別。
王国軍が来れば、こちらも出兵し援護する。
(敵の敵は、今は味方だ)
草原伯国への攻撃は、本来“極秘かつ迅速”でなければならない。
救援をキプチャク国に求められれば、長期戦になる。
だが王国には、その余力があるか?
ここ数年で国力は削られ続けた。
先日も五~六万の大軍が壊滅。
職人も農奴も大量に失った。
フィルード様の読みは冷静だ。
——草原伯国攻撃は陽動の可能性が高い。
本気で攻め切る力は残っていない。
ならば、こちらから動く。
獣人領域から一万騎兵を抽出。
四千騎を残して反乱対応。
フィルード様自ら、一万騎兵を率いる。
標的は——モニーク城周辺。
そこはまだ焼け残りが多い。
油と脂が残っている。
略奪後は、定獣城から人員を派遣し回収。
連盟内へ再分配。
(略奪も、戦略資源だ)
出陣前日。
フィルード様は正式に——
多種族連合王国の建国を宣言。
フィルード一世を名乗る。
領土は旧ミノタウロス領域、ボア・マン領域の三分の一。
建国と同時に、アモン王国へ宣戦布告。
エドモンがそれを受け取った頃。
フィルード様はすでに数日間、モニーク城周辺を蹂躙していた。
領主たちは、まるで良い子のように野戦に出ない。
フィルード様の見立てでは、
敵の精鋭は一万も集まらない。
農奴込みで数万。
出てくれば白兵で終わる。
だから——
地毯式略奪。
騎士領を一つずつ剥ぎ取る。
「殺すな。食糧だけ奪え。
平民に触るな。貴族だけを狙え」
命令は明確だ。
(民を敵に回すな。支配は後で効く)
さらに青壮年を家族ごと連行。
峡谷領地へ送る。
五日。
たった五日で、モニーク周辺は“耕された”。
だが、まだ足りない。
定獣城へ命令。
正規守備軍団三万。
獣人青壮年二万。
一万を城に残し、
二万+二万をモニーク方面へ移動。
四万の軍団が堂々と城前を通過。
城壁の上で、デライヴン伯爵は目を見開いた。
王国が掴んでいたのは断片情報。
フィルードが獣人反乱軍と深く結びついていること。
だが——
ミノタウロスを完全指揮できるとは知らなかった。
(情報不足は、死に直結する)
フィルード様は一万騎兵で合流。
守備軍団の戦闘力は中間層。
農奴より強く、正規軍より弱い。
だが——数は力。
出陣前、大量の雄羊を屠殺。
腹を満たした兵は獅子の如し。
(飢えた兵は脆い。満腹の兵は猛る)
五万の軍勢で包囲開始。
原則は——先易後難。
まずは男爵領。
包囲すると、守備兵はすぐ懇願。
「保護費を払う。平和を保ってくれ」
フィルード様は冷静に計算。
人口。
生産量。
備蓄。
要求は総量の三分の二。
男爵は蒼白。
「拒否すれば——降伏しなければ殺す。
お前と家族は粛清。
他は無事」
さらに象徴的に投石機を製作開始。
結果。
青壮年と食糧の大半を差し出した。
同様の手法で、モニーク管轄内の男爵領を一掃。
次は子爵城。
同じく脅迫から始める。
だが子爵級は城も大きい。
短期攻略は困難。
相手は抵抗を選んだ。
フィルード様は、わずかに口角を上げた。
(度胸は認める)
そして——
魔鉄砲を引き出す。
二門。
前世で言う十二ポンド砲相当。
砲身は初級魔鉄製。
一本六百ポンド。
低階魔法武器として鍛造。
符文補強済み。
完成まで何度も失敗。
血も資源も流れた。
だが——
(王国と決別した以上、もう遠慮はいらぬ)
砲口がゆっくりと子爵城へ向けられる。
玉座を選んだのは向こうだ。
ならば俺たちは——
玉座ごと、砕く。
理由は幾つも用意されていた。
だが本質は一つだ。
——王都へは行かない。
それだけで十分だった。
これにより、王国との関係は完全に断たれた。
エドモンも、ここまで早く事態が進むとは思っていなかったはずだ。
だが、仮面は外れた。
エドモンは、文字通り卓をひっくり返した。
王国内すべての領主へ通達——
フィルードとの取引を全面禁止。
さらに正式宣言。
フィルードの貴族位を剥奪。
罪状は——
「獣人と狼狽為奸し、王国の利益を侵食した逆賊」。
そして、とどめ。
フィルードの首級を王都へ持ち帰った者に、即座に子爵位を授与する。
……懸賞首だ。
その大胆さに、貴族たちは呆然とした。
だがフィルード様も、もはや遠慮はしない。
同時に情報を拡散。
エドモンの失策を一つ一つ列挙した。
北方防衛初期の混乱。
敵国との戦争での連敗。
草原国の独立。
そして——
自分を北方へ追いやろうとした件。
警戒心と猜疑。
無能と焦燥。
在位中、王国は衰退の一途。
それを数字と事実で突きつけた。
空を隔てた罵り合い。
だが、この情報戦で揺れたのは——王国内の貴族たちだ。
(使い捨てか……)
彼らは内心で震えた。
フィルード様は、次の一手をすでに打っていた。
草原伯国へ使者を派遣。
内容は簡潔だ。
アモン王国が侵攻を企図している。
城を固守せよ。
騎兵は外で遊撃し、機を窺え。
そして明記。
自分はすでに王国と決別。
王国軍が来れば、こちらも出兵し援護する。
(敵の敵は、今は味方だ)
草原伯国への攻撃は、本来“極秘かつ迅速”でなければならない。
救援をキプチャク国に求められれば、長期戦になる。
だが王国には、その余力があるか?
ここ数年で国力は削られ続けた。
先日も五~六万の大軍が壊滅。
職人も農奴も大量に失った。
フィルード様の読みは冷静だ。
——草原伯国攻撃は陽動の可能性が高い。
本気で攻め切る力は残っていない。
ならば、こちらから動く。
獣人領域から一万騎兵を抽出。
四千騎を残して反乱対応。
フィルード様自ら、一万騎兵を率いる。
標的は——モニーク城周辺。
そこはまだ焼け残りが多い。
油と脂が残っている。
略奪後は、定獣城から人員を派遣し回収。
連盟内へ再分配。
(略奪も、戦略資源だ)
出陣前日。
フィルード様は正式に——
多種族連合王国の建国を宣言。
フィルード一世を名乗る。
領土は旧ミノタウロス領域、ボア・マン領域の三分の一。
建国と同時に、アモン王国へ宣戦布告。
エドモンがそれを受け取った頃。
フィルード様はすでに数日間、モニーク城周辺を蹂躙していた。
領主たちは、まるで良い子のように野戦に出ない。
フィルード様の見立てでは、
敵の精鋭は一万も集まらない。
農奴込みで数万。
出てくれば白兵で終わる。
だから——
地毯式略奪。
騎士領を一つずつ剥ぎ取る。
「殺すな。食糧だけ奪え。
平民に触るな。貴族だけを狙え」
命令は明確だ。
(民を敵に回すな。支配は後で効く)
さらに青壮年を家族ごと連行。
峡谷領地へ送る。
五日。
たった五日で、モニーク周辺は“耕された”。
だが、まだ足りない。
定獣城へ命令。
正規守備軍団三万。
獣人青壮年二万。
一万を城に残し、
二万+二万をモニーク方面へ移動。
四万の軍団が堂々と城前を通過。
城壁の上で、デライヴン伯爵は目を見開いた。
王国が掴んでいたのは断片情報。
フィルードが獣人反乱軍と深く結びついていること。
だが——
ミノタウロスを完全指揮できるとは知らなかった。
(情報不足は、死に直結する)
フィルード様は一万騎兵で合流。
守備軍団の戦闘力は中間層。
農奴より強く、正規軍より弱い。
だが——数は力。
出陣前、大量の雄羊を屠殺。
腹を満たした兵は獅子の如し。
(飢えた兵は脆い。満腹の兵は猛る)
五万の軍勢で包囲開始。
原則は——先易後難。
まずは男爵領。
包囲すると、守備兵はすぐ懇願。
「保護費を払う。平和を保ってくれ」
フィルード様は冷静に計算。
人口。
生産量。
備蓄。
要求は総量の三分の二。
男爵は蒼白。
「拒否すれば——降伏しなければ殺す。
お前と家族は粛清。
他は無事」
さらに象徴的に投石機を製作開始。
結果。
青壮年と食糧の大半を差し出した。
同様の手法で、モニーク管轄内の男爵領を一掃。
次は子爵城。
同じく脅迫から始める。
だが子爵級は城も大きい。
短期攻略は困難。
相手は抵抗を選んだ。
フィルード様は、わずかに口角を上げた。
(度胸は認める)
そして——
魔鉄砲を引き出す。
二門。
前世で言う十二ポンド砲相当。
砲身は初級魔鉄製。
一本六百ポンド。
低階魔法武器として鍛造。
符文補強済み。
完成まで何度も失敗。
血も資源も流れた。
だが——
(王国と決別した以上、もう遠慮はいらぬ)
砲口がゆっくりと子爵城へ向けられる。
玉座を選んだのは向こうだ。
ならば俺たちは——
玉座ごと、砕く。
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