今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの

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45 黒幕

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「最低だわ、あの人」
「何て汚らわしいの……」
「突然俺たちを連れてここまで来たかと思えば……証拠もほとんど無かったのかよ……」


「ッ……」


聞こえてくるのはどれも愚かな男を非難する言葉だった。
この場で彼の味方をする者は誰もいない。


妻子がいながら王の寵愛を受ける側室に叶わぬ恋をする馬鹿な男。
自分から側妃への想いをカミングアウトしたのだから自業自得だ。


(ここまで馬鹿だとはね……)


誰もが呆れ、蔑みの視線を向けていたとき、こちらへ向かってくる足音が耳に入った。


「――これは一体何の騒ぎだ」
「……!」


部屋に入って来たのはエルフレッドと――彼の後ろについていたギルバートだった。
気のせいか、エルフレッドは酷く疲れているように見える。


「国王陛下……!」


何があったのかと尋ねるエルフレッドに、膝を着いたリリアーナが返した。


「この騎士が王妃陛下を糾弾していたのです!」
「糾弾だと?」
「証拠も無く側妃様の毒殺を指示したのは王妃陛下であると……!」
「……」


エルフレッドが顔を真っ青にして項垂れている男を横目でチラリと見た。


「何か言うことはあるか?」
「……弁明の余地もございません」
「事実だと認めるということか」
「……はい」


騎士を見下ろしたエルフレッドは愚かだなと小さく呟いた。


「側妃を毒殺しようとした黒幕は既に捕らえてある。犯人は王妃では無い」
「え……」


(アイラに毒殺を指示した真犯人が捕まっているって……?)


この場にいる全員が驚きの表情を見せる。
一体誰がアイラに毒殺を指示し、私に罪を被せたのか。


「黒幕は一体……」


ついさっきまで項垂れていた騎士が顔を上げ、腰の剣に手をかけた。
犯人を今すぐにでも殺してしまいそうな顔だ。


エルフレッドはそんな男を冷たい瞳で見つめ、静かに口を開いた。


「――今回の件は全て側妃の自作自演だ」
「……!?」


部屋にざわめきが広がった。


(クロエが自分で毒を盛ったって……!?)


全員が驚きを隠しきれなかったが、最も動揺していたのは私を糾弾していた騎士だ。


「そ、そんな……何かの間違いでは……」
「アイラ・スイートが自白した。側妃に言われて致死量に満たないほどの毒を盛ったと。どうやら懐妊したというのも嘘だったようだな。一連の騒動は全て王妃の座が欲しいがために側妃が仕組んだことだった」
「……」


(何て馬鹿なことを……!)


どうしてそんなことをしてしまったんだろう。
彼女には私と違ってエルフレッドの寵愛という大きな武器があったのに。
かつては憧れて羨ましく思ったこともあった女の落ちぶれた姿に、何だか複雑な気持ちだ。


「陛下……側妃様は……」
「ああ、先ほど目が覚めたから地下牢に入れておいた。然るべき処分を下すつもりだから安心しろ」
「はい……」


それだけ言うと、エルフレッドは表情を変えることなく私に背を向けた。


「真犯人を捕らえたからこの件はこれで終わりにする。騎士たちも下がれ」
「は、はい、陛下……!」


言葉を失った騎士を引きずるようにして別の騎士が連れて行く。
彼らが全員いなくなった後、エルフレッドも同じように部屋を出て行った。


「――リーシャ」
「はい」
「このようなことがあって今日は疲れただろう、ゆっくり休むといい」
「ありがとうございます、陛下……」


彼の気遣いには未だに慣れないし、不快感を感じるときさえある。
しかし、この場を収めてくれて助かったのは事実だ。


(本当に前世とは違うようね……私が変わったからかしら……)


「――陛下!!!」
「……!」


一人放心状態になっていた私に駆け寄ってきたのは、エルフレッドについて部屋へ来ていたギルバートだった。





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