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氷の公爵は最愛の妻にお仕置きをする
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屋敷に戻る道中、沈黙はまるで重苦しい霧のように、私とラファエルの間に横たわっていた。ガタゴトと揺れる馬車の中、ラファエルは一言も発しない。ただ、私の右手を骨が軋むほどの力で握りしめていた。
彼の指先から伝わるのは、痺れるような魔力の脈動。窓の外、永久氷晶を使って作られた街灯の光が流れるたび、彼の彫刻のような横顔が青白く浮かび上がる。その瞳は怒りというよりも深く暗い飢餓に輝いていた。
(……怒ってる。怖いほどに。だけど、それ以上に震えている)
天正魔法を展開せずとも分かる。今の彼の心を占めているのは私を失いかけた恐怖と、自分以外の男へ情を見せた私への猛烈で狂おしいほどの執着。契約結婚が、ラファエルの建前だったのはもう理解している。こんなに執着を見せているんだもの。今更って感じだ。
私はこれから起こる『罰』を粛々と受け入れなければならない。覚悟に、唇を小さく噛みしめていた。
屋敷に着き、いろんな人に心配の声をかけられたが、ラファエルは無言で私の手を引き寝室へと入った。その瞬間、ラファエルの感情が決壊したのだ。
ドンッ、という音とともに、私は寝室の扉とラファエルに挟まれていた。長い腕に囲まれ、逃げることはできない。
ラファエルは無言のまま、私の両手首を掴むと、頭の上で固定した。驚きで抵抗する間もなく、彼の逞しい体が私の体を押しつぶすように密着してくる。
「ディナ。君は自分が何をしたのか分かっているのか」
問いかける声は、様々な感情を抑えているように、低く喉の奥を震わせるような響きを帯びていた。それは私の存在をかつてないほど所有したい男の欲を孕んでいた。
「あんな掃きだめに、君一人を行かせた自分を、今すぐ殺したい気分だ。だが、それ以上に君を……俺から離れた君を……許せそうにない」
「ごめんなさい……エル。私はただ、エドガーにお別れを言うつもりで……」
「黙れ。二度とあの男の名を呼ぶことは許さない。今回の罪は重いと知れ……ディナ」
ラファエルは私の顎を強く持ち上げ、言い訳すら許さないと鋭い眼差しで射抜く。その氷色の瞳の中には、私を氷漬けにして粉々に砕き、自身の内に取り込んでしまいたいという執着愛で揺れていた。
それは私とラファエルが幼い頃、何度か私を見つめているラファエルの瞳と同じ。
(ああ……、あなたはあの頃から、私の事をこんなにも愛してくれていたのね。エル……あなたは氷の公爵なんかじゃないわ。ただただ、私が再びあなたの前から姿を消すことに怯えているだけ)
今ほどラファエルを抱きしめ、一人じゃないと言いたいのに、それができずにもどかしさばかりが募った。
ラファエルは私の腰を引き寄せ、背中の紐を乱暴に、それでも私を傷つけないように解く。衣擦れの音がし、着ていたドレスが床に滑り落ちる。冬の夜の冷気が肌を撫でる。だけど、すぐにそれ以上の熱が私を包み込んだ。
「あの男が触れた場所を、全て俺の熱で塗り替えてやる。ディナ、今日は泣いても許さないからな」
彼は私の首筋に顔を埋め、ツキリとした痛みと共に私に宣言する。どこか甘さのある声音に、私のお腹の奥が疼く。
剥き出しになった鎖骨のくぼみ、耳の後ろ、それからエドガーが掴もうとした腕。ラファエルはまるで汚れを浄化するかのように、何度も何度も吸っては、赤い印を刻んでいった。
「あの男はどこまで君に触れた?」
「ぁ……、っ、エル……もっと、やさしく、して」
「優しく? 君が俺に与えたのは、心臓を凍らせるほどの絶望だ。今夜は君の過去全てを焼き尽くすまで、開放などしないと知れ」
彼の言葉は鋭い刃物のように私を責める。だけど、そのあとに続く口づけは、驚くほど切実に、泣き出したくなるほど甘い。ラファエルは、私が想像していたよりもずっと、私の心が自分から離れていくことを恐れていたのだ。私の前にいるのは、冷徹な氷の公爵なんかじゃない。ただの、ひとつの愛に飢えた一人の男だった。
「ここも、この指先も、十年前から俺のものだ。もう二度と忘れないように、その体に刻み付ける」
指を絡め、胸元に花弁を散らしながら、ラファエルが呟く。
(分かってるわ、エル。おじい様の庭で約束した時から、私はあなたのもの。あなたの魔力の半分ごと、私が壊れるまで愛して……)
私はうわ言のように、ラファエルに懇願していた。
◇ ◇ ◇
天蓋付きのベッドに倒された途端、視界がグルリと揺れた。
ラファエルは乱暴に礼装を脱ぎ、床に投げ捨てる。露わになった上半身が、私の肌に重なった。氷の魔力を持つはずの彼の体は、硬く熱い。
コルセットまで脱がされた私の裸身が、緊張と期待に震える。乳房のいただきは、寒さからか固く尖っている。ラファエルの手が、包むように乳房を持ち上げ、やわやわと揉み出した。
曖昧に揺らされ、空気に触れたしこりが刺激される。もどかしい愛撫に私は「もっと」と哀願した。
「……ダメだ。狂うほどに俺を求めるまで……もう二度と離れる気が起きないまで、ディナに甘い罰を与え続ける」
「そ、んな……っ、あ、……んっ」
意地悪なラファエルの指先が胸の先端を弾くと、私の腰がビクビクとわななく。お腹の奥で愛液がトロリと溢れ、蜜道をしとどに濡らす。ラファエルによって開かれた体は、彼がもたらす行為に反応を返していた。
(ど、どうしよう。あの場所が酷く濡れて……しかも、なんだか物足りないのが強くなってくるわ)
もじもじと膝を擦り合わせていると、足の付け根からクチュッと水音が聞こえ、恥ずかしさが湧き上げてくる。その小さな音を耳にしたラファエルは、蕾に口を含みかけた動きを止め、ジッと私を見てくる。うぅ、恥ずかしい。
「ディナ……今の音は、なに?」
「お願い……聞かないで……」
「ねえ、教えて。ディナ」
ラファエルは意地悪く問いかけ、蕾から外れた肌を吸う。チュッと音がし、かすかな痛みを感じた。
「ディナ。これはお仕置きなんだ。だから、答えないと」
「エル……あの場所が辛いの……っ、お願い……」
残忍な笑みを浮かべ、私を追いつめてくる。その間も感じる場所を避け、幾度も肌に赤い花弁を散らしていく。疼きはどんどん強くなっていくし、頭の中も靄がかかったようになり、私は自分の欲望を自然と口にしていた。
胸を支えた手と反対の手が私の肌を這うように下におりていく。それだけで快感が増していき、私の口から小さな喘ぎが何度も漏れる。ラファエルはそれに構わず恥丘をなぞり、茂みのないあわいに落ちていくと、閉じた足の間から濡れた音が生まれた。
「ああ……凄く濡れてるね。ディナ、どうしてほしい?」
「んっ、ぁ、の、もっと奥を……触って」
「触るだけでいいのか?」
私の蜜液をまとわせたラファエルの中指が足の付け根をゆっくりと上下させている。
「いじ、わる、しないで……っ、エルが欲しいの……っ」
切実に訴えると、ラファエルの指は欲しかった場所ではなく、少し上にある秘核を下から撫で上げた。ぬめりをまとったラファエルの指は、ペンだこの固さのせいで目の前に星が飛ぶほどの刺激となる。
「っ、あっ! ぁ……あっ、んんっ!」
腰が溶けてしまったのかと思うほどの、大きな絶頂の波が私を襲う。ラファエルが私の中で果てた時の快感とは違う波濤に、私は戸惑いながら虚脱に呑まれそうになった。
体に力が入らない。濡れた目でラファエルを見つめると、彼は体を起こしてスラックスの前立てを無言で開く。彼の男身はとっくに臨戦態勢で、切っ先が濡れている。初めて目にする男の象徴があまりにも凶器じみて、私の心臓はドクドクと暴れた。
「嘘……そんなに大きかったなんて……」
声を震わせ言葉を漏らす。
ラファエルは「そうか?」と首を傾げ、私の足を左右に開くと、その中心に陣取る。秘密の場所が晒され、恥ずかしくて隠したかったけど、力が抜けて指一本すら動かせない。
「毎夜、君を満たしていたから、心配しなくてもいい。ディナも、いつも美味しそうに食べていただろう?」
彼はそう言って、私の足を持ち上げると、自身の怒張の先を濡れた蜜口へ押し込んだ。
「あ、あぁ……っ、エルっ」
過敏になっているからか、いつもよりラファエルの男身の存在が強く分かる。私の蜜壺をゆっくりと掻き分ける存在は、身の内から燃やされてしまいそうに熱い。切っ先が最奥に到達してもラファエルはさらに腰を密着させ、私のお腹の奥は痛いような気持ちいいような変な感覚に狂いそうになった。
「ディナの中は、とても温かくて……気持ちがいいな。でも、今夜はディナに、俺の愛を深く知ってもらうための、お仕置きだ」
グッ、と腰を押し付けられ、彼の先端が深く入っていく。またも目の前にチカチカと光が瞬き、喉から嬌声が溢れ出た。氷の魔力を持つはずの彼の体は、溶岩のように熱く、猛々しい。溺れそうになる感覚に、私は縋るようにラファエルの背中に手を回していた。
始めるぞ、との声を共に、私の体はラファエルという嵐に放り出された。
目の前は瞬く星の中に苦し気な顔のラファエルがいて、耳は肌を打つ音と繋がった場所からはしたない水音が私を狂わす。周囲は私とラファエルの魔力が反応し、黄金の氷の粒が舞っていた。
「ディナ……、君の天秤は、今、どちらに傾いている? 君の快楽か……俺の執着か」
「もう……っ、わから、ないっ。苦しくて……分からないの。……ああっ」
重い一突きごとに、頭の中は黄金に染まり、視界が白く弾ける。
ラファエルの指が私の指に絡まり、薬指で輝くオパールを、まるで自身の欠片であるかのように何度も唇でなぞる。
「苦しいなら、全て俺に預ければいい。あの夜、月見草の庭で約束したように……君の魔力も、心も、体も、全て俺に注ぎ込め」
私たちの魔力が激しく共鳴し、寝室の窓ガラスには氷の花が咲き乱れていた。黄金の光に反射して、とても幻想的だ。
「エル……、ああっ! ……エルっ、私はあなたの……!」
「分かっている。君は俺のものだ。……死ぬまで。いや……死んでからも、魂が続くまで。だから、二度と俺の傍を離れるな。……ディナ、俺の光で希望……っ!」
ラファエルの絶頂の瞬間、彼の美しい青の双瞳から涙がこぼれ、私の頬に落ちた。それは普段言葉の足りない彼が、体だけで伝える失うことの恐怖と狂おしいほどの愛。この不器用なまでの情熱こそが、私の心を揺らす天秤の錘なのだと、私は溶けていく意識の中で確信していた。
◇ ◇ ◇
私たちの嵐の夜が明け、窓の外に薄い朝霧が立ち込める頃。ラファエルは疲れ果てて眠りに落ちそうになる私を抱き寄せ、乱れた私の髪を愛おしそうに撫で続けていた。
「まだ寝かせないと言っただろう……?」
冗談とも本気とも取れない低い声が、私の耳朶を優しくくすぐる。彼は頭から首筋、それから体のあちこちに散らばる花弁に指を這わせた。
「急な話になるが、数日後に王宮で夜会がある」
「夜会……?」
ぼんやりと話を聞いていると、どうやらヘルフリート殿下の見合いを称した催しだという。本人はまだ自由を楽しみたいようだが、王命とあって渋々引き受けたと、ラファエルが話してくれた。
そこで私は朧げな頭で考えた。果たして、この体中に散らばる『ラファエルの所有印』が消えるのだろうか、と。
「ドレスは俺が用意する。君の肌が美しく映える、俺の瞳と同じ色のドレスを」
夜会は基本的に肌の露出が多めだ。つまり、このまま肌に散る痕が消えなければ……
すう、と血の気が引く音が耳の中で聞こえる。
(お、おしろいで消えるかしら?)
新たな問題が発生し、落ちそうになっていた眠気が瞬時に消えた。だが、次に聞こえた冷たいラファエルの声に、私はそれどころではないと緊張に身を強ばらせた。
「夜会でヒルトマンとランベルト、その全ての問題を君と共に清算する」
私は冷たい響きに、ラファエルの鍛えられた胸に顔を寄せた。雪解けの森のような清廉な香りを吸い込み、目を閉じた。
エドガーは捕縛され、ランベルト伯爵家からも見放されたヒルトマン子爵家は、完全に退路を絶たれた。そして、リリアのお腹に宿った新しい命の未来。
没落を目前にした両親や妹が、どのような醜悪なあがきを見せるのか。私には分からない。
(……もう、私はヒルトマンの娘ではなく、アインハルトの妻。いい加減、彼らの縁を切らなくては……)
十年前、私はラファエルの魔力を預かった。
今、ラファエルは私の運命を預かっている。
私たちは、お互いの重荷を半分ずつ預かりながら、苦境を乗り越え、輝かしい未来へと向かっていく。
「……ごめんなさい、エル」
私の小さな呟きに、ラファエルは答える代わりに、再び私を深い抱擁の中へと閉じ込めたのだった。
--------------------------------------------------------------------
お読みいただき、ありがとうございます。
ほぼ折り返し地点にきたのと、三月にあるイベントの原稿作業のため、ストックが終わってしまいました。
書き溜めしたく、数日のお休みをいただきたく存じます。
楽しみにしていただいてる皆様には恐縮ではございますが、なにとぞよろしくお願いいたします。
庚あき
彼の指先から伝わるのは、痺れるような魔力の脈動。窓の外、永久氷晶を使って作られた街灯の光が流れるたび、彼の彫刻のような横顔が青白く浮かび上がる。その瞳は怒りというよりも深く暗い飢餓に輝いていた。
(……怒ってる。怖いほどに。だけど、それ以上に震えている)
天正魔法を展開せずとも分かる。今の彼の心を占めているのは私を失いかけた恐怖と、自分以外の男へ情を見せた私への猛烈で狂おしいほどの執着。契約結婚が、ラファエルの建前だったのはもう理解している。こんなに執着を見せているんだもの。今更って感じだ。
私はこれから起こる『罰』を粛々と受け入れなければならない。覚悟に、唇を小さく噛みしめていた。
屋敷に着き、いろんな人に心配の声をかけられたが、ラファエルは無言で私の手を引き寝室へと入った。その瞬間、ラファエルの感情が決壊したのだ。
ドンッ、という音とともに、私は寝室の扉とラファエルに挟まれていた。長い腕に囲まれ、逃げることはできない。
ラファエルは無言のまま、私の両手首を掴むと、頭の上で固定した。驚きで抵抗する間もなく、彼の逞しい体が私の体を押しつぶすように密着してくる。
「ディナ。君は自分が何をしたのか分かっているのか」
問いかける声は、様々な感情を抑えているように、低く喉の奥を震わせるような響きを帯びていた。それは私の存在をかつてないほど所有したい男の欲を孕んでいた。
「あんな掃きだめに、君一人を行かせた自分を、今すぐ殺したい気分だ。だが、それ以上に君を……俺から離れた君を……許せそうにない」
「ごめんなさい……エル。私はただ、エドガーにお別れを言うつもりで……」
「黙れ。二度とあの男の名を呼ぶことは許さない。今回の罪は重いと知れ……ディナ」
ラファエルは私の顎を強く持ち上げ、言い訳すら許さないと鋭い眼差しで射抜く。その氷色の瞳の中には、私を氷漬けにして粉々に砕き、自身の内に取り込んでしまいたいという執着愛で揺れていた。
それは私とラファエルが幼い頃、何度か私を見つめているラファエルの瞳と同じ。
(ああ……、あなたはあの頃から、私の事をこんなにも愛してくれていたのね。エル……あなたは氷の公爵なんかじゃないわ。ただただ、私が再びあなたの前から姿を消すことに怯えているだけ)
今ほどラファエルを抱きしめ、一人じゃないと言いたいのに、それができずにもどかしさばかりが募った。
ラファエルは私の腰を引き寄せ、背中の紐を乱暴に、それでも私を傷つけないように解く。衣擦れの音がし、着ていたドレスが床に滑り落ちる。冬の夜の冷気が肌を撫でる。だけど、すぐにそれ以上の熱が私を包み込んだ。
「あの男が触れた場所を、全て俺の熱で塗り替えてやる。ディナ、今日は泣いても許さないからな」
彼は私の首筋に顔を埋め、ツキリとした痛みと共に私に宣言する。どこか甘さのある声音に、私のお腹の奥が疼く。
剥き出しになった鎖骨のくぼみ、耳の後ろ、それからエドガーが掴もうとした腕。ラファエルはまるで汚れを浄化するかのように、何度も何度も吸っては、赤い印を刻んでいった。
「あの男はどこまで君に触れた?」
「ぁ……、っ、エル……もっと、やさしく、して」
「優しく? 君が俺に与えたのは、心臓を凍らせるほどの絶望だ。今夜は君の過去全てを焼き尽くすまで、開放などしないと知れ」
彼の言葉は鋭い刃物のように私を責める。だけど、そのあとに続く口づけは、驚くほど切実に、泣き出したくなるほど甘い。ラファエルは、私が想像していたよりもずっと、私の心が自分から離れていくことを恐れていたのだ。私の前にいるのは、冷徹な氷の公爵なんかじゃない。ただの、ひとつの愛に飢えた一人の男だった。
「ここも、この指先も、十年前から俺のものだ。もう二度と忘れないように、その体に刻み付ける」
指を絡め、胸元に花弁を散らしながら、ラファエルが呟く。
(分かってるわ、エル。おじい様の庭で約束した時から、私はあなたのもの。あなたの魔力の半分ごと、私が壊れるまで愛して……)
私はうわ言のように、ラファエルに懇願していた。
◇ ◇ ◇
天蓋付きのベッドに倒された途端、視界がグルリと揺れた。
ラファエルは乱暴に礼装を脱ぎ、床に投げ捨てる。露わになった上半身が、私の肌に重なった。氷の魔力を持つはずの彼の体は、硬く熱い。
コルセットまで脱がされた私の裸身が、緊張と期待に震える。乳房のいただきは、寒さからか固く尖っている。ラファエルの手が、包むように乳房を持ち上げ、やわやわと揉み出した。
曖昧に揺らされ、空気に触れたしこりが刺激される。もどかしい愛撫に私は「もっと」と哀願した。
「……ダメだ。狂うほどに俺を求めるまで……もう二度と離れる気が起きないまで、ディナに甘い罰を与え続ける」
「そ、んな……っ、あ、……んっ」
意地悪なラファエルの指先が胸の先端を弾くと、私の腰がビクビクとわななく。お腹の奥で愛液がトロリと溢れ、蜜道をしとどに濡らす。ラファエルによって開かれた体は、彼がもたらす行為に反応を返していた。
(ど、どうしよう。あの場所が酷く濡れて……しかも、なんだか物足りないのが強くなってくるわ)
もじもじと膝を擦り合わせていると、足の付け根からクチュッと水音が聞こえ、恥ずかしさが湧き上げてくる。その小さな音を耳にしたラファエルは、蕾に口を含みかけた動きを止め、ジッと私を見てくる。うぅ、恥ずかしい。
「ディナ……今の音は、なに?」
「お願い……聞かないで……」
「ねえ、教えて。ディナ」
ラファエルは意地悪く問いかけ、蕾から外れた肌を吸う。チュッと音がし、かすかな痛みを感じた。
「ディナ。これはお仕置きなんだ。だから、答えないと」
「エル……あの場所が辛いの……っ、お願い……」
残忍な笑みを浮かべ、私を追いつめてくる。その間も感じる場所を避け、幾度も肌に赤い花弁を散らしていく。疼きはどんどん強くなっていくし、頭の中も靄がかかったようになり、私は自分の欲望を自然と口にしていた。
胸を支えた手と反対の手が私の肌を這うように下におりていく。それだけで快感が増していき、私の口から小さな喘ぎが何度も漏れる。ラファエルはそれに構わず恥丘をなぞり、茂みのないあわいに落ちていくと、閉じた足の間から濡れた音が生まれた。
「ああ……凄く濡れてるね。ディナ、どうしてほしい?」
「んっ、ぁ、の、もっと奥を……触って」
「触るだけでいいのか?」
私の蜜液をまとわせたラファエルの中指が足の付け根をゆっくりと上下させている。
「いじ、わる、しないで……っ、エルが欲しいの……っ」
切実に訴えると、ラファエルの指は欲しかった場所ではなく、少し上にある秘核を下から撫で上げた。ぬめりをまとったラファエルの指は、ペンだこの固さのせいで目の前に星が飛ぶほどの刺激となる。
「っ、あっ! ぁ……あっ、んんっ!」
腰が溶けてしまったのかと思うほどの、大きな絶頂の波が私を襲う。ラファエルが私の中で果てた時の快感とは違う波濤に、私は戸惑いながら虚脱に呑まれそうになった。
体に力が入らない。濡れた目でラファエルを見つめると、彼は体を起こしてスラックスの前立てを無言で開く。彼の男身はとっくに臨戦態勢で、切っ先が濡れている。初めて目にする男の象徴があまりにも凶器じみて、私の心臓はドクドクと暴れた。
「嘘……そんなに大きかったなんて……」
声を震わせ言葉を漏らす。
ラファエルは「そうか?」と首を傾げ、私の足を左右に開くと、その中心に陣取る。秘密の場所が晒され、恥ずかしくて隠したかったけど、力が抜けて指一本すら動かせない。
「毎夜、君を満たしていたから、心配しなくてもいい。ディナも、いつも美味しそうに食べていただろう?」
彼はそう言って、私の足を持ち上げると、自身の怒張の先を濡れた蜜口へ押し込んだ。
「あ、あぁ……っ、エルっ」
過敏になっているからか、いつもよりラファエルの男身の存在が強く分かる。私の蜜壺をゆっくりと掻き分ける存在は、身の内から燃やされてしまいそうに熱い。切っ先が最奥に到達してもラファエルはさらに腰を密着させ、私のお腹の奥は痛いような気持ちいいような変な感覚に狂いそうになった。
「ディナの中は、とても温かくて……気持ちがいいな。でも、今夜はディナに、俺の愛を深く知ってもらうための、お仕置きだ」
グッ、と腰を押し付けられ、彼の先端が深く入っていく。またも目の前にチカチカと光が瞬き、喉から嬌声が溢れ出た。氷の魔力を持つはずの彼の体は、溶岩のように熱く、猛々しい。溺れそうになる感覚に、私は縋るようにラファエルの背中に手を回していた。
始めるぞ、との声を共に、私の体はラファエルという嵐に放り出された。
目の前は瞬く星の中に苦し気な顔のラファエルがいて、耳は肌を打つ音と繋がった場所からはしたない水音が私を狂わす。周囲は私とラファエルの魔力が反応し、黄金の氷の粒が舞っていた。
「ディナ……、君の天秤は、今、どちらに傾いている? 君の快楽か……俺の執着か」
「もう……っ、わから、ないっ。苦しくて……分からないの。……ああっ」
重い一突きごとに、頭の中は黄金に染まり、視界が白く弾ける。
ラファエルの指が私の指に絡まり、薬指で輝くオパールを、まるで自身の欠片であるかのように何度も唇でなぞる。
「苦しいなら、全て俺に預ければいい。あの夜、月見草の庭で約束したように……君の魔力も、心も、体も、全て俺に注ぎ込め」
私たちの魔力が激しく共鳴し、寝室の窓ガラスには氷の花が咲き乱れていた。黄金の光に反射して、とても幻想的だ。
「エル……、ああっ! ……エルっ、私はあなたの……!」
「分かっている。君は俺のものだ。……死ぬまで。いや……死んでからも、魂が続くまで。だから、二度と俺の傍を離れるな。……ディナ、俺の光で希望……っ!」
ラファエルの絶頂の瞬間、彼の美しい青の双瞳から涙がこぼれ、私の頬に落ちた。それは普段言葉の足りない彼が、体だけで伝える失うことの恐怖と狂おしいほどの愛。この不器用なまでの情熱こそが、私の心を揺らす天秤の錘なのだと、私は溶けていく意識の中で確信していた。
◇ ◇ ◇
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「まだ寝かせないと言っただろう……?」
冗談とも本気とも取れない低い声が、私の耳朶を優しくくすぐる。彼は頭から首筋、それから体のあちこちに散らばる花弁に指を這わせた。
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「夜会……?」
ぼんやりと話を聞いていると、どうやらヘルフリート殿下の見合いを称した催しだという。本人はまだ自由を楽しみたいようだが、王命とあって渋々引き受けたと、ラファエルが話してくれた。
そこで私は朧げな頭で考えた。果たして、この体中に散らばる『ラファエルの所有印』が消えるのだろうか、と。
「ドレスは俺が用意する。君の肌が美しく映える、俺の瞳と同じ色のドレスを」
夜会は基本的に肌の露出が多めだ。つまり、このまま肌に散る痕が消えなければ……
すう、と血の気が引く音が耳の中で聞こえる。
(お、おしろいで消えるかしら?)
新たな問題が発生し、落ちそうになっていた眠気が瞬時に消えた。だが、次に聞こえた冷たいラファエルの声に、私はそれどころではないと緊張に身を強ばらせた。
「夜会でヒルトマンとランベルト、その全ての問題を君と共に清算する」
私は冷たい響きに、ラファエルの鍛えられた胸に顔を寄せた。雪解けの森のような清廉な香りを吸い込み、目を閉じた。
エドガーは捕縛され、ランベルト伯爵家からも見放されたヒルトマン子爵家は、完全に退路を絶たれた。そして、リリアのお腹に宿った新しい命の未来。
没落を目前にした両親や妹が、どのような醜悪なあがきを見せるのか。私には分からない。
(……もう、私はヒルトマンの娘ではなく、アインハルトの妻。いい加減、彼らの縁を切らなくては……)
十年前、私はラファエルの魔力を預かった。
今、ラファエルは私の運命を預かっている。
私たちは、お互いの重荷を半分ずつ預かりながら、苦境を乗り越え、輝かしい未来へと向かっていく。
「……ごめんなさい、エル」
私の小さな呟きに、ラファエルは答える代わりに、再び私を深い抱擁の中へと閉じ込めたのだった。
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お読みいただき、ありがとうございます。
ほぼ折り返し地点にきたのと、三月にあるイベントの原稿作業のため、ストックが終わってしまいました。
書き溜めしたく、数日のお休みをいただきたく存じます。
楽しみにしていただいてる皆様には恐縮ではございますが、なにとぞよろしくお願いいたします。
庚あき
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正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
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--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
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