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37 運命の相手
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月日は流れ、第二王子殿下とビアンカ様の結婚式が行われる日となった。
私たちを含む国民全員が待ち望んでいた日である。
(やっとこの日が来たのね……)
あれから王子殿下は即位し、国王陛下となった。
彼の父親……前国王はあの事件からすぐに王位を殿下に譲り、余生を南の離宮で過ごすことを決めたらしい。
長い間誰にも使われておらず、人が暮らしているとは思えないような古びた宮殿に住むことを自ら選ぶだなんて。
もしかすると、彼なりの前王妃に対する贖罪なのかもしれない。
そして、第二王子殿下をそれを止めなかった。
最後の最後に父親の意思を尊重したということだろう。
彼にとって決して良い父親とは言えなかったが、それでも唯一残った肉親だった。
完全に情が無くなったわけではないようだ。
そして時は過ぎ、今日はこの王国に新たな王妃が誕生する日である。
結婚式の会場である大聖堂の奥の扉から、一人の新婦が姿を現わした。
「王妃陛下が来ましたわ!」
「まぁ、何て美しいのかしら!」
真っ白なウエディングドレスを身に纏った彼女はこの世のものとは思えないほどに美しかった。
隣にいる陛下と目を合わせて微笑み合うその姿に、目頭が熱くなる。
「シェリル様、私何だか泣いてしまいそうです」
「私もよ。ビアンカ様が幸せそうで本当に良かったわ」
ゆっくりとバージンロードを歩き、大聖堂に参列した大勢の貴族の前で二人は口付けを交わした。
唇を離して目を合わせた二人は幸せそうに笑い合った。
いつ見てもお似合いな二人だ。
「国王陛下!」
「王妃様!」
歓喜の渦に包まれる国民たちに、二人は軽く手を振った。
新しく王国に君臨した若き王と王妃は、国民全員からの祝福を受け、結ばれた。
(二人の後ろ姿がとても頼もしいわ)
陛下の広い背中に寄り添うビアンカ様の姿。
虐げられてきた少女がようやく愛する人との幸せを掴んだ。
彼女にとっても私たちにとっても、これほど幸福なことはないと感じた一日だった。
***
式が終わり、私たち四人は大聖堂の外で話をしていた。
「あんなにも幸せそうな王妃陛下を見ていると……私たちも結婚したくなってくるわね」
「そうですわね」
私を含む四人は既に夫との離婚を成立させ、独り身である。
今は全員実家で穏やかな暮らしを送っているが、いつかはビアンカ様のように幸せな結婚をしたいとも思う。
しかし、ルーナの言葉を聞いたシルビア様が不安げに言った。
「私は少し不安です……良いお相手に巡り会えるでしょうか」
「どんな人だろうと元夫たちよりかはマシだと思うけれどね」
シルビア様が苦笑いした。
「私はもうしばらく恋愛はいいわ……今は少しだけ休みたい……」
「そんなこと言って、運命の出会いはいつ訪れるか分からないものよ?」
「運命だなんて……」
そんなものあるわけがない――そう言いかけたとき、ふいに後ろから声をかけられた。
――「すみません、落としましたよ」
「……?」
振り返ると、そこにいたのは一人の貴公子だった。
歳は私と同じくらいだろうか、ハンカチを手に持って微笑んでいる。
「あ、ありがとうございます……」
ハンカチを受け取ろうとする手が軽く触れ合った。
「ご、ごめんなさい……」
「いえ、お気になさらないでください」
彼はそう言ってクスリと笑った。
(何て綺麗な人……)
男性に笑いかけられたことなんて久しぶりで、胸が高鳴る。
こんな気持ちは久々だ。
「ほら、言った傍から。ホントチョロいんだから」
呆れたようなルーナたちの笑い声が聞こえてくる。
しかしそんなこと気にする暇など無く、私はただただ目の前にいる貴公子から目が離せないでいた。
――――――――――――――――――――
ここまで読んでくださってありがとうございました!
私たちを含む国民全員が待ち望んでいた日である。
(やっとこの日が来たのね……)
あれから王子殿下は即位し、国王陛下となった。
彼の父親……前国王はあの事件からすぐに王位を殿下に譲り、余生を南の離宮で過ごすことを決めたらしい。
長い間誰にも使われておらず、人が暮らしているとは思えないような古びた宮殿に住むことを自ら選ぶだなんて。
もしかすると、彼なりの前王妃に対する贖罪なのかもしれない。
そして、第二王子殿下をそれを止めなかった。
最後の最後に父親の意思を尊重したということだろう。
彼にとって決して良い父親とは言えなかったが、それでも唯一残った肉親だった。
完全に情が無くなったわけではないようだ。
そして時は過ぎ、今日はこの王国に新たな王妃が誕生する日である。
結婚式の会場である大聖堂の奥の扉から、一人の新婦が姿を現わした。
「王妃陛下が来ましたわ!」
「まぁ、何て美しいのかしら!」
真っ白なウエディングドレスを身に纏った彼女はこの世のものとは思えないほどに美しかった。
隣にいる陛下と目を合わせて微笑み合うその姿に、目頭が熱くなる。
「シェリル様、私何だか泣いてしまいそうです」
「私もよ。ビアンカ様が幸せそうで本当に良かったわ」
ゆっくりとバージンロードを歩き、大聖堂に参列した大勢の貴族の前で二人は口付けを交わした。
唇を離して目を合わせた二人は幸せそうに笑い合った。
いつ見てもお似合いな二人だ。
「国王陛下!」
「王妃様!」
歓喜の渦に包まれる国民たちに、二人は軽く手を振った。
新しく王国に君臨した若き王と王妃は、国民全員からの祝福を受け、結ばれた。
(二人の後ろ姿がとても頼もしいわ)
陛下の広い背中に寄り添うビアンカ様の姿。
虐げられてきた少女がようやく愛する人との幸せを掴んだ。
彼女にとっても私たちにとっても、これほど幸福なことはないと感じた一日だった。
***
式が終わり、私たち四人は大聖堂の外で話をしていた。
「あんなにも幸せそうな王妃陛下を見ていると……私たちも結婚したくなってくるわね」
「そうですわね」
私を含む四人は既に夫との離婚を成立させ、独り身である。
今は全員実家で穏やかな暮らしを送っているが、いつかはビアンカ様のように幸せな結婚をしたいとも思う。
しかし、ルーナの言葉を聞いたシルビア様が不安げに言った。
「私は少し不安です……良いお相手に巡り会えるでしょうか」
「どんな人だろうと元夫たちよりかはマシだと思うけれどね」
シルビア様が苦笑いした。
「私はもうしばらく恋愛はいいわ……今は少しだけ休みたい……」
「そんなこと言って、運命の出会いはいつ訪れるか分からないものよ?」
「運命だなんて……」
そんなものあるわけがない――そう言いかけたとき、ふいに後ろから声をかけられた。
――「すみません、落としましたよ」
「……?」
振り返ると、そこにいたのは一人の貴公子だった。
歳は私と同じくらいだろうか、ハンカチを手に持って微笑んでいる。
「あ、ありがとうございます……」
ハンカチを受け取ろうとする手が軽く触れ合った。
「ご、ごめんなさい……」
「いえ、お気になさらないでください」
彼はそう言ってクスリと笑った。
(何て綺麗な人……)
男性に笑いかけられたことなんて久しぶりで、胸が高鳴る。
こんな気持ちは久々だ。
「ほら、言った傍から。ホントチョロいんだから」
呆れたようなルーナたちの笑い声が聞こえてくる。
しかしそんなこと気にする暇など無く、私はただただ目の前にいる貴公子から目が離せないでいた。
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ここまで読んでくださってありがとうございました!
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