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27 想い エルフレッド視点
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『――私はもう貴方を愛していません』
その言葉がずっと頭から離れない。
彼女にあそこまで冷たくされたのは人生で初めてだった。
(私は……一体何をしているんだ……)
リーシャにとって最低な夫だったという自覚は自分でもある。
だからこそ、彼女の望み通り、放っておいてやるのが正しいのだろう。
しかし、何故だかそうしたくはなかった。
――クロエとの出会いは偶然だった。
数ヶ月前、王宮の庭園で道に迷っていた彼女をたまたま私が見つけた。
可愛らしい顔立ちをしているとは思ったが、ただそれだけで他の貴族令嬢と大して変わらなかった。
――それなのに、何故。
「ここで何をしているんだ?」
「あ……私、道に迷ってしまって……」
「そうか、なら私が君の馬車まで送っていこう」
身体が勝手に動き、勝手に言葉を紡いだ。
(違う……私は……)
王が一人の令嬢を直々に送っていくなど普通ならありえない。
侍従など他の者に任せるのが通常だろう。
そんなことは分かっているのに、どうして。
「私、クロエって言います」
「私はエルフレッドだ」
「エルフレッド様……」
自分は国王で、彼女はただの貴族令嬢。
陛下と呼ばなければならないところを、彼女は初対面から下の名前で呼んだ。
無礼な行為だということは分かっている。
しかし、不思議と咎める言葉は出てこなかった。
(変だ……こんなのは私ではない……)
クロエと一緒にいると心地良かった。
心が満たされ、常に自分が一番になったような気分でいられた。
――私は彼女と出会うために生まれた、彼女を幸せにするためにこの国の王子として生まれた、私たちは運命だ。
自然とそんなことを思うようになっていった。
それから私とクロエが密会を重ねるようになるまで、そう時間はかからなかった。
「エルフレッド様はとてもお優しいんですね!」
「そうだろうか……ハハハ……」
いつ、どこで、どのような話をしたのか。
あまりよく覚えていない。
ただただ彼女が愛しい、私が愛するべきは彼女だった、そんな気持ちで満たされるだけ。
そして気付けば、正妻であるリーシャにクロエのことを話しに行くというとんでもない行為に走っていた。
やめろ、彼女にそのようなことを言うなと思うものの、体が言うことを聞かなかった。
その話を聞いたリーシャは不快な顔一つせず、クロエを側妃にしたらどうかと提案した。
自分にとっての妻はリーシャただ一人であり、側妃や愛妾を持つことは無い。
幼い頃に掲げたその誓いが、音を立てて崩れていく。
しかし、そこまで悪い気はしなかった。
むしろようやくクロエと愛し合えるという喜びで胸がいっぱいになった。
誰かに支配されているかのように、全てが思い通りにいかなかった。
それから私はすぐにクロエを側妃に迎え、彼女と過ごす時間を何よりも優先するようになった。
正妻であるリーシャのことなど全く気にも留めないようになった。
リーシャのところへ行かなければ、と思うのにやはり体は動かない。
クロエを側妃として王宮に上げてからはこれまで以上に体の自由が利かなくなった。
クロエと一緒にいること、彼女を愛すること、それが今の自分の役目だ。
いつだって彼女のことで頭が埋め尽くされた。
――そんな生活に変化が訪れたのはリーシャが体調を崩してからだった。
その日から彼女の態度が一変したのだ。
私を見る目が冷たくなり、必要以上に関わりたくないというように感じられた。
まともな考えを取り戻していったのはその頃からだった。
クロエに対する深い愛情が少しずつ消え去っていく代わりに、リーシャを気にかけるようになったのだ。
紛れも無く自分自身のせいで崩壊した夫婦仲だが、もう一度やり直したい。
今度は愛してくれなくてもかまわない。
ただ、傍にいてくれれば――
(どうにか出来ないか……)
その言葉がずっと頭から離れない。
彼女にあそこまで冷たくされたのは人生で初めてだった。
(私は……一体何をしているんだ……)
リーシャにとって最低な夫だったという自覚は自分でもある。
だからこそ、彼女の望み通り、放っておいてやるのが正しいのだろう。
しかし、何故だかそうしたくはなかった。
――クロエとの出会いは偶然だった。
数ヶ月前、王宮の庭園で道に迷っていた彼女をたまたま私が見つけた。
可愛らしい顔立ちをしているとは思ったが、ただそれだけで他の貴族令嬢と大して変わらなかった。
――それなのに、何故。
「ここで何をしているんだ?」
「あ……私、道に迷ってしまって……」
「そうか、なら私が君の馬車まで送っていこう」
身体が勝手に動き、勝手に言葉を紡いだ。
(違う……私は……)
王が一人の令嬢を直々に送っていくなど普通ならありえない。
侍従など他の者に任せるのが通常だろう。
そんなことは分かっているのに、どうして。
「私、クロエって言います」
「私はエルフレッドだ」
「エルフレッド様……」
自分は国王で、彼女はただの貴族令嬢。
陛下と呼ばなければならないところを、彼女は初対面から下の名前で呼んだ。
無礼な行為だということは分かっている。
しかし、不思議と咎める言葉は出てこなかった。
(変だ……こんなのは私ではない……)
クロエと一緒にいると心地良かった。
心が満たされ、常に自分が一番になったような気分でいられた。
――私は彼女と出会うために生まれた、彼女を幸せにするためにこの国の王子として生まれた、私たちは運命だ。
自然とそんなことを思うようになっていった。
それから私とクロエが密会を重ねるようになるまで、そう時間はかからなかった。
「エルフレッド様はとてもお優しいんですね!」
「そうだろうか……ハハハ……」
いつ、どこで、どのような話をしたのか。
あまりよく覚えていない。
ただただ彼女が愛しい、私が愛するべきは彼女だった、そんな気持ちで満たされるだけ。
そして気付けば、正妻であるリーシャにクロエのことを話しに行くというとんでもない行為に走っていた。
やめろ、彼女にそのようなことを言うなと思うものの、体が言うことを聞かなかった。
その話を聞いたリーシャは不快な顔一つせず、クロエを側妃にしたらどうかと提案した。
自分にとっての妻はリーシャただ一人であり、側妃や愛妾を持つことは無い。
幼い頃に掲げたその誓いが、音を立てて崩れていく。
しかし、そこまで悪い気はしなかった。
むしろようやくクロエと愛し合えるという喜びで胸がいっぱいになった。
誰かに支配されているかのように、全てが思い通りにいかなかった。
それから私はすぐにクロエを側妃に迎え、彼女と過ごす時間を何よりも優先するようになった。
正妻であるリーシャのことなど全く気にも留めないようになった。
リーシャのところへ行かなければ、と思うのにやはり体は動かない。
クロエを側妃として王宮に上げてからはこれまで以上に体の自由が利かなくなった。
クロエと一緒にいること、彼女を愛すること、それが今の自分の役目だ。
いつだって彼女のことで頭が埋め尽くされた。
――そんな生活に変化が訪れたのはリーシャが体調を崩してからだった。
その日から彼女の態度が一変したのだ。
私を見る目が冷たくなり、必要以上に関わりたくないというように感じられた。
まともな考えを取り戻していったのはその頃からだった。
クロエに対する深い愛情が少しずつ消え去っていく代わりに、リーシャを気にかけるようになったのだ。
紛れも無く自分自身のせいで崩壊した夫婦仲だが、もう一度やり直したい。
今度は愛してくれなくてもかまわない。
ただ、傍にいてくれれば――
(どうにか出来ないか……)
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