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50 愚か者
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「陛下、スイート公爵家は取り潰しとなるそうです」
「そう……」
アイラはクロエの罪に加担し、私を貶めようとした。
本来ならば処刑だったところを自供したということもあり、何とか命だけは助けてもらえることになったようだ。
それでも生涯幽閉となり、二度と外へは出られなくなったようだが。
アイラと私の生家である公爵家は取り潰しとなり、父と義母は平民になる。
あの二人に平民としての暮らしが出来るとは思えない。
公爵夫人になってからというもの、義母は贅沢三昧な暮らしを送っていたようだったから。
父と結婚したのも金と地位に釣られたのだろう。
父は当然、愛し合って結婚したのだと信じて疑わないが。
(そういえば、少し前にお父様と義母が訪ねてきたっけ……)
***
時は数時間前に遡る。
『ああ、リーシャ!良かった、無事だったんだな!』
『生きていたのね!とっても嬉しいわ!』
『……何ですか?』
先触れも無く、突然父と義母が私の元を訪れた。
それに加えて王妃の体をベタベタ触るだなんて不敬極まりない行為だ。
すぐに引き剥がして用件を尋ねると、二人はとんでもないことを言い始めた。
『あの馬鹿娘、何てことをしてくれたんだ!』
『本当よ、血の繋がった姉を貶めようとするなんて!育て方を間違えたわ!』
『……』
吐き気がする。
(今さら何を言っているのかしら……)
アイラがああなったのはこの人たちのせいだ。
二人が溺愛し、ろくな教育もせずに甘やかしたせいであんな風になった。
それなのに罪を犯した途端に見捨てるとは、それでも親なのか。
(どうやらまだ自分の立場を分かっていないようね)
本当の悪はアイラでは無く、この二人だろう。
『スイート公爵家は無くなるでしょう』
『…………え?』
アイラを非難していた二人の顔が同時に固まった。
『貴方たちはもう貴族ではなくなります』
『そんな……』
絶望したような表情で膝を着いた義母が私のドレスの裾を掴んで叫ぶ。
『あ、貴方!貴方から陛下に言ってちょうだい!貴方だって公爵家が取り潰しになったら困るでしょう!?』
『……どうでしょう。あの家に思い入れなんてありませんから』
『ちょ、ちょっと!』
冷めたような私の答えに、義母が目から大粒の涙を流した。
貴族ではなくなった自分の未来の姿が容易に想像出来るのだろう。
少し前までは散々威張り散らしていたくせして、立場が悪くなると掌を返すだなんて。
どこまでも醜い人たちだ。
『貴族でいられないだなんて……そんな……私もう生活水準下げれないわよ……どうやって生きろというの……』
『何故ですか?元々平民として暮らしていたのでしょう?お父様もいますし、平民になったとしても愛し合う二人で仲良く暮らせばいいのでは?』
『――ふざけないで!!!』
義母が声を荒らげた。
『地位も金も無いアイツに興味なんて無いのよ!!!私はただ贅沢な暮らしが出来ればそれで良かったの!!!』
『な……何だと……?』
『あら……』
ついつい本音が出てしまったようだ。
当の本人がすぐそこにいるというのに、何ということだろう。
『お前……そんなことを思っていたのか……』
『あ……貴方……ち、違うのよ……これは……』
今になって否定しても遅かった。
父は怒りを爆発させ、義母に詰め寄っている。
(とうとう本性が露わになったわね)
当然、騙されていた父も馬鹿だけれど。
『もういい、勝手に一人で野垂れ死んでろ!私は知らないからな!』
『待って!捨てないで!貴方にも捨てられたら私、どうやって暮らせばいいの!一度も働いたことなんて無いのに……!』
父は必死で手を伸ばす義母を置いて部屋を出て行った。
かつて深く愛し合っていた二人は見る影も無かった。
(アイラがこんな醜い姿の二人を見なくて良かったかも……)
アイラは昔から仲の良い両親に憧れを抱いていたから。
それも今完全に崩れ落ちてしまったが。
一人取り残された義母はイヤーッと絶望に満ちた叫び声を上げた。
「そう……」
アイラはクロエの罪に加担し、私を貶めようとした。
本来ならば処刑だったところを自供したということもあり、何とか命だけは助けてもらえることになったようだ。
それでも生涯幽閉となり、二度と外へは出られなくなったようだが。
アイラと私の生家である公爵家は取り潰しとなり、父と義母は平民になる。
あの二人に平民としての暮らしが出来るとは思えない。
公爵夫人になってからというもの、義母は贅沢三昧な暮らしを送っていたようだったから。
父と結婚したのも金と地位に釣られたのだろう。
父は当然、愛し合って結婚したのだと信じて疑わないが。
(そういえば、少し前にお父様と義母が訪ねてきたっけ……)
***
時は数時間前に遡る。
『ああ、リーシャ!良かった、無事だったんだな!』
『生きていたのね!とっても嬉しいわ!』
『……何ですか?』
先触れも無く、突然父と義母が私の元を訪れた。
それに加えて王妃の体をベタベタ触るだなんて不敬極まりない行為だ。
すぐに引き剥がして用件を尋ねると、二人はとんでもないことを言い始めた。
『あの馬鹿娘、何てことをしてくれたんだ!』
『本当よ、血の繋がった姉を貶めようとするなんて!育て方を間違えたわ!』
『……』
吐き気がする。
(今さら何を言っているのかしら……)
アイラがああなったのはこの人たちのせいだ。
二人が溺愛し、ろくな教育もせずに甘やかしたせいであんな風になった。
それなのに罪を犯した途端に見捨てるとは、それでも親なのか。
(どうやらまだ自分の立場を分かっていないようね)
本当の悪はアイラでは無く、この二人だろう。
『スイート公爵家は無くなるでしょう』
『…………え?』
アイラを非難していた二人の顔が同時に固まった。
『貴方たちはもう貴族ではなくなります』
『そんな……』
絶望したような表情で膝を着いた義母が私のドレスの裾を掴んで叫ぶ。
『あ、貴方!貴方から陛下に言ってちょうだい!貴方だって公爵家が取り潰しになったら困るでしょう!?』
『……どうでしょう。あの家に思い入れなんてありませんから』
『ちょ、ちょっと!』
冷めたような私の答えに、義母が目から大粒の涙を流した。
貴族ではなくなった自分の未来の姿が容易に想像出来るのだろう。
少し前までは散々威張り散らしていたくせして、立場が悪くなると掌を返すだなんて。
どこまでも醜い人たちだ。
『貴族でいられないだなんて……そんな……私もう生活水準下げれないわよ……どうやって生きろというの……』
『何故ですか?元々平民として暮らしていたのでしょう?お父様もいますし、平民になったとしても愛し合う二人で仲良く暮らせばいいのでは?』
『――ふざけないで!!!』
義母が声を荒らげた。
『地位も金も無いアイツに興味なんて無いのよ!!!私はただ贅沢な暮らしが出来ればそれで良かったの!!!』
『な……何だと……?』
『あら……』
ついつい本音が出てしまったようだ。
当の本人がすぐそこにいるというのに、何ということだろう。
『お前……そんなことを思っていたのか……』
『あ……貴方……ち、違うのよ……これは……』
今になって否定しても遅かった。
父は怒りを爆発させ、義母に詰め寄っている。
(とうとう本性が露わになったわね)
当然、騙されていた父も馬鹿だけれど。
『もういい、勝手に一人で野垂れ死んでろ!私は知らないからな!』
『待って!捨てないで!貴方にも捨てられたら私、どうやって暮らせばいいの!一度も働いたことなんて無いのに……!』
父は必死で手を伸ばす義母を置いて部屋を出て行った。
かつて深く愛し合っていた二人は見る影も無かった。
(アイラがこんな醜い姿の二人を見なくて良かったかも……)
アイラは昔から仲の良い両親に憧れを抱いていたから。
それも今完全に崩れ落ちてしまったが。
一人取り残された義母はイヤーッと絶望に満ちた叫び声を上げた。
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