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26 拒絶
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「王妃様、陛下が今日の夜を共にしたいと……」
「――お断りしてちょうだい」
「そ、そんな……!」
ギルバートとアイラの二人とお茶会をしたその日、何故か突然エルフレッドから夜の誘いがあった。
(どうして急に……)
彼はクロエを側妃として迎えてから一度も私と関係を持つことは無かった。
それは一度目の人生、二度目の人生においても同じことだった。
そんなあの人がどうして急に私の元へ来たりするのだろうか。
(クロエと喧嘩でもしたのかしら?どんな理由であれ御免だわ)
彼の誘いなんて二度と受けてやるものか。
本当に、今さら私に構わないでほしい。
しかし、そんな思いは届くことなく、断り続ける私をエルフレッドは執拗に誘い続けた。
彼がここまで頑固な人だったとは、全く知らなかった。
「王妃様、陛下がお話だけでもと……」
「……」
あまりにもしつこいため、話だけならと受け入れることにした。
***
「リーシャ!」
「陛下、ご機嫌よう」
その日の夜。
久しぶりに部屋へ訪れたエルフレッドは私を見て口元を綻ばせた。
何故そのような顔になるのか、理解出来ない。
「会えて嬉しいよ、リーシャ」
「……お茶の用意が出来ております」
差し出したエルフレッドの手に気付かないフリをして席へと向かった。
彼は困惑したようだったが、どうしてもその手を取る気にはなれなかった。
前世の記憶を取り戻した後だから尚更だった。
「久々だな、こうやって二人でお茶をするのは」
「……そうですね」
「婚約者だった頃は定期的に茶会を開いていたな。覚えているか?」
「もちろんでございます」
忘れられるわけがない。
家庭に居場所が無い私にとって、大好きだった貴方と過ごすお茶の時間はとても大切なものだったから。
それも今では過去でしかないが、大切な思い出であることに変わりはない。
「最近はなかなか時間が取れなくて……悪かった」
「気にしておりません。側妃様と過ごしてほしいと言ったのは私ですから」
「だが……」
(時間が取れなくて……か)
そんな理由で貴方はかつての私を何年も放っておいたのか。
その行動に私がどれだけ傷付いたか、彼が知る日はきっと永遠に来ないだろう。
「それで……私が今日ここへ来たのは君に話したいことがあったからだ」
「……何でしょうか?」
「――これからはもっと君との時間を取りたいと思っている」
「……………………え?」
(聞き間違い……かしら?)
前世ではもっと長い期間放置されていたはず。
実際、私も今回は彼への未練なんて無いし、それで良いと思っていた。
それなのに何故今世では急にそんなことを。
「……陛下、私のことはお気になさらないでください。これまで通りでかまいませんから」
「リーシャ、君は前もそう言っていたがそうするわけにはいかない」
「何故ですか?」
そう尋ねると、彼は恥ずかしそうに私から目を逸らして言った。
「――君は……私の大切な妻だから」
「……」
(ハハハ……何よそれ……)
思わず笑いが出そうになった。
私が貴方にとって大切な妻だって。
彼が私を妻として扱ったことなんてあっただろうか。
少なくとも、私の記憶には無い。
かつて彼に抱いていた憎しみが、少しずつ沸き上がってくるような感覚に襲われた。
これ以上は貴方と一緒にいられない。
「陛下、もうやめてください」
「……リーシャ?」
冷たくそう言い放つと、彼が戸惑ったように私を見た。
「そのようなこと、私は望んでいないと言っているのです」
「何故……リーシャ、君は私を……」
「――私はもう貴方を愛していません」
それより先の言葉を聞きたくなくて、無意識に彼の言葉を遮っていた。
その言葉を聞いて茫然とするエルフレッド。
私が自分を未だに好きだと信じて疑っていなかったのだろう。
(その自信は一体どこから来るのかしら……)
何か勘違いをしている彼に、私はキッパリと告げた。
「貴方がクロエを好きになったあの日から、私たちの夫婦としての関係は終わりました。少なくとも、私はそう思っています」
「リーシャ……」
そこで私は席から立ち上がり、空っぽな彼の瞳をじっと見つめた。
こんな風に正面から目を合わせるのはいつぶりだろうか。
もしかすると、これが最後になる可能性だってある。
最後だからこそ、しっかりと言っておきたかった。
何の未練も無く、ハッキリと。
その方がお互いにとって絶対に良いはずだから。
「――部屋へお戻りください、エルフレッド国王陛下」
傷付いたような彼の顔をこれ以上見ていたくなかった。
「――お断りしてちょうだい」
「そ、そんな……!」
ギルバートとアイラの二人とお茶会をしたその日、何故か突然エルフレッドから夜の誘いがあった。
(どうして急に……)
彼はクロエを側妃として迎えてから一度も私と関係を持つことは無かった。
それは一度目の人生、二度目の人生においても同じことだった。
そんなあの人がどうして急に私の元へ来たりするのだろうか。
(クロエと喧嘩でもしたのかしら?どんな理由であれ御免だわ)
彼の誘いなんて二度と受けてやるものか。
本当に、今さら私に構わないでほしい。
しかし、そんな思いは届くことなく、断り続ける私をエルフレッドは執拗に誘い続けた。
彼がここまで頑固な人だったとは、全く知らなかった。
「王妃様、陛下がお話だけでもと……」
「……」
あまりにもしつこいため、話だけならと受け入れることにした。
***
「リーシャ!」
「陛下、ご機嫌よう」
その日の夜。
久しぶりに部屋へ訪れたエルフレッドは私を見て口元を綻ばせた。
何故そのような顔になるのか、理解出来ない。
「会えて嬉しいよ、リーシャ」
「……お茶の用意が出来ております」
差し出したエルフレッドの手に気付かないフリをして席へと向かった。
彼は困惑したようだったが、どうしてもその手を取る気にはなれなかった。
前世の記憶を取り戻した後だから尚更だった。
「久々だな、こうやって二人でお茶をするのは」
「……そうですね」
「婚約者だった頃は定期的に茶会を開いていたな。覚えているか?」
「もちろんでございます」
忘れられるわけがない。
家庭に居場所が無い私にとって、大好きだった貴方と過ごすお茶の時間はとても大切なものだったから。
それも今では過去でしかないが、大切な思い出であることに変わりはない。
「最近はなかなか時間が取れなくて……悪かった」
「気にしておりません。側妃様と過ごしてほしいと言ったのは私ですから」
「だが……」
(時間が取れなくて……か)
そんな理由で貴方はかつての私を何年も放っておいたのか。
その行動に私がどれだけ傷付いたか、彼が知る日はきっと永遠に来ないだろう。
「それで……私が今日ここへ来たのは君に話したいことがあったからだ」
「……何でしょうか?」
「――これからはもっと君との時間を取りたいと思っている」
「……………………え?」
(聞き間違い……かしら?)
前世ではもっと長い期間放置されていたはず。
実際、私も今回は彼への未練なんて無いし、それで良いと思っていた。
それなのに何故今世では急にそんなことを。
「……陛下、私のことはお気になさらないでください。これまで通りでかまいませんから」
「リーシャ、君は前もそう言っていたがそうするわけにはいかない」
「何故ですか?」
そう尋ねると、彼は恥ずかしそうに私から目を逸らして言った。
「――君は……私の大切な妻だから」
「……」
(ハハハ……何よそれ……)
思わず笑いが出そうになった。
私が貴方にとって大切な妻だって。
彼が私を妻として扱ったことなんてあっただろうか。
少なくとも、私の記憶には無い。
かつて彼に抱いていた憎しみが、少しずつ沸き上がってくるような感覚に襲われた。
これ以上は貴方と一緒にいられない。
「陛下、もうやめてください」
「……リーシャ?」
冷たくそう言い放つと、彼が戸惑ったように私を見た。
「そのようなこと、私は望んでいないと言っているのです」
「何故……リーシャ、君は私を……」
「――私はもう貴方を愛していません」
それより先の言葉を聞きたくなくて、無意識に彼の言葉を遮っていた。
その言葉を聞いて茫然とするエルフレッド。
私が自分を未だに好きだと信じて疑っていなかったのだろう。
(その自信は一体どこから来るのかしら……)
何か勘違いをしている彼に、私はキッパリと告げた。
「貴方がクロエを好きになったあの日から、私たちの夫婦としての関係は終わりました。少なくとも、私はそう思っています」
「リーシャ……」
そこで私は席から立ち上がり、空っぽな彼の瞳をじっと見つめた。
こんな風に正面から目を合わせるのはいつぶりだろうか。
もしかすると、これが最後になる可能性だってある。
最後だからこそ、しっかりと言っておきたかった。
何の未練も無く、ハッキリと。
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「――部屋へお戻りください、エルフレッド国王陛下」
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