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25 ブリアナの本性
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「男爵令嬢……?」
そりゃあ、私だって彼女には警戒しているけれど。
彼がこのようにわざわざ邸宅へ言いに来たということは何か理由があるのだろう。
これは聞く価値がありそうだ。
「理由を……お聞きしても?」
殿下はコクリと頷いた。
「実は、人を使ってブリアナ・ジョルジュのことを秘密裏に調べてみたんだ。そしたら、衝撃の事実が分かった」
「衝撃の事実……?」
「――ブリアナは平民だった頃に通っていた学園で”稀代の悪女”として知られていた」
「え……」
殿下はハァと額を手で押さえながら話し始めた。
「何でも、恋人がいる相手とばかり関係を持っていたようでな。ブリアナが原因で婚約を解消された者も少なからずいるようだ」
「あのブリアナが……」
殿下の話によると、ブリアナの過去の男関係はかなり激しかったという。
その美貌のおかげで恋人が途切れたことは無いが、我儘な性格のせいで長続きしない。
社交界で広まっているブリアナの噂とは正反対の情報だった。
人は見かけによらないとはまさに彼女のことを言っているのだろう。
「学園時代のブリアナの同級生を訪ねてみたんだがな……全員が似たようなことを口にしていたよ」
『あの子は昔からそういう子よ。人の物を奪うのが好きで、毎回相手のいる男子ばかりを狙うの。そのせいで女子全員から嫌われていたわ』
『男の人に対する距離感が異様なほど近い子で……私の彼も狙われそうになったわ』
『そういえば、学園の教師とそういう関係になったって噂もあったわね。成績を改ざんしていたって』
「とんでもない悪女ですね……」
「だな……そんな女に惚れ込んでいるとは……何て情けないんだ……」
アランに見る目が無いのはたしかだ。
しかし、あの美貌なら虜になってしまうのも仕方がないのかもしれない。
それほどにブリアナは美しい女だった。
(そういえば、エイベル殿下と関係を持っている女性たちも見た目が良いことで有名だったわね)
面食いな殿下はブリアナのことをどう思っているのだろうか。
気になった私は彼に尋ねた。
「殿下は彼女のこと何とも思わなかったのですか?殿下の恋人たちは全員かなりの美女だとお聞きしましたが」
「恋人だなんて……多分アイツらは俺のこと本気で愛してないと思うぞ」
そう口にした殿下の目は少し寂しそうだった。
「どうしてそんなことを……殿下の妻になりたいと思う者はたくさんいるでしょうに」
「君は何も分かってないな、その中で地位や権力を失っても俺と結婚したいと思っている女なんていない」
「そんな……」
(私はアランが公爵家の人間でなくなったとしても傍に居続けるつもりだったけど……)
殿下がボソッと呟いた。
「当然だよな……両親からも愛されなかったんだから……」
「え……?」
「いいや、何でもない」
聞き返したが、それ以上は話してくれなさそうだった。
「とにかく、警戒するに越したことはない。ブリアナは君が思っているよりもずっと危険な女かもしれないからな」
「ええ、そのようですね」
椅子から立ち上がった彼は、部屋にある窓から外を眺めた。
窓からはちょうどブリアナの住む別邸が見える。
「アランは……ブリアナのところにいるのか」
「ええ、ついさっき別邸へ行かれましたわ」
「アイツにも困ったものだな……妊娠している妻を置き去りにして愛人の元へ行くとは」
「いえ、私が行くように勧めたのです。男爵令嬢が体調を崩したようでしたので」
「しかし、それでも……」
「――アランがいなくても平気です。今の私にはお腹の子と優しい使用人たち……それにエイベル殿下もいますから」
「……!」
彼は一瞬だけ固まった後、嬉しそうに笑った。
そりゃあ、私だって彼女には警戒しているけれど。
彼がこのようにわざわざ邸宅へ言いに来たということは何か理由があるのだろう。
これは聞く価値がありそうだ。
「理由を……お聞きしても?」
殿下はコクリと頷いた。
「実は、人を使ってブリアナ・ジョルジュのことを秘密裏に調べてみたんだ。そしたら、衝撃の事実が分かった」
「衝撃の事実……?」
「――ブリアナは平民だった頃に通っていた学園で”稀代の悪女”として知られていた」
「え……」
殿下はハァと額を手で押さえながら話し始めた。
「何でも、恋人がいる相手とばかり関係を持っていたようでな。ブリアナが原因で婚約を解消された者も少なからずいるようだ」
「あのブリアナが……」
殿下の話によると、ブリアナの過去の男関係はかなり激しかったという。
その美貌のおかげで恋人が途切れたことは無いが、我儘な性格のせいで長続きしない。
社交界で広まっているブリアナの噂とは正反対の情報だった。
人は見かけによらないとはまさに彼女のことを言っているのだろう。
「学園時代のブリアナの同級生を訪ねてみたんだがな……全員が似たようなことを口にしていたよ」
『あの子は昔からそういう子よ。人の物を奪うのが好きで、毎回相手のいる男子ばかりを狙うの。そのせいで女子全員から嫌われていたわ』
『男の人に対する距離感が異様なほど近い子で……私の彼も狙われそうになったわ』
『そういえば、学園の教師とそういう関係になったって噂もあったわね。成績を改ざんしていたって』
「とんでもない悪女ですね……」
「だな……そんな女に惚れ込んでいるとは……何て情けないんだ……」
アランに見る目が無いのはたしかだ。
しかし、あの美貌なら虜になってしまうのも仕方がないのかもしれない。
それほどにブリアナは美しい女だった。
(そういえば、エイベル殿下と関係を持っている女性たちも見た目が良いことで有名だったわね)
面食いな殿下はブリアナのことをどう思っているのだろうか。
気になった私は彼に尋ねた。
「殿下は彼女のこと何とも思わなかったのですか?殿下の恋人たちは全員かなりの美女だとお聞きしましたが」
「恋人だなんて……多分アイツらは俺のこと本気で愛してないと思うぞ」
そう口にした殿下の目は少し寂しそうだった。
「どうしてそんなことを……殿下の妻になりたいと思う者はたくさんいるでしょうに」
「君は何も分かってないな、その中で地位や権力を失っても俺と結婚したいと思っている女なんていない」
「そんな……」
(私はアランが公爵家の人間でなくなったとしても傍に居続けるつもりだったけど……)
殿下がボソッと呟いた。
「当然だよな……両親からも愛されなかったんだから……」
「え……?」
「いいや、何でもない」
聞き返したが、それ以上は話してくれなさそうだった。
「とにかく、警戒するに越したことはない。ブリアナは君が思っているよりもずっと危険な女かもしれないからな」
「ええ、そのようですね」
椅子から立ち上がった彼は、部屋にある窓から外を眺めた。
窓からはちょうどブリアナの住む別邸が見える。
「アランは……ブリアナのところにいるのか」
「ええ、ついさっき別邸へ行かれましたわ」
「アイツにも困ったものだな……妊娠している妻を置き去りにして愛人の元へ行くとは」
「いえ、私が行くように勧めたのです。男爵令嬢が体調を崩したようでしたので」
「しかし、それでも……」
「――アランがいなくても平気です。今の私にはお腹の子と優しい使用人たち……それにエイベル殿下もいますから」
「……!」
彼は一瞬だけ固まった後、嬉しそうに笑った。
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