29 / 47
happy2
11:実験*
しおりを挟む
ちゅ、ちゅ、と濡れたリップ音が寝室に広がる。湿った音を耳にするたび桔梗の鼓動は早くなり、体に熱が生まれる。
「んっ……ふ……ぁ、れい……じ、さ……」
最初は触れ合うだけの小鳥のキスを繰り返していたが、互いにそれだけでは物足りなく、どちらともなく開いた唇から赤い舌をひらめかせ、求めるように絡み合う。
深く追い求め、桔梗は玲司の首に腕をしっかりと回し、玲司は細く華奢な桔梗の体を抱えると、自分の体を跨ぐようにして対面に抱く。
ベッドがキシリと音色を上げると、キスの当初に取り上げられたカップが、ナイトテーブルの上でカチンと鳴る。
ふたり分の体重の負荷がかかったベッドは沈み、桔梗は臀部の辺りに熱の塊を感じては、嬉しさがこみ上げてきた。
クリスマスディナーの件や大掃除で疲れ果てたのもあり、毎日キスはしていたものの、肌を重ねるまでには至らなかったせいで、こうして性的な接触があったのは、十二月に入ってからは初めてのことだった。
「ふぁ……っ、れいじさ、……硬くな……って、んぅっ」
「本当は、この家では、誰の耳があるか、わからないので、こうならないように、気をつけてたんですけどね」
桔梗君があんまり可愛いからと、途切れた言葉で口づけの合間に囁いてくる玲司を、桔梗は涙目できっと睨んだ。それが玲司の情欲に燃料を注いでいるとは思っていないだろう。
玲司がわざと下半身の熱をグリと押し付ける。
すると、桔梗の体はこれから起こるだろう期待に、直腸の奥にある生殖器から蜜がトロリと腸壁を伝い、蕾をしとどに濡らした。
通常、発情期以外の男性オメガは、直腸が濡れることはほとんどないと言われている。それでも現実に排泄孔が濡れているのは、玲司のフェロモンにあてられ軽くヒート状態に入っているからだろう。
桔梗は玲司と繋がるまで、発情期以外──通常時の性欲はかなり希薄だった。自慰すらも殆どしたことはなく、今のように後孔を濡らすといったことも殆どなかった。
それが、玲司にキスや愛撫をされるだけで、後ろの肉壁は玲司の長大な楔を求めて自然と蠕動し、蕾は物足りなさに口を開閉してはよだれを垂らす。
玲司と出会って、体を繋げて、番契約を結んで。
そこから次に肌を重ねるまで一ヶ月以上経過して、思い通じての交接は、天国に昇る程の快感に包まれ、長い時間繋がったまま玲司の精を絞り取り続けていた。
その後数回交わって、性交の気持ちよさを覚えた所で、クリスマスメニューの準備に入ってしまい、普段働いてる時には気づかないが、ふとした瞬間に感じる情欲の熾火を感じた。
ふしだらな自分を内心責め立て、何度も玲司に向けて謝ったか。
自分が性に箍がゆるいと猛省する日々を送りつつも、やはりあの匂いを濃く感じてしまうと、本能が玲司を求めているのだ。
出会いの時に起こった発情期からそろそろ三ヶ月。一応、旅行先で起こったとしても対処できるよう、事前に藤田からは発情抑制剤と特別に避妊薬を処方してもらっていた。だから安心といえば安心ではあるものの、できることなら色んな場所をふたりで出かけたりしたいし、ベッドから離れないプレ新婚旅行というのも爛れていると思う。
でも気持ちいいことに流されてしまい、もう色々考えるのも億劫なのも事実だった。
まだお互い着ていたパジャマすら脱いでいないのに、交わる目線は淫欲に溢れ、触れる手つきは淫靡で、混じった唾液は甘く媚薬のよう。
玲司いわく、誰かの耳がある、と言われても、もうそれでもいいから、切なく震える空洞を玲司の熱で埋めて欲しいと、下着の中で充血して硬くなった自身の熱を番の腹に擦りつけた。
「れ……じ、さっ、も、ほしい……んっ、はや、くっ、ちょ……だいっ」
もどかしく腰を揺らめかせ、自身の陰茎を玲司の腹にグリグリ押し付けながら、淫らな願いを零す。瞳を潤ませ、頬を上気させる桔梗は、玲司が嫌っていたオメガの発情した姿。それなのに不思議なことに、桔梗ならばもっと蕩かせたいと思う。
結婚まで考えていた昔の恋人ですら、義務的な時間を過ごしたというのに。
桔梗が運命だからなのか。玲司自身ですら答えが見いだせなかった。
「困りましたね……、それなら、浴室で、愛し合いましょうか」
「うんっ、……はやくっ、れいじさ、……ねが、いっ」
このまま始めてもいいが、桔梗の可愛い嬌声をいくら部屋が離れているといっても、義兄弟に聞かせたくはない。特に兄の総一朗は玲司と同じアルファだ。例え影響がないと分かっていても気分はよくない。
その点浴室は構造上声が漏れることは殆どない。暖房も入っているし、多少篭もっていても問題ないだろう。
玲司は跨がせたままの桔梗の尻を支えると、耳元で「ひぁんっ」と甘い悲鳴が聞こえてくる。そっと首を巡らせ顔を窺うと、その目はトロリと蕩けていて、短く呼吸する唇は赤く、濡れている姿は番を誘うオメガらしい。
以前、桔梗の通常の性欲はかなり薄いと聞いていたが、その片鱗は今の彼にはない。
まるで玲司だけの娼夫のように、支える掌の上にある臀部は、しっとりと蜜に濡れた生地が貼り付き、くちゃ、と桔梗がみじろぐ度に音色を奏でた。
「桔梗君、避妊具が鞄の中なので、後からちゃんと避妊薬を飲んでくださいね」
「うんっ……だから、はやくぅ」
玲司を求めて発情する桔梗の耳に届いたかどうか。
もし忘れているようなら、自分が飲ませればいいか、と心のメモに留め、浴室への扉を乱暴に開いた。割と冷静なつもりでいたが、どうやら桔梗の熱に充てられたらしい。
まだ段取りを考えていられる分だけ、前よりはましだ。
桔梗を脱衣所の床に下ろすと、引き合うように自然とキスを繰り返しながら、互いのドレスシャツを脱がせあう。肌が露出すると、それぞれに所有の印をいくつも付け、どちらの肌にも赤い花弁が点々と散る。
これまで玲司は、過去の恋人たちには一度としてつけたことのない刻印を、どうして桔梗に対しては抵抗もなく、もっと埋め尽くしたいと考えるが、先程から桔梗は玲司の首に腕を回して、首筋に鼻を擦りつけてフェロモンを吸収しようとしていた為、これ以上放置するのも可哀想だ。
借り物のスーツだがまあいい。代わりの物を買って渡せば問題ないだろう。
一気に番のズボンと下着を下ろし、自分も踏みつけるように全てを取り払うと、桔梗を抱いたまま浴室へと飛び込んだ。
浴室内は全室の床にお湯を循環させている為に温かい。
かといって、全裸に耐えれる程の暖かさではない為、玲司は桔梗を抱き上げたままシャワーのコックを捻り、熱い湯をバスタブへと溜めていった。
その間も体を密着させ、舌を絡ませながら深いキスを続ける。
「ふ、はっ……、ぁう……んっ、れ、いじ、さっ……んんっ、す……き、んっ」
腰を淫らに動かして桔梗は玲司のそそり立つ逸物に擦るようにしてくる。鈴口からトプリトプリと溢れてくる粘ついた蜜がこねる音が、シャワーの水音の合間に聞こえる。
甘く好意を伝えてくる桔梗が健気で、玲司はもう今すぐにでも蕾に切っ先を押し付け、そのまま深く突き立てたいと思うが約一ヶ月ぶりの行為だ。彼の蕾は多少解けてはいるだろうが、無理をすると裂けてしまうだろう。
するりと絡めた舌をほどくと、後を追いかけてくる番の唇にキスを落として、玲司は備え付けの棚から薄いピンクの液体が入ったボトルを手に取る。
(これが凛の言ってた、お遊びで作ったローションですか)
パーティの最中、桔梗が秋槻の番と離席してすぐに、二人の元へと義弟の凛がやってきた。偶然ではあるが、自分と秋槻と凛はある意味運命共同体な部分もあったがゆえに、雑談と称して凛は秋槻へ実験のあれやこれやを根掘り葉掘りと訊いていた。
散々重箱の隅をつつくような質問攻めに辟易した玲司と秋槻は、番を迎えに行くという口実で、凛から離れようとしたのだが……
『研究のお礼に、これ』
『これは?』
装飾の施されたボトルの中にはピンク色の液体が入っていた。傾けると、もったりと倒れ、粘度が多少あるものだと気づく。
『これ、媚薬入りローション。清浄剤入りだから、注入しちゃえば、そのまますぐにできる代物』
『『は?』』
『というか、オメガの直腸部分は結腸辺りに子宮があるから、弱酸性なんだよね。女性の膣と一緒で。普通はそのままできちゃたりするんだけども。実は、ベータの男性同士のセックス用に開発したんだけど、とりあえず身近にいるアルファやオメガに実験台になってもらおうかな、って思って』
『いや、いやいやいや』
淡々と話す凛に対し、秋槻は慌てふためきながらも、ボトルだけはしっかりと握っている。玲司も実験台のひとつとして考えているようだが、後から個別で渡すのだろうか。
『大丈夫っ、精子入りの蜂蜜を番に長期的に摂取させたことができるんだから。ローションのお試しなんて軽い軽い』
『そ、そんな大きな声で言わないで!』
同じ『四神』だというのに、なぜこうも上下関係が成り立っているのだろうか。
玲司がそそのかしたけども、実際、秋槻に凛を紹介した所で繋がりは殆ど終わっていたのだ。しかし、歯に衣を着せない物言いをする凛と、当時追い詰められていた秋槻では会話にならなかったせいで、玲司が仲立ちとして調整役を引き受けていたのだった。
正直、当時と同じ光景が繰り広げられ、頭が痛い。
『凛、あんまり明け透けだと、今度から凛の分だけ食事を作るのを拒否しますけどいいですか?』
『それはやだ。玲司兄さんのご飯美味しいもん』
凛は自分の口を手で塞ぎ、自らシャットアウトする。華奢で薔子に似たクール系美人が、子どもぽい仕草をするせいか、周囲から『可憐だ……』と見惚れている連中がため息をついている。
素直なのはいいのだが、これでも桔梗よりも年上というのだから、薔子の教育は一体どうなっているのか問いただしたい所だ。
『まあ、商品化するから、モニターになれってことなら協力しますよ。ね、それでいいですよね』
『それは……まあ。結城とのことでは世話になってるので』
『彼もそう言ってますし、それでいいですよね、凛?』
なんだかんだであれから時間が経過していても、調整役を買って出る玲司に、凛は手で口を押さえたままコクコクと頷く。
『それで、僕の分もあるんですよね。どこにあるんです』
『……』
『手を塞いでる状態でウロウロしたって分からないので、喋ってもいいですよ。ただ、ここは人の目があるのを自覚して発言してくださいね』
コクコクと再び頷いた凛は、手を離すとぷはぁ、と息をついて、ボリュームを抑えた声で玲司に告げた。
『玲司兄さんのは、二人の寝室にある浴室に置いてきたよ。香織さんにスペア借りてこっそりとね』
薔子に似た華やかな笑顔を浮かべ放った言葉に、二度と凛には何も作らないと決意した玲司だった。
「んっ……ふ……ぁ、れい……じ、さ……」
最初は触れ合うだけの小鳥のキスを繰り返していたが、互いにそれだけでは物足りなく、どちらともなく開いた唇から赤い舌をひらめかせ、求めるように絡み合う。
深く追い求め、桔梗は玲司の首に腕をしっかりと回し、玲司は細く華奢な桔梗の体を抱えると、自分の体を跨ぐようにして対面に抱く。
ベッドがキシリと音色を上げると、キスの当初に取り上げられたカップが、ナイトテーブルの上でカチンと鳴る。
ふたり分の体重の負荷がかかったベッドは沈み、桔梗は臀部の辺りに熱の塊を感じては、嬉しさがこみ上げてきた。
クリスマスディナーの件や大掃除で疲れ果てたのもあり、毎日キスはしていたものの、肌を重ねるまでには至らなかったせいで、こうして性的な接触があったのは、十二月に入ってからは初めてのことだった。
「ふぁ……っ、れいじさ、……硬くな……って、んぅっ」
「本当は、この家では、誰の耳があるか、わからないので、こうならないように、気をつけてたんですけどね」
桔梗君があんまり可愛いからと、途切れた言葉で口づけの合間に囁いてくる玲司を、桔梗は涙目できっと睨んだ。それが玲司の情欲に燃料を注いでいるとは思っていないだろう。
玲司がわざと下半身の熱をグリと押し付ける。
すると、桔梗の体はこれから起こるだろう期待に、直腸の奥にある生殖器から蜜がトロリと腸壁を伝い、蕾をしとどに濡らした。
通常、発情期以外の男性オメガは、直腸が濡れることはほとんどないと言われている。それでも現実に排泄孔が濡れているのは、玲司のフェロモンにあてられ軽くヒート状態に入っているからだろう。
桔梗は玲司と繋がるまで、発情期以外──通常時の性欲はかなり希薄だった。自慰すらも殆どしたことはなく、今のように後孔を濡らすといったことも殆どなかった。
それが、玲司にキスや愛撫をされるだけで、後ろの肉壁は玲司の長大な楔を求めて自然と蠕動し、蕾は物足りなさに口を開閉してはよだれを垂らす。
玲司と出会って、体を繋げて、番契約を結んで。
そこから次に肌を重ねるまで一ヶ月以上経過して、思い通じての交接は、天国に昇る程の快感に包まれ、長い時間繋がったまま玲司の精を絞り取り続けていた。
その後数回交わって、性交の気持ちよさを覚えた所で、クリスマスメニューの準備に入ってしまい、普段働いてる時には気づかないが、ふとした瞬間に感じる情欲の熾火を感じた。
ふしだらな自分を内心責め立て、何度も玲司に向けて謝ったか。
自分が性に箍がゆるいと猛省する日々を送りつつも、やはりあの匂いを濃く感じてしまうと、本能が玲司を求めているのだ。
出会いの時に起こった発情期からそろそろ三ヶ月。一応、旅行先で起こったとしても対処できるよう、事前に藤田からは発情抑制剤と特別に避妊薬を処方してもらっていた。だから安心といえば安心ではあるものの、できることなら色んな場所をふたりで出かけたりしたいし、ベッドから離れないプレ新婚旅行というのも爛れていると思う。
でも気持ちいいことに流されてしまい、もう色々考えるのも億劫なのも事実だった。
まだお互い着ていたパジャマすら脱いでいないのに、交わる目線は淫欲に溢れ、触れる手つきは淫靡で、混じった唾液は甘く媚薬のよう。
玲司いわく、誰かの耳がある、と言われても、もうそれでもいいから、切なく震える空洞を玲司の熱で埋めて欲しいと、下着の中で充血して硬くなった自身の熱を番の腹に擦りつけた。
「れ……じ、さっ、も、ほしい……んっ、はや、くっ、ちょ……だいっ」
もどかしく腰を揺らめかせ、自身の陰茎を玲司の腹にグリグリ押し付けながら、淫らな願いを零す。瞳を潤ませ、頬を上気させる桔梗は、玲司が嫌っていたオメガの発情した姿。それなのに不思議なことに、桔梗ならばもっと蕩かせたいと思う。
結婚まで考えていた昔の恋人ですら、義務的な時間を過ごしたというのに。
桔梗が運命だからなのか。玲司自身ですら答えが見いだせなかった。
「困りましたね……、それなら、浴室で、愛し合いましょうか」
「うんっ、……はやくっ、れいじさ、……ねが、いっ」
このまま始めてもいいが、桔梗の可愛い嬌声をいくら部屋が離れているといっても、義兄弟に聞かせたくはない。特に兄の総一朗は玲司と同じアルファだ。例え影響がないと分かっていても気分はよくない。
その点浴室は構造上声が漏れることは殆どない。暖房も入っているし、多少篭もっていても問題ないだろう。
玲司は跨がせたままの桔梗の尻を支えると、耳元で「ひぁんっ」と甘い悲鳴が聞こえてくる。そっと首を巡らせ顔を窺うと、その目はトロリと蕩けていて、短く呼吸する唇は赤く、濡れている姿は番を誘うオメガらしい。
以前、桔梗の通常の性欲はかなり薄いと聞いていたが、その片鱗は今の彼にはない。
まるで玲司だけの娼夫のように、支える掌の上にある臀部は、しっとりと蜜に濡れた生地が貼り付き、くちゃ、と桔梗がみじろぐ度に音色を奏でた。
「桔梗君、避妊具が鞄の中なので、後からちゃんと避妊薬を飲んでくださいね」
「うんっ……だから、はやくぅ」
玲司を求めて発情する桔梗の耳に届いたかどうか。
もし忘れているようなら、自分が飲ませればいいか、と心のメモに留め、浴室への扉を乱暴に開いた。割と冷静なつもりでいたが、どうやら桔梗の熱に充てられたらしい。
まだ段取りを考えていられる分だけ、前よりはましだ。
桔梗を脱衣所の床に下ろすと、引き合うように自然とキスを繰り返しながら、互いのドレスシャツを脱がせあう。肌が露出すると、それぞれに所有の印をいくつも付け、どちらの肌にも赤い花弁が点々と散る。
これまで玲司は、過去の恋人たちには一度としてつけたことのない刻印を、どうして桔梗に対しては抵抗もなく、もっと埋め尽くしたいと考えるが、先程から桔梗は玲司の首に腕を回して、首筋に鼻を擦りつけてフェロモンを吸収しようとしていた為、これ以上放置するのも可哀想だ。
借り物のスーツだがまあいい。代わりの物を買って渡せば問題ないだろう。
一気に番のズボンと下着を下ろし、自分も踏みつけるように全てを取り払うと、桔梗を抱いたまま浴室へと飛び込んだ。
浴室内は全室の床にお湯を循環させている為に温かい。
かといって、全裸に耐えれる程の暖かさではない為、玲司は桔梗を抱き上げたままシャワーのコックを捻り、熱い湯をバスタブへと溜めていった。
その間も体を密着させ、舌を絡ませながら深いキスを続ける。
「ふ、はっ……、ぁう……んっ、れ、いじ、さっ……んんっ、す……き、んっ」
腰を淫らに動かして桔梗は玲司のそそり立つ逸物に擦るようにしてくる。鈴口からトプリトプリと溢れてくる粘ついた蜜がこねる音が、シャワーの水音の合間に聞こえる。
甘く好意を伝えてくる桔梗が健気で、玲司はもう今すぐにでも蕾に切っ先を押し付け、そのまま深く突き立てたいと思うが約一ヶ月ぶりの行為だ。彼の蕾は多少解けてはいるだろうが、無理をすると裂けてしまうだろう。
するりと絡めた舌をほどくと、後を追いかけてくる番の唇にキスを落として、玲司は備え付けの棚から薄いピンクの液体が入ったボトルを手に取る。
(これが凛の言ってた、お遊びで作ったローションですか)
パーティの最中、桔梗が秋槻の番と離席してすぐに、二人の元へと義弟の凛がやってきた。偶然ではあるが、自分と秋槻と凛はある意味運命共同体な部分もあったがゆえに、雑談と称して凛は秋槻へ実験のあれやこれやを根掘り葉掘りと訊いていた。
散々重箱の隅をつつくような質問攻めに辟易した玲司と秋槻は、番を迎えに行くという口実で、凛から離れようとしたのだが……
『研究のお礼に、これ』
『これは?』
装飾の施されたボトルの中にはピンク色の液体が入っていた。傾けると、もったりと倒れ、粘度が多少あるものだと気づく。
『これ、媚薬入りローション。清浄剤入りだから、注入しちゃえば、そのまますぐにできる代物』
『『は?』』
『というか、オメガの直腸部分は結腸辺りに子宮があるから、弱酸性なんだよね。女性の膣と一緒で。普通はそのままできちゃたりするんだけども。実は、ベータの男性同士のセックス用に開発したんだけど、とりあえず身近にいるアルファやオメガに実験台になってもらおうかな、って思って』
『いや、いやいやいや』
淡々と話す凛に対し、秋槻は慌てふためきながらも、ボトルだけはしっかりと握っている。玲司も実験台のひとつとして考えているようだが、後から個別で渡すのだろうか。
『大丈夫っ、精子入りの蜂蜜を番に長期的に摂取させたことができるんだから。ローションのお試しなんて軽い軽い』
『そ、そんな大きな声で言わないで!』
同じ『四神』だというのに、なぜこうも上下関係が成り立っているのだろうか。
玲司がそそのかしたけども、実際、秋槻に凛を紹介した所で繋がりは殆ど終わっていたのだ。しかし、歯に衣を着せない物言いをする凛と、当時追い詰められていた秋槻では会話にならなかったせいで、玲司が仲立ちとして調整役を引き受けていたのだった。
正直、当時と同じ光景が繰り広げられ、頭が痛い。
『凛、あんまり明け透けだと、今度から凛の分だけ食事を作るのを拒否しますけどいいですか?』
『それはやだ。玲司兄さんのご飯美味しいもん』
凛は自分の口を手で塞ぎ、自らシャットアウトする。華奢で薔子に似たクール系美人が、子どもぽい仕草をするせいか、周囲から『可憐だ……』と見惚れている連中がため息をついている。
素直なのはいいのだが、これでも桔梗よりも年上というのだから、薔子の教育は一体どうなっているのか問いただしたい所だ。
『まあ、商品化するから、モニターになれってことなら協力しますよ。ね、それでいいですよね』
『それは……まあ。結城とのことでは世話になってるので』
『彼もそう言ってますし、それでいいですよね、凛?』
なんだかんだであれから時間が経過していても、調整役を買って出る玲司に、凛は手で口を押さえたままコクコクと頷く。
『それで、僕の分もあるんですよね。どこにあるんです』
『……』
『手を塞いでる状態でウロウロしたって分からないので、喋ってもいいですよ。ただ、ここは人の目があるのを自覚して発言してくださいね』
コクコクと再び頷いた凛は、手を離すとぷはぁ、と息をついて、ボリュームを抑えた声で玲司に告げた。
『玲司兄さんのは、二人の寝室にある浴室に置いてきたよ。香織さんにスペア借りてこっそりとね』
薔子に似た華やかな笑顔を浮かべ放った言葉に、二度と凛には何も作らないと決意した玲司だった。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる