9 / 37
側妃と愛妾
しおりを挟む
クリスティーナ様と別れた後、私は自室へと戻っていた。
部屋に着いて私はふぅと一息ついた。ここが王宮の中で私にとって唯一落ち着ける場所だった。
(・・・・・何だったのかしら)
私は先ほどのクリスティーナ様を思い浮かべてそう思った。
私が知っている彼女とは随分かけ離れていたからだ。
クリスティーナ様は他の愛妾たちと同じで華やかな容姿をしているものの、どちらかというと控えめな性格で王妃である私に対してあのような物言いをする人物ではなかった。
(あれが彼女の本性なのかしら?だとしたら、相当厄介な相手になりそうね)
クリスティーナ様がスパイだということは既にお兄様によって調べがついている。
しかしこの国の最高権力者が彼女にベタ惚れなのだ。今の陛下に何を言おうとも無駄だろう。
(王弟殿下は陛下を失脚させるためにあえて放っておくと言っていたけれど・・・やはり不安だわ)
そこで私は先ほどクリスティーナ様に言われたことを思い出した。
『王妃様、本当は寂しいって思っていらっしゃるでしょう?』
驚くことに、彼女はたった数回会っただけだというのに私の本質を見抜いていた。
私は王妃教育を受けているため、人前で感情を顔に出すことはほとんどない。それなのに―
(・・・一体、何者なの?)
そこまで考えて私は部屋に備え付けてある机に向かって歩いた。
(一度、整理してみようかしら)
私はそう思って椅子に座り、机の上にノートを広げてペンを手にした。
(まずは一人目の側妃のリリア様・・・)
子爵令嬢であり、陛下が最初に側妃として迎えた女性だ。社交界の華と謳われるほどの美貌を持ち、多くの貴族令息を虜にした美女。そして普段からお飾りの王妃である私を見下している。
彼女は最初こそ国王の夜を独占し続けていたが、それもすぐに終わりを迎えた。
(その次に迎えられたのが二人目の側妃のアンナ様・・・)
アンナ様は伯爵家の令嬢で側妃たちの中だとマナーや礼儀作法はまだマシな方だ。リリア様とは違って私に対しても礼儀正しく接していた。まぁそれも最初だけだったが。
彼女は王の寵愛を得たことで次第に傲慢な人になっていった。アンナ様の実家は伯爵家ではあるが、それほど裕福ではない。だから望む物は何でも手に入る王宮での暮らしを経験して王の愛があれば何でも出来ると思うようになってしまったようだ。それからアンナ様はリリア様と一緒に私を馬鹿にする発言をするようになった。自分は国王から愛されているのだと。
(・・・だけど、それもまたすぐ終わってしまったのよね。アンナ様の次に迎えられたのが伯爵家のローズ様・・・)
ローズ様はアンナ様と同じく伯爵家の令嬢ではあるが、彼女もまたマナーが壊滅的な人間だった。ローズ様は伯爵令嬢ではあったが、正妻の子では無く愛人から生まれた子供。つまり妾腹の子だった。側妃として王宮に上がる数年前までは平民として市井で暮らしていたというのだから、それも仕方がないのかもしれない。
ローズ様はとにかく散財が激しかった。いつもドレスや宝石を買い漁り、これでもかというほど着飾っている。どうやら平民だった頃、彼女はかなり貧しい生活をしていたらしく、何が何でも今の生活を手放したくないようだ。
(だけど人生はそう上手くいかないものよ・・・彼女が陛下の愛を独占していたのもまた一時の話だった・・・)
次に陛下の目に留まったのは男爵令嬢のリズ様だった。
リズ様は側妃になれない身分だったので、必然的に愛妾となった。
それからも陛下は数多くの女性と浮名を流し、男爵家のイブリン様を二番目の愛妾にした。
そして・・・
(三番目の愛妾であり、陛下が愛した六人目の女性・・・クリスティーナ)
私は側妃や愛妾たちの中で彼女が最も恐ろしかった。
他の側妃や愛妾たちはただ単に私を見下しているだけだが、クリスティーナ様には何か得体のしれないものを感じた。それに加えて頭も良さそうだ。敵に回れば相当厄介な相手になりそうである。
「・・・」
私はそこでハァと溜息をついて机に突っ伏した。
(ハァ・・・何だか怖いわ・・・またお兄様や王弟殿下が王宮に来てくれないかな・・・)
気付けば私はそんなことばかり考えるようになっていた。
部屋に着いて私はふぅと一息ついた。ここが王宮の中で私にとって唯一落ち着ける場所だった。
(・・・・・何だったのかしら)
私は先ほどのクリスティーナ様を思い浮かべてそう思った。
私が知っている彼女とは随分かけ離れていたからだ。
クリスティーナ様は他の愛妾たちと同じで華やかな容姿をしているものの、どちらかというと控えめな性格で王妃である私に対してあのような物言いをする人物ではなかった。
(あれが彼女の本性なのかしら?だとしたら、相当厄介な相手になりそうね)
クリスティーナ様がスパイだということは既にお兄様によって調べがついている。
しかしこの国の最高権力者が彼女にベタ惚れなのだ。今の陛下に何を言おうとも無駄だろう。
(王弟殿下は陛下を失脚させるためにあえて放っておくと言っていたけれど・・・やはり不安だわ)
そこで私は先ほどクリスティーナ様に言われたことを思い出した。
『王妃様、本当は寂しいって思っていらっしゃるでしょう?』
驚くことに、彼女はたった数回会っただけだというのに私の本質を見抜いていた。
私は王妃教育を受けているため、人前で感情を顔に出すことはほとんどない。それなのに―
(・・・一体、何者なの?)
そこまで考えて私は部屋に備え付けてある机に向かって歩いた。
(一度、整理してみようかしら)
私はそう思って椅子に座り、机の上にノートを広げてペンを手にした。
(まずは一人目の側妃のリリア様・・・)
子爵令嬢であり、陛下が最初に側妃として迎えた女性だ。社交界の華と謳われるほどの美貌を持ち、多くの貴族令息を虜にした美女。そして普段からお飾りの王妃である私を見下している。
彼女は最初こそ国王の夜を独占し続けていたが、それもすぐに終わりを迎えた。
(その次に迎えられたのが二人目の側妃のアンナ様・・・)
アンナ様は伯爵家の令嬢で側妃たちの中だとマナーや礼儀作法はまだマシな方だ。リリア様とは違って私に対しても礼儀正しく接していた。まぁそれも最初だけだったが。
彼女は王の寵愛を得たことで次第に傲慢な人になっていった。アンナ様の実家は伯爵家ではあるが、それほど裕福ではない。だから望む物は何でも手に入る王宮での暮らしを経験して王の愛があれば何でも出来ると思うようになってしまったようだ。それからアンナ様はリリア様と一緒に私を馬鹿にする発言をするようになった。自分は国王から愛されているのだと。
(・・・だけど、それもまたすぐ終わってしまったのよね。アンナ様の次に迎えられたのが伯爵家のローズ様・・・)
ローズ様はアンナ様と同じく伯爵家の令嬢ではあるが、彼女もまたマナーが壊滅的な人間だった。ローズ様は伯爵令嬢ではあったが、正妻の子では無く愛人から生まれた子供。つまり妾腹の子だった。側妃として王宮に上がる数年前までは平民として市井で暮らしていたというのだから、それも仕方がないのかもしれない。
ローズ様はとにかく散財が激しかった。いつもドレスや宝石を買い漁り、これでもかというほど着飾っている。どうやら平民だった頃、彼女はかなり貧しい生活をしていたらしく、何が何でも今の生活を手放したくないようだ。
(だけど人生はそう上手くいかないものよ・・・彼女が陛下の愛を独占していたのもまた一時の話だった・・・)
次に陛下の目に留まったのは男爵令嬢のリズ様だった。
リズ様は側妃になれない身分だったので、必然的に愛妾となった。
それからも陛下は数多くの女性と浮名を流し、男爵家のイブリン様を二番目の愛妾にした。
そして・・・
(三番目の愛妾であり、陛下が愛した六人目の女性・・・クリスティーナ)
私は側妃や愛妾たちの中で彼女が最も恐ろしかった。
他の側妃や愛妾たちはただ単に私を見下しているだけだが、クリスティーナ様には何か得体のしれないものを感じた。それに加えて頭も良さそうだ。敵に回れば相当厄介な相手になりそうである。
「・・・」
私はそこでハァと溜息をついて机に突っ伏した。
(ハァ・・・何だか怖いわ・・・またお兄様や王弟殿下が王宮に来てくれないかな・・・)
気付けば私はそんなことばかり考えるようになっていた。
55
あなたにおすすめの小説
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。
ところが新婚初夜、ダミアンは言った。
「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」
そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。
しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。
心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。
初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。
そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは─────
(※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる