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春の宵闇
1
よく十二月は恩師が走るというが、四月は学生と職員が駆け回る時期だと思う。
「そろそろ紅音君のお迎えじゃない?」
白糸教授室で、部屋の主が慧斗にそう問いかける。言葉に手を止めて時計を見れば、確かにお迎えの時間だ。
「ありがとうございます、教授。それでは先に上がらせていただきます」
慧斗は使っていた文具をデスクにあるペン立てに戻し、付箋や細々としたものを引き出しに慌てて入れ、それからパソコンをシャットダウンする。
「あ、教授」
「んー?」
彼も仕事を終えたのか、何かファイルに視線を落としながら、愛用のマグカップでハーブティを飲んでいる。今日はミントティなのか、湯気に乗って爽やかな香りが慧斗の所まで届く。
「旦那様からのご伝言です。今日は勝手に帰らないように、とのことです」
「ブッ!」
鞄に飲みきったマグボトルを入れながら、昼過ぎに来たメールの文言を伝えた途端、何かを吹き出す音が聞こえて顔を上げる。普段クールな教授が口の周りを濡らし、マグカップを持ったまま慌てている様子が目に飛び込んできた。
「教授、まずはマグカップを置いてください」
「あ、う、うん」
「それから、こちらのタオルを使ってください」
「あ、ありがとう」
比較的ゆっくりめに話せば、白糸教授はタオルを受け取り、ファイルの雫を拭き取っていた。
「あと、お子さんは旦那様がお迎えに行くとのことですので、到着するまでは内鍵をかけて外に出ないでくださいと」
「あー、うん。本当アイツは過保護で困る」
「まあ、どこのアルファも番を持つとそうなるようですね」
揶揄まじりにそう言えば、普段はクール美人オメガと言われてる彼も、疲れたように深いため息をついて「本当に」と愚痴を漏らしていた。
「寒川さんも番にべったりだしね」
苦笑して白糸が言うのに同じく苦い笑みを浮かべて応えた。
慧斗は「それではお疲れ様です」と告げ白糸教授室を後にする。同じ敷地内に保育園があるとはいえ、早く迎えに行きたいと逸る気持ちが慧斗の足を早める。
途中すれ違う学生や職員に軽く挨拶をし、職員専用出口から外へと飛び出した。
建物内は薄暗く肌寒さが勝つが、外はやはり春めいていて、もうじき陽が暮れようとしていても頬を撫でる風は心地良い。
慧斗は保育園へと続く細道を軽い足取りで歩いていく。
あれから五年が経った。王紅龍と番になってから。
それから妊娠が発覚し、途方に暮れていた慧斗を助けてくれたのは、近所に住む寒川たちと、医師の凛、職場の上司である秋槻理事や教授から昇進した白糸教授。
彼らの力を借りながらも、やはりひとりで子育ては難しく、退院してからは三時間ごとの授乳で寝てるのか起きてるのか分からなくて。
夜泣きがひどかった時には、疲労困憊で精神が不安定になった慧斗も一緒に泣いてしまったり。
離乳食を食べてくれず、何度も吐いた時には凛の所に駆け込んで呆れられたり。
それでも我が子は大切な宝物。彼がいてくれるだけで一日を頑張ろうと思えるから不思議だ。
でもやはり時々紅龍の姿をテレビで見たりすると、胸が痛くなる。
会いたい。抱きしめて口づけされたい。そう願いが強くなる度、彼は別の人のものだと気づいてしまう。
それに今更逃げた自分を追いかけないだろう。むしろ番契約までして姿を消すなんてとんだオメガだと怒ってるかもしれない。
だから、自分を親切に助けてくれた人たちにも、紅音の父親のことは明かせなかった。
今は紅音も幼いから、父親の不在について疑問に思わないだろう。だが、大きくなった時、彼が父親に会いたいと言いだしたら?
その時自分はどうしたらいいのだろう。
「……?」
ふと、風に乗ってとてもいい匂いがした。少しだけ苦くて、甘い花の香り。桜の淡い香りよりも強い匂いがしたような。
くん、と鼻を動かすが、その記憶を掠めるような香りはすでになかった。きっと紅龍のことを考えてたから、記憶の香りが呼び覚まされただけだろう。
「おかーさん!」
「紅音!」
保育園の門に職員専用カードを読み込ませ園庭に入った途端、慧斗の可愛い天使が弾丸のように一目散に駆けてきた。
慧斗は腰を落とし、両手を広げて天使が飛び込むのを待つ。
学園の門には警備の人間が常駐し、駅からのバスですら登録した運転手でないと入ることができない。更には各施設に足を踏み入れるにも学園が発行したセキュリティーカードが必ずいる。
秋槻学園は、優秀な学生が多く、彼らを守るために必要なのだと、秋槻理事が話していたのを思い出す。
「おかえりなさい!」
「ただいま。紅音もおかえり」
「えへへー、ただいまっ」
我が子の全力疾走を体で受け止めると、黒縁の伊達眼鏡が勢いにずれる。
「今日もいっぱい元気に遊べた?」
「うんっ、楽しかったよ」
満面を浮かべる紅音をぎゅっと抱きしめていると、紅音君のお母さん、と声を掛けてくるのが聞こえ顔を向ける。そこには困ったように笑みを浮かべる男性が、紅音の鞄を持ってやってくるのを認めた。
「こら、先生にちゃんと挨拶したの?」
「したよー。先生が遅いんだもん」
「じゃあ、どうして先生が紅音の鞄を持ってるのかな?」
慧斗の指摘に「あ」と声を上げて目を背ける紅音に、思わずため息が溢れた。
「すみません、峯浦先生」
「いえ、紅音君、お母さんの姿を見かけた途端走り出したので、びっくりしました。でも、彼は門の外から出ないので、そこまで慌てなくて済みますが」
「それでも、やはり危ないことをしたわけなので」
すみません、と頭を下げると、自分のしたことが悪いことだと気づいたのか、紅音も「ごめしゃい」とペコリと頭を下げていた。
「紅音君、日毎に活発になりますよね。身体能力も高めですし、今日なんて教室で絵本を読んでた時も、年長さん用の英語の絵本をスラスラ読んでましたよ」
「ああ、多分、うちの上司が去年の誕生日にプレゼントしてくれたのが、外国の絵本だったので」
「たしか白糸教授でしたよね」
「いえ、そちらではなく、秋槻理事が……」
当時、それでちょっとしたトラブルになったのを思い出し、慧斗は思わず苦笑いをしたのだった。
慧斗は大学卒業後、大学事務員として出産ギリギリまで働くつもりだったが、周囲の説得により規定内に産休を取り紅音を出産した。
産休から戻ったら大学の職員として白糸の秘書をすることになっていた。
話を聞くと特に大学教授の秘書には資格は必要ないらしい。だが、育児も慣れてくると時間ができてしまう。
そこでネットで何か資格を取るのもいいかと考え、偶然目に入った秘書資格検定の通信講座を受けることにしたのだ。年に三回あるのも都合が良かった。
準一級からは面談があるとあったため、まずはと三級から始めたものの、復帰した時には二級まで取った。それを聞きつけた秋槻理事が検定や講座費用を出すから上を目指してみないかと言われ、紅音が四歳になった現在一級の資格を取得して、白糸の秘書だけでなく秋槻理事の代理秘書も担うようになった。
あれだけ心配していた給与面は随分潤い、おかげで紅音の教育にもお金をかけてあげることができた。
そこで峯浦との話に戻るのだ。
たまたま白糸と学食でお昼を取ってる時に秋槻理事が混ざった時のこと。
最初は白糸に子供の頃の習い事について尋ねてたら、それなら英語とかいいよと朗らかに言って、紅音の誕生日にやたらと高価な……多分輸入したと思われる外国の絵本をたっぷり贈られたのだ。
見ただけで高そうなソレを、慧斗は固辞したものの、甥っ子たちのついでだからと言って立ち去ってしまったのである。当然紅音は大喜び。
海外の絵本はカラフルで仕掛けが凝ってたりするのもあって、紅音のお気に入りだった。
簡潔に峯浦に伝えると、やたら渋い顔をしていたが…
「そろそろ紅音君のお迎えじゃない?」
白糸教授室で、部屋の主が慧斗にそう問いかける。言葉に手を止めて時計を見れば、確かにお迎えの時間だ。
「ありがとうございます、教授。それでは先に上がらせていただきます」
慧斗は使っていた文具をデスクにあるペン立てに戻し、付箋や細々としたものを引き出しに慌てて入れ、それからパソコンをシャットダウンする。
「あ、教授」
「んー?」
彼も仕事を終えたのか、何かファイルに視線を落としながら、愛用のマグカップでハーブティを飲んでいる。今日はミントティなのか、湯気に乗って爽やかな香りが慧斗の所まで届く。
「旦那様からのご伝言です。今日は勝手に帰らないように、とのことです」
「ブッ!」
鞄に飲みきったマグボトルを入れながら、昼過ぎに来たメールの文言を伝えた途端、何かを吹き出す音が聞こえて顔を上げる。普段クールな教授が口の周りを濡らし、マグカップを持ったまま慌てている様子が目に飛び込んできた。
「教授、まずはマグカップを置いてください」
「あ、う、うん」
「それから、こちらのタオルを使ってください」
「あ、ありがとう」
比較的ゆっくりめに話せば、白糸教授はタオルを受け取り、ファイルの雫を拭き取っていた。
「あと、お子さんは旦那様がお迎えに行くとのことですので、到着するまでは内鍵をかけて外に出ないでくださいと」
「あー、うん。本当アイツは過保護で困る」
「まあ、どこのアルファも番を持つとそうなるようですね」
揶揄まじりにそう言えば、普段はクール美人オメガと言われてる彼も、疲れたように深いため息をついて「本当に」と愚痴を漏らしていた。
「寒川さんも番にべったりだしね」
苦笑して白糸が言うのに同じく苦い笑みを浮かべて応えた。
慧斗は「それではお疲れ様です」と告げ白糸教授室を後にする。同じ敷地内に保育園があるとはいえ、早く迎えに行きたいと逸る気持ちが慧斗の足を早める。
途中すれ違う学生や職員に軽く挨拶をし、職員専用出口から外へと飛び出した。
建物内は薄暗く肌寒さが勝つが、外はやはり春めいていて、もうじき陽が暮れようとしていても頬を撫でる風は心地良い。
慧斗は保育園へと続く細道を軽い足取りで歩いていく。
あれから五年が経った。王紅龍と番になってから。
それから妊娠が発覚し、途方に暮れていた慧斗を助けてくれたのは、近所に住む寒川たちと、医師の凛、職場の上司である秋槻理事や教授から昇進した白糸教授。
彼らの力を借りながらも、やはりひとりで子育ては難しく、退院してからは三時間ごとの授乳で寝てるのか起きてるのか分からなくて。
夜泣きがひどかった時には、疲労困憊で精神が不安定になった慧斗も一緒に泣いてしまったり。
離乳食を食べてくれず、何度も吐いた時には凛の所に駆け込んで呆れられたり。
それでも我が子は大切な宝物。彼がいてくれるだけで一日を頑張ろうと思えるから不思議だ。
でもやはり時々紅龍の姿をテレビで見たりすると、胸が痛くなる。
会いたい。抱きしめて口づけされたい。そう願いが強くなる度、彼は別の人のものだと気づいてしまう。
それに今更逃げた自分を追いかけないだろう。むしろ番契約までして姿を消すなんてとんだオメガだと怒ってるかもしれない。
だから、自分を親切に助けてくれた人たちにも、紅音の父親のことは明かせなかった。
今は紅音も幼いから、父親の不在について疑問に思わないだろう。だが、大きくなった時、彼が父親に会いたいと言いだしたら?
その時自分はどうしたらいいのだろう。
「……?」
ふと、風に乗ってとてもいい匂いがした。少しだけ苦くて、甘い花の香り。桜の淡い香りよりも強い匂いがしたような。
くん、と鼻を動かすが、その記憶を掠めるような香りはすでになかった。きっと紅龍のことを考えてたから、記憶の香りが呼び覚まされただけだろう。
「おかーさん!」
「紅音!」
保育園の門に職員専用カードを読み込ませ園庭に入った途端、慧斗の可愛い天使が弾丸のように一目散に駆けてきた。
慧斗は腰を落とし、両手を広げて天使が飛び込むのを待つ。
学園の門には警備の人間が常駐し、駅からのバスですら登録した運転手でないと入ることができない。更には各施設に足を踏み入れるにも学園が発行したセキュリティーカードが必ずいる。
秋槻学園は、優秀な学生が多く、彼らを守るために必要なのだと、秋槻理事が話していたのを思い出す。
「おかえりなさい!」
「ただいま。紅音もおかえり」
「えへへー、ただいまっ」
我が子の全力疾走を体で受け止めると、黒縁の伊達眼鏡が勢いにずれる。
「今日もいっぱい元気に遊べた?」
「うんっ、楽しかったよ」
満面を浮かべる紅音をぎゅっと抱きしめていると、紅音君のお母さん、と声を掛けてくるのが聞こえ顔を向ける。そこには困ったように笑みを浮かべる男性が、紅音の鞄を持ってやってくるのを認めた。
「こら、先生にちゃんと挨拶したの?」
「したよー。先生が遅いんだもん」
「じゃあ、どうして先生が紅音の鞄を持ってるのかな?」
慧斗の指摘に「あ」と声を上げて目を背ける紅音に、思わずため息が溢れた。
「すみません、峯浦先生」
「いえ、紅音君、お母さんの姿を見かけた途端走り出したので、びっくりしました。でも、彼は門の外から出ないので、そこまで慌てなくて済みますが」
「それでも、やはり危ないことをしたわけなので」
すみません、と頭を下げると、自分のしたことが悪いことだと気づいたのか、紅音も「ごめしゃい」とペコリと頭を下げていた。
「紅音君、日毎に活発になりますよね。身体能力も高めですし、今日なんて教室で絵本を読んでた時も、年長さん用の英語の絵本をスラスラ読んでましたよ」
「ああ、多分、うちの上司が去年の誕生日にプレゼントしてくれたのが、外国の絵本だったので」
「たしか白糸教授でしたよね」
「いえ、そちらではなく、秋槻理事が……」
当時、それでちょっとしたトラブルになったのを思い出し、慧斗は思わず苦笑いをしたのだった。
慧斗は大学卒業後、大学事務員として出産ギリギリまで働くつもりだったが、周囲の説得により規定内に産休を取り紅音を出産した。
産休から戻ったら大学の職員として白糸の秘書をすることになっていた。
話を聞くと特に大学教授の秘書には資格は必要ないらしい。だが、育児も慣れてくると時間ができてしまう。
そこでネットで何か資格を取るのもいいかと考え、偶然目に入った秘書資格検定の通信講座を受けることにしたのだ。年に三回あるのも都合が良かった。
準一級からは面談があるとあったため、まずはと三級から始めたものの、復帰した時には二級まで取った。それを聞きつけた秋槻理事が検定や講座費用を出すから上を目指してみないかと言われ、紅音が四歳になった現在一級の資格を取得して、白糸の秘書だけでなく秋槻理事の代理秘書も担うようになった。
あれだけ心配していた給与面は随分潤い、おかげで紅音の教育にもお金をかけてあげることができた。
そこで峯浦との話に戻るのだ。
たまたま白糸と学食でお昼を取ってる時に秋槻理事が混ざった時のこと。
最初は白糸に子供の頃の習い事について尋ねてたら、それなら英語とかいいよと朗らかに言って、紅音の誕生日にやたらと高価な……多分輸入したと思われる外国の絵本をたっぷり贈られたのだ。
見ただけで高そうなソレを、慧斗は固辞したものの、甥っ子たちのついでだからと言って立ち去ってしまったのである。当然紅音は大喜び。
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