陛下、あなたが寵愛しているその女はどうやら敵国のスパイのようです。

ましゅぺちーの

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来訪者

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(あれ・・・お兄様はともかく、何で王弟殿下のことまで考えてたんだろう・・・)


机に突っ伏した私はふとそんなことを思った。


不思議だった。何故王弟殿下に会いたいと思ったのか自分でもよく分からない。


彼が気を使わなくてもいい幼馴染だからだろうか。しかしそれにしては何だか変な気持ちだ。王弟殿下をどこか恋しいと思っている自分がいる。


正直、彼に好きだったと言われたときはかなり驚いた。王弟殿下は美しい容姿をしているうえにとても優秀な方で令嬢たちからの人気は絶大だ。そんな彼が何故ずっと結婚していないのだろうと思っていたが、もしかしたら―


(私の・・・ことが・・・)


「!」


私はそこでハッとなって首を横に振った。


(・・・クリスティーナ様のことがあって心が不安定なんだわ)


きっとそうに違いない、と私はそう結論付けて一旦考えるのをやめた。






「・・・」


それから私はしばらくの間椅子に座ったままじっとしていた。


もう既に王妃としての仕事は終わっているため、今は自由時間である。


本当なら、外に出て散歩でもしたいが側妃や愛妾に会うのは御免だ。遭遇したら間違いなく嫌味を言われるだろう。


(お飾りの王妃って言われること自体は別に良いけれど・・・あの方たちの相手をするとどうも疲れるのよね・・・)


侍女たちから陰口をされることにはもう慣れた。面と向かって嫌味を言われるのも別に良い。しかし彼女たちと話すのだけはどうしても嫌だった。


(誰かが隣にいてくれるならいいけれど・・・私はこの王宮で一人ぼっちだから・・・)


そんなことを考えていたそのとき、突然部屋の扉がノックされた。


―コンコン


「陛下、失礼致します」


そう言って部屋に入ってきたのは一人の侍女だった。


「どうかしたの?」


私の問いに、侍女は淡々と答えた。


「お客様がいらっしゃっています」


「お客様?一体誰かしら?」


今日はそんな予定など無いのに、一体誰なのだろうか。


(先触れも無く来るだなんて・・・お兄様かしら?)


そうは思ったものの、次に侍女の口から出てきた言葉に私は驚いた。




「―アルバート王弟殿下です」


「・・・・・・・・え?」


一瞬聞き間違いかと思った。


(王弟殿下が・・・私に会いに・・・?)


彼の名前を聞いた途端、胸が少しだけ高鳴った。もちろんこのときの私がそれに気付くことは無かったが。


「ほ、本当に王弟殿下が来ているの?」


「はい、アルバート王弟殿下が王妃陛下に会いにいらっしゃっています」


どうやら聞き間違いでは無かったようだ。


王弟殿下に会いたいという私の願いを神が叶えてくれたのだろうか。何にせよ嬉しかった。


「・・・すぐに行くわ。王弟殿下はどちらへ?」


「外で陛下をお待ちになっております」


王弟殿下が私に会いに来ていると聞いて居ても立ってもいられなくなった私はすぐに部屋から出た。


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