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蒼天の日華
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全体的に白とブラウンで纏められたパーティー会場の大広間は、立食形式なのかダマスク柄のカーペットの中心にバーテーブルが置かれ、壁の端にはビュッフェが並んでいる。その間をホテルスタッフが忙しなく、かつ優雅に泳いでいて、慧斗はグラスを持ったまま非日常空間に呆けていた。
まだ先ほど観た映画の余韻が。慧斗の脳裏から抜けていなかった。
(凄かった……でも恥ずかしかった)
紅龍が初監督した映画【運命の糸の先は番の君】が、紅龍と慧斗の出会いから再会し結ばれるまでの再現ストーリーだというのを知ったのは、完成披露会直前の話だった。
隣の大広間でふかふかのソファーで寛ぎながら、シャンパンやピンチョスが振舞われた、豪華でリラックスできる環境で聞かされた。その事実に隣に座る紅龍を睨んだものの、紅龍は目元を真っ赤にして可愛い、と笑うだけだった。慧斗は何だか勝てる気がしなくて、口当たりの良いシャンパンを何杯も喉に流し込んでいた。
紅音は、今日一日面倒を見るからと、薔子や紅龍の両親が甘やかしまくっている。
映画も後ろの方に設置されているソファで、彼らや薔子の兄である朱南総理含め、生涯接点なんてないだろう大物人物たちと一緒に観覧していたそうだ。
そこでも紅音は大人気だったようで、いくつか見合い話まできているというから驚きだ。上流階級の人たちの考えは分からない。
事前にストーリーの概要を知っている人が多く、映画が終わり室内が明るくなった途端、紅龍の隣に座る慧斗に生暖かい視線が集中したのは言うまでもない。
居た堪れない気持ちのまま、今度はパーティー会場となる大広間に入ったまではいいが、見知らぬ人々から絶え間なく声を掛けられることとなった。
「あなたが王氏の番ですか。いやぁ、美しい方ですね。しかも、先日寒川家の養子になられたとか。是非とも我が家ともお付き合いいただければ」
「いえいえ、我が家ともお付き合いいただけますか。うちの息子の長男が、ご子息と同じ歳でして。現在、秋槻学園の幼稚舎に通っております。これを機会に長く交流いただけると嬉しいですね」
こういったおべっかが次から次へと、息をつく暇もなく、笑う顔も引きつってしまう。
それだけなら笑って躱せばいいが、紅龍狙いの女性やオメガからの鋭い視線が痛い。あの視線がリアルの刃なら、慧斗の全身に隙間なく突き立てられているだろう。
まだ宴も始まったばかりなのに、先が思いやられる。まだこれから壇上で紅龍から紅音と共に紹介されるというのに。
ため息を飲み込み、紅音や義母たちの姿を目で探しているが、人が多すぎてどこにも見当たらない。
途方に暮れていると「慧斗」と救いの声が慧斗を呼び、慧斗は喜びを顔に浮かべ振り返った。
「紅龍」
「探したぞ。うちの親も薔子さんや玲司たちも慧斗を探してる。もちろん、紅音も」
「ごめん、こっちでも探していたんだけど、人が多くて……」
慧斗の肩を抱き、話に耳を傾ける紅龍は、慧斗にへばりつく人たちを冷ややかに見下ろす。
今回は映画のプロモーションもあり、マスコミだけでなく紅龍とほとんど付き合いはないものの、わずかな繋がりのある者たちも参加しているという。紅龍が小さく舌打ちをすると、先程まで作り笑いで慧斗に擦り寄っていた人々が、顔を青くしているのが見えた。
「申し訳ないが、彼を連れて行ってもいいだろうか」
「は、はいっ」
「引き止めて申し訳ありませんっ」
紅龍はペコペコと頭を下げる者たちを一瞥し、慧斗を伴いその場を去った。
「助かったよ。あの人たち離してくれなくて」
「こっちこそ迎えに行くのが遅れてすまなかった。俺の方でも鬱陶しい位囲まれてな」
「それは仕方ないんじゃない? 今日の主役みたいなものだし」
「俺は監督で、主役は相馬だ。普通監督なんてひっそりした存在だろうが」
ブツブツ文句を言っている紅龍だが、慧斗は「はて?」と首を傾ける。こんな派手な映画監督は普通ならばいないのかもしれないが、佇まいから別格のオーラを出しているのだから、諦めるべきだと思う。
「まあ、それなら変装するべきだったかもな。可能であれば、の話だけど」
「変装か。それもいいな」
いいのか、と内心でツッコミを入れながら、時折紅龍に挨拶に来る人を捌きつつ足を進める。
「……」
毅然と顔を上げ慧斗の横を闊歩する紅龍は、黒のタキシードを纏い、秀でた額を見せるように髪をオールバックに撫で付けている。
元々整った顔をした人だが、こうしてタキシード姿を見ていると、紅龍のファンが世界中にいるというのも頷ける。
(こんなに格好良い人が俺の番……)
昔出会った時も、息を呑むほどの美形だった。それが年月を経て、様々な苦労を重ねて、今の眩いほどの美丈夫になった。
そんな人の横に立つのはまだ勇気がいるけども、だけど誰にもこの場所を譲りたくはない。そう感じるまで時間がかかってしまったが、この思いは慧斗の決意として、掌を固く握り締めた。
皆は会場の一角にある仕切られた場所にいるらしい。小さな子どももいることだし、良い選択だろう。ただし、その場にいるのが弐本のVIP中のVIPというのが、慧斗が頭を抱える案件である。
「ところで、まだそこに朱南総理もいらっしゃるのか?」
居たら確実に胃が痛くなるな、と恐るおそる尋ねたら、紅龍からは「急な仕事が入らなければいるだろうな」と返ってきて胃痛が酷くなるようだ。思わず胃のあたりを服の上から撫でていたら「俺がいるだろう?」と、柔らかく微笑んで、慧斗の髪に指を絡ませた。
「心配なんて無用だ。今度こそお前を守る。いや、次こそは慧斗を守らせて欲しい。もうあんな思いは二度とごめんだ」
「紅龍……」
あの時は紅音を守ることで頭がいっぱいだった。ただただ紅音の安全ばかりに気を取られてて、紅龍の気持ちは二の次となっていた。
自分が峯浦や伊月の意向を飲めば、紅龍にも紅音にも危害はないと慢心していた。だがそれが紅龍の心に深く傷をつけてしまった。
体の傷はいずれ癒える。だけど心の傷は一朝一夕で治るものではない。
そこまでのトラウマを自分が紅龍に植え付けてしまったのだと、慧斗は切なくなった。
「ごめ……いや、頼りにしてるよ、紅龍」
慧斗は手を伸ばして紅龍が頭を撫でていた手を握る。ピクリと震える大きな手を、慧斗は力を込めて握り締め、首を伸ばして紅龍に微笑みかけた。
「先にビュッフェの方をまわって何か食べて行くか?」
「いい匂いがして気になってたんだよ。どんなのがあるの?」
「色んな人が楽しめるように和洋中で準備したな。慧斗は何にする? おすすめはローストビーフだな。赤身なのに柔らかくて、ソースも旨い」
「じゃあ、それは絶対食べる。他は……適時気に入った物にしようかな」
「胃袋がびっくりしない程度にしておけよ」
そんなふたりを、さまざまな感情を孕んだ視線が送られる。羨望や嫉妬、それから激しい憎しみ。
慧斗と紅龍は賑やかな空気に意識を奪われ、注意力を散慢にしながら壁際にあるビュッフェコーナーへと足を向けた。
紅龍の言うように和洋中さまざまな料理が所狭しと並んでいる。ブースによってはシェフや板前がその場で調理師、ゲストに提供しているようだ。
「まずは紅龍おすすめのローストビーフだな。あ、こっちみたいだ」
「慧斗、ひとりで先に進むな。人にぶつかるぞ」
「大丈夫だって。あ、丁度肉を切り分けてるみたい。先に行って並んでる」
浮き足立つまま、握っていた紅龍の手を離し、並び始めている列に向かって早足で脚を動かしていると、スっと影がよぎり衝撃が慧斗を襲う。
「あっ!」
弾き返されたたらを踏んだ慧斗の前で、女性ホテルスタッフの制服を着た人が膝をついて俯いている。トレイに乗った使用済グラスを運んでいたのか、カーペットのおかげで割れてはいないものの、いくつかヒビの入った物が転がっている。
「大丈夫ですか!?」
慌てて慧斗もしゃがみグラスを拾ってトレイに置いていく。周囲の人は汚れるのが嫌なのか、遠巻きに慧斗とホテルスタッフを見ているだけだ。背後から「慧斗!」と声が聞こえ、大丈夫だと応えるように振り返って手を挙げようとした途端。
チクリ。
カーペットの上に置いてた手に小さな痛みが走り、慧斗は思わず振り返る。そこには、見知った顔が凶悪な笑みを浮かべて見ていた。
「ね……さん」
「ここにいる人の大半がアルファなんでしょ。あんたのフェロモンで皆狂って犯されればいいわ」
姉の赤い唇がニタリと笑みに歪んでいる。
どうしてここに、という疑問が浮かぶ前に、心臓をドクリと握られたように高鳴り、体から紅龍を求めるようにフェロモンが噴出している。頭はガンガン痛み、喉がカラカラに渇き、目の前がグルグル渦を巻いている。
お腹の奥がキュウと疼き、後孔からトロリと蜜が溢れて下着を濡らす。
一年前に紅龍と再会した時に訪れたのと同じ発情期。いや、あの時よりも我を失いそうな程の衝動と情欲に頭が狂いそうだ。
「あ……ほんろん……」
熱い、苦しい、助けて。
慧斗は人垣を掻き分けている紅龍に手を伸ばす。きっと彼も気づいている。慧斗が発情状態になっていると。
でも大丈夫。この匂いは紅龍にしか届かない。姉は、慧斗が番契約をせずに子どもを生んだと、勘違いしているみたいだ。
だが実際は慧斗は紅龍だけの番で、いくら即効性の促進剤を不意打ちで打たれても、発情するのは慧斗で反応するのは紅龍だけ。
「どけ! 頼むからどいてくれ! 慧斗……慧斗!!」
お願い、紅龍。今度こそ、本当の番になろう、紅龍……
まだ先ほど観た映画の余韻が。慧斗の脳裏から抜けていなかった。
(凄かった……でも恥ずかしかった)
紅龍が初監督した映画【運命の糸の先は番の君】が、紅龍と慧斗の出会いから再会し結ばれるまでの再現ストーリーだというのを知ったのは、完成披露会直前の話だった。
隣の大広間でふかふかのソファーで寛ぎながら、シャンパンやピンチョスが振舞われた、豪華でリラックスできる環境で聞かされた。その事実に隣に座る紅龍を睨んだものの、紅龍は目元を真っ赤にして可愛い、と笑うだけだった。慧斗は何だか勝てる気がしなくて、口当たりの良いシャンパンを何杯も喉に流し込んでいた。
紅音は、今日一日面倒を見るからと、薔子や紅龍の両親が甘やかしまくっている。
映画も後ろの方に設置されているソファで、彼らや薔子の兄である朱南総理含め、生涯接点なんてないだろう大物人物たちと一緒に観覧していたそうだ。
そこでも紅音は大人気だったようで、いくつか見合い話まできているというから驚きだ。上流階級の人たちの考えは分からない。
事前にストーリーの概要を知っている人が多く、映画が終わり室内が明るくなった途端、紅龍の隣に座る慧斗に生暖かい視線が集中したのは言うまでもない。
居た堪れない気持ちのまま、今度はパーティー会場となる大広間に入ったまではいいが、見知らぬ人々から絶え間なく声を掛けられることとなった。
「あなたが王氏の番ですか。いやぁ、美しい方ですね。しかも、先日寒川家の養子になられたとか。是非とも我が家ともお付き合いいただければ」
「いえいえ、我が家ともお付き合いいただけますか。うちの息子の長男が、ご子息と同じ歳でして。現在、秋槻学園の幼稚舎に通っております。これを機会に長く交流いただけると嬉しいですね」
こういったおべっかが次から次へと、息をつく暇もなく、笑う顔も引きつってしまう。
それだけなら笑って躱せばいいが、紅龍狙いの女性やオメガからの鋭い視線が痛い。あの視線がリアルの刃なら、慧斗の全身に隙間なく突き立てられているだろう。
まだ宴も始まったばかりなのに、先が思いやられる。まだこれから壇上で紅龍から紅音と共に紹介されるというのに。
ため息を飲み込み、紅音や義母たちの姿を目で探しているが、人が多すぎてどこにも見当たらない。
途方に暮れていると「慧斗」と救いの声が慧斗を呼び、慧斗は喜びを顔に浮かべ振り返った。
「紅龍」
「探したぞ。うちの親も薔子さんや玲司たちも慧斗を探してる。もちろん、紅音も」
「ごめん、こっちでも探していたんだけど、人が多くて……」
慧斗の肩を抱き、話に耳を傾ける紅龍は、慧斗にへばりつく人たちを冷ややかに見下ろす。
今回は映画のプロモーションもあり、マスコミだけでなく紅龍とほとんど付き合いはないものの、わずかな繋がりのある者たちも参加しているという。紅龍が小さく舌打ちをすると、先程まで作り笑いで慧斗に擦り寄っていた人々が、顔を青くしているのが見えた。
「申し訳ないが、彼を連れて行ってもいいだろうか」
「は、はいっ」
「引き止めて申し訳ありませんっ」
紅龍はペコペコと頭を下げる者たちを一瞥し、慧斗を伴いその場を去った。
「助かったよ。あの人たち離してくれなくて」
「こっちこそ迎えに行くのが遅れてすまなかった。俺の方でも鬱陶しい位囲まれてな」
「それは仕方ないんじゃない? 今日の主役みたいなものだし」
「俺は監督で、主役は相馬だ。普通監督なんてひっそりした存在だろうが」
ブツブツ文句を言っている紅龍だが、慧斗は「はて?」と首を傾ける。こんな派手な映画監督は普通ならばいないのかもしれないが、佇まいから別格のオーラを出しているのだから、諦めるべきだと思う。
「まあ、それなら変装するべきだったかもな。可能であれば、の話だけど」
「変装か。それもいいな」
いいのか、と内心でツッコミを入れながら、時折紅龍に挨拶に来る人を捌きつつ足を進める。
「……」
毅然と顔を上げ慧斗の横を闊歩する紅龍は、黒のタキシードを纏い、秀でた額を見せるように髪をオールバックに撫で付けている。
元々整った顔をした人だが、こうしてタキシード姿を見ていると、紅龍のファンが世界中にいるというのも頷ける。
(こんなに格好良い人が俺の番……)
昔出会った時も、息を呑むほどの美形だった。それが年月を経て、様々な苦労を重ねて、今の眩いほどの美丈夫になった。
そんな人の横に立つのはまだ勇気がいるけども、だけど誰にもこの場所を譲りたくはない。そう感じるまで時間がかかってしまったが、この思いは慧斗の決意として、掌を固く握り締めた。
皆は会場の一角にある仕切られた場所にいるらしい。小さな子どももいることだし、良い選択だろう。ただし、その場にいるのが弐本のVIP中のVIPというのが、慧斗が頭を抱える案件である。
「ところで、まだそこに朱南総理もいらっしゃるのか?」
居たら確実に胃が痛くなるな、と恐るおそる尋ねたら、紅龍からは「急な仕事が入らなければいるだろうな」と返ってきて胃痛が酷くなるようだ。思わず胃のあたりを服の上から撫でていたら「俺がいるだろう?」と、柔らかく微笑んで、慧斗の髪に指を絡ませた。
「心配なんて無用だ。今度こそお前を守る。いや、次こそは慧斗を守らせて欲しい。もうあんな思いは二度とごめんだ」
「紅龍……」
あの時は紅音を守ることで頭がいっぱいだった。ただただ紅音の安全ばかりに気を取られてて、紅龍の気持ちは二の次となっていた。
自分が峯浦や伊月の意向を飲めば、紅龍にも紅音にも危害はないと慢心していた。だがそれが紅龍の心に深く傷をつけてしまった。
体の傷はいずれ癒える。だけど心の傷は一朝一夕で治るものではない。
そこまでのトラウマを自分が紅龍に植え付けてしまったのだと、慧斗は切なくなった。
「ごめ……いや、頼りにしてるよ、紅龍」
慧斗は手を伸ばして紅龍が頭を撫でていた手を握る。ピクリと震える大きな手を、慧斗は力を込めて握り締め、首を伸ばして紅龍に微笑みかけた。
「先にビュッフェの方をまわって何か食べて行くか?」
「いい匂いがして気になってたんだよ。どんなのがあるの?」
「色んな人が楽しめるように和洋中で準備したな。慧斗は何にする? おすすめはローストビーフだな。赤身なのに柔らかくて、ソースも旨い」
「じゃあ、それは絶対食べる。他は……適時気に入った物にしようかな」
「胃袋がびっくりしない程度にしておけよ」
そんなふたりを、さまざまな感情を孕んだ視線が送られる。羨望や嫉妬、それから激しい憎しみ。
慧斗と紅龍は賑やかな空気に意識を奪われ、注意力を散慢にしながら壁際にあるビュッフェコーナーへと足を向けた。
紅龍の言うように和洋中さまざまな料理が所狭しと並んでいる。ブースによってはシェフや板前がその場で調理師、ゲストに提供しているようだ。
「まずは紅龍おすすめのローストビーフだな。あ、こっちみたいだ」
「慧斗、ひとりで先に進むな。人にぶつかるぞ」
「大丈夫だって。あ、丁度肉を切り分けてるみたい。先に行って並んでる」
浮き足立つまま、握っていた紅龍の手を離し、並び始めている列に向かって早足で脚を動かしていると、スっと影がよぎり衝撃が慧斗を襲う。
「あっ!」
弾き返されたたらを踏んだ慧斗の前で、女性ホテルスタッフの制服を着た人が膝をついて俯いている。トレイに乗った使用済グラスを運んでいたのか、カーペットのおかげで割れてはいないものの、いくつかヒビの入った物が転がっている。
「大丈夫ですか!?」
慌てて慧斗もしゃがみグラスを拾ってトレイに置いていく。周囲の人は汚れるのが嫌なのか、遠巻きに慧斗とホテルスタッフを見ているだけだ。背後から「慧斗!」と声が聞こえ、大丈夫だと応えるように振り返って手を挙げようとした途端。
チクリ。
カーペットの上に置いてた手に小さな痛みが走り、慧斗は思わず振り返る。そこには、見知った顔が凶悪な笑みを浮かべて見ていた。
「ね……さん」
「ここにいる人の大半がアルファなんでしょ。あんたのフェロモンで皆狂って犯されればいいわ」
姉の赤い唇がニタリと笑みに歪んでいる。
どうしてここに、という疑問が浮かぶ前に、心臓をドクリと握られたように高鳴り、体から紅龍を求めるようにフェロモンが噴出している。頭はガンガン痛み、喉がカラカラに渇き、目の前がグルグル渦を巻いている。
お腹の奥がキュウと疼き、後孔からトロリと蜜が溢れて下着を濡らす。
一年前に紅龍と再会した時に訪れたのと同じ発情期。いや、あの時よりも我を失いそうな程の衝動と情欲に頭が狂いそうだ。
「あ……ほんろん……」
熱い、苦しい、助けて。
慧斗は人垣を掻き分けている紅龍に手を伸ばす。きっと彼も気づいている。慧斗が発情状態になっていると。
でも大丈夫。この匂いは紅龍にしか届かない。姉は、慧斗が番契約をせずに子どもを生んだと、勘違いしているみたいだ。
だが実際は慧斗は紅龍だけの番で、いくら即効性の促進剤を不意打ちで打たれても、発情するのは慧斗で反応するのは紅龍だけ。
「どけ! 頼むからどいてくれ! 慧斗……慧斗!!」
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