33 / 127
一章
両親の真実
しおりを挟む
「今日は来てくださり、本当にありがとうございました。たくさんお話出来て嬉しかったですわ」
「こちらこそ、美味しいお菓子まで用意してくださってありがとうございました」
「また来てやってもいい」
しばらくしてマリアンヌ様とラルフ様とのお茶会が終わり、二人が侯爵邸へ帰る時間となった。
「またご招待させていただきますわ」
「まぁ、とっても嬉しいです!」
それから私はマリアンヌ様とラルフ様を帰りの馬車まで送り届け、見送った。
マリアンヌ様が一足先に馬車に乗り込んだ後、しばらくじっと黙りこんでいたラルフ様が帰り際に私に話しかけた。
「セシリア嬢」
「……?どうかなさったのですか?」
私と向き合ったラルフ様の顔は、珍しく真剣だった。
彼は真摯な瞳で私を見つめて口を開いた。
「僕は読心術を持っているわけじゃないから君がどんなものを抱えているかは分からない。だけど、これだけは伝えたい。――自分から行動しないと何も変わらない」
「ラルフ様……」
もしかしたらラルフ様は、お茶会の席で私と関わっているうちに私の心の闇に気付いたのかもしれない。
ミリアと同じくらい鋭い人だ。
「どうして、私が悩んでるって分かったんですか?」
「そういうのは目を見ればすぐに分かる」
「そんなに分かりやすかったですか?」
「ああ」
それだけ言うと、ラルフ様もマリアンヌ様に続いて帰りの馬車に乗り込んだ。
私はそんな二人を邸の前で見送った。
「……」
そして二人が去った後、じっと考え込んだ。
(自分から行動しないと何も変わらない、か…………たしかにその通りね)
まさかまだ会って間もないラルフ様に勘付かれてしまうとは。
しかし、ラルフ様の言うことは的を得ていた。
「……変わらないと。自分から動かないと」
そしてその言葉に突き動かされたかのように、私はあることを決断した。
***
公爵邸の中へ戻った私は、使用人たちの姿を探した。
彼らは邸のいたるところにいるため、すぐに見つけることが出来た。
「ねぇ、少し聞きたいことがあるのだけれど……」
「何でも聞いてください、お嬢様!」
「お母様のことについて聞きたいの」
その言葉に、使用人全員が見事に固まった。
「お、奥様についてですか……?」
「どうして急に……」
見るからにオロオロしている。
しかしこんなところで退くつもりはない。
「あなたたちは何か知っているのでしょう?知っていることを全て私に教えてほしいの」
「……」
使用人たちは困ったような顔をした。
話していいのか、話すべきなのかを本気で悩んでいるらしい。
(やっぱりそう簡単には口を開いてくれないかしら……)
そう思って口を開きかけたそのとき、奥からある人物が現れた。
「――私から説明致しましょう、お嬢様」
「……!」
こちらへと歩いて来たのは、お父様の最側近とまで言われている公爵邸の老執事だった。
「話してくれるの?」
「はい、お嬢様には全てを知る権利がありますから」
それを聞いた一人の使用人が割って入った。
「で、ですが……!」
「静かにしなさい。責任は全て私が取るから」
「……」
そこでようやく使用人たちは黙り込んだ。
執事の言葉に納得したようだ。
「……私の部屋へ行きましょう。あそこならお父様が突然帰って来ても大事にはならないでしょうから」
「はい、お嬢様」
私はその場にいた使用人たち全員を自室へと入れた。
それから私は一人ソファに座り、その周りを使用人たちが囲むようにして立った。
少しして老執事が話し始める。
「お嬢様が聞きたいのは旦那様と奥様についてということでよろしいでしょうか?」
「ええ。全て包み隠さず教えてほしいわ」
「分かりました」
老執事は覚悟を決めたかのように口を開いた。
「旦那様と奥様の出会いは……王宮でした」
当時フルール公爵家嫡男だったオスカーは、現国王陛下であり当時王太子だったアルベルトの遊び相手としてよく王宮へ訪れていた。
そこで王太子の婚約者候補として王宮に来ていた公爵令嬢リーナと出会ったのだ。
美しく心優しいリーナにオスカーはすぐに虜になった。
それからオスカーはリーナに猛アタックを開始した。
花やプレゼントを贈り、何度も彼女の生家である公爵邸を訪れては親交を深めていった。
オスカーの猛アタックにリーナの心が動かされるのにそう時間は掛からなかった。
オスカーは当時、令嬢たちの間で絶大な人気を誇っていた。
見目麗しく公爵家の嫡男という地位に加え、文武両道で非常に優秀な男だったからだ。
やがてオスカーはリーナにプロポーズをし、了承の返事を得ることに成功する。
そこからのオスカーの行動は早かった。
すぐに父に伝えに行き、オスカーとリーナは婚約を結んだ。
国王陛下はリーナが王太子の婚約者候補だったことで二人の婚約を渋っていたが、オスカーの父である当時のフルール公爵が国王陛下の旧友だったこともあり結局は認めた。
王妃陛下はリーナを実の娘のように可愛がっておりそのリーナがオスカーを望むならばと許可した。
「それからの旦那様は奥様を婚約者としてそれはそれは大切にされていました。奥様に近寄ろうとする令息を全て牽制したり……懐かしい話です」
「……」
私は空いた口が塞がらなかった。
執事から聞いた話が衝撃的すぎたからだ。
しかも周りにいる使用人たちも全く驚く素振りを見せていない。
みんな知っていたというのか。
私はとてもじゃないが信じられないというのに。
だって、私が知るお父様は……
「お嬢様が驚くのも無理はありません。今までの旦那様からは想像つかない話でしょうから」
「……お父様は、お母様を愛していたの?」
「はい。旦那様と奥様は恋愛結婚で、とても仲の良い夫婦だったのですよ」
そんな……
私はずっとお父様とお母様は政略結婚だと思っていた。
そうでなければお母様の娘である私を長年に渡って放置するはずがない。
「だけど……お父様は私を……」
「……お嬢様」
思わず俯いた私を見て、使用人たちが悲し気な表情を浮かべる。
「……何故、旦那様がああなってしまわれたのかは私たちにもよく分からないのです」
「……え?」
「奥様がお嬢様をお産みになった日、旦那様は急な仕事が入り、公爵邸にはいませんでした。一度は帰ったのですが再び王宮へ向かったようで……王宮から帰ってきた旦那様はまるで別人のようでした。妻子を気にも留めず、奥様についても「そんな女は知らない」の一点張りで」
信じられない。
そんなことが現実世界で本当にありえるのか。
それではまるで、お父様が何らかの魔法にかけられたようではないか。
「奥様のご懐妊を誰よりも喜んでおられたのは旦那様なのに……」
一人の使用人が呟いた。
その言葉を皮切りに、使用人たちが口々に言った。
「その日からでしたよね。公爵邸で奥様の話がタブーになったのって。奥様の話をすると旦那様の機嫌が悪くなるから」
「ええ、どうしてそうなったのかは私たちにも……」
「本当に突然のことだったから……」
「……」
衝撃の事実、とはこのことを言うのだろう。
お父様がお母様を愛していただなんて。
(でもそれならどうして急にお母様への愛は無くなったんだろう……)
「お嬢様、長い間隠していて申し訳ありませんでした」
そこで老執事が頭を下げ、使用人たちもそれに続いた。
「いいのよ。教えてくれてありがとう」
私はそんな彼らにニッコリ微笑んでみせる。
それを見た一人の使用人が私に対して言った。
「お嬢様、私たち使用人は奥様に恩がある者ばかりです。私たちは奥様が残していったセシリアお嬢様に人生を捧げるつもりでここにいるのです」
「私もです!」
「もちろん俺も!」
口々にそう言い始めた彼らを見て、私は少し感動してしまった。
「……ありがとう、みんな」
「こちらこそ、美味しいお菓子まで用意してくださってありがとうございました」
「また来てやってもいい」
しばらくしてマリアンヌ様とラルフ様とのお茶会が終わり、二人が侯爵邸へ帰る時間となった。
「またご招待させていただきますわ」
「まぁ、とっても嬉しいです!」
それから私はマリアンヌ様とラルフ様を帰りの馬車まで送り届け、見送った。
マリアンヌ様が一足先に馬車に乗り込んだ後、しばらくじっと黙りこんでいたラルフ様が帰り際に私に話しかけた。
「セシリア嬢」
「……?どうかなさったのですか?」
私と向き合ったラルフ様の顔は、珍しく真剣だった。
彼は真摯な瞳で私を見つめて口を開いた。
「僕は読心術を持っているわけじゃないから君がどんなものを抱えているかは分からない。だけど、これだけは伝えたい。――自分から行動しないと何も変わらない」
「ラルフ様……」
もしかしたらラルフ様は、お茶会の席で私と関わっているうちに私の心の闇に気付いたのかもしれない。
ミリアと同じくらい鋭い人だ。
「どうして、私が悩んでるって分かったんですか?」
「そういうのは目を見ればすぐに分かる」
「そんなに分かりやすかったですか?」
「ああ」
それだけ言うと、ラルフ様もマリアンヌ様に続いて帰りの馬車に乗り込んだ。
私はそんな二人を邸の前で見送った。
「……」
そして二人が去った後、じっと考え込んだ。
(自分から行動しないと何も変わらない、か…………たしかにその通りね)
まさかまだ会って間もないラルフ様に勘付かれてしまうとは。
しかし、ラルフ様の言うことは的を得ていた。
「……変わらないと。自分から動かないと」
そしてその言葉に突き動かされたかのように、私はあることを決断した。
***
公爵邸の中へ戻った私は、使用人たちの姿を探した。
彼らは邸のいたるところにいるため、すぐに見つけることが出来た。
「ねぇ、少し聞きたいことがあるのだけれど……」
「何でも聞いてください、お嬢様!」
「お母様のことについて聞きたいの」
その言葉に、使用人全員が見事に固まった。
「お、奥様についてですか……?」
「どうして急に……」
見るからにオロオロしている。
しかしこんなところで退くつもりはない。
「あなたたちは何か知っているのでしょう?知っていることを全て私に教えてほしいの」
「……」
使用人たちは困ったような顔をした。
話していいのか、話すべきなのかを本気で悩んでいるらしい。
(やっぱりそう簡単には口を開いてくれないかしら……)
そう思って口を開きかけたそのとき、奥からある人物が現れた。
「――私から説明致しましょう、お嬢様」
「……!」
こちらへと歩いて来たのは、お父様の最側近とまで言われている公爵邸の老執事だった。
「話してくれるの?」
「はい、お嬢様には全てを知る権利がありますから」
それを聞いた一人の使用人が割って入った。
「で、ですが……!」
「静かにしなさい。責任は全て私が取るから」
「……」
そこでようやく使用人たちは黙り込んだ。
執事の言葉に納得したようだ。
「……私の部屋へ行きましょう。あそこならお父様が突然帰って来ても大事にはならないでしょうから」
「はい、お嬢様」
私はその場にいた使用人たち全員を自室へと入れた。
それから私は一人ソファに座り、その周りを使用人たちが囲むようにして立った。
少しして老執事が話し始める。
「お嬢様が聞きたいのは旦那様と奥様についてということでよろしいでしょうか?」
「ええ。全て包み隠さず教えてほしいわ」
「分かりました」
老執事は覚悟を決めたかのように口を開いた。
「旦那様と奥様の出会いは……王宮でした」
当時フルール公爵家嫡男だったオスカーは、現国王陛下であり当時王太子だったアルベルトの遊び相手としてよく王宮へ訪れていた。
そこで王太子の婚約者候補として王宮に来ていた公爵令嬢リーナと出会ったのだ。
美しく心優しいリーナにオスカーはすぐに虜になった。
それからオスカーはリーナに猛アタックを開始した。
花やプレゼントを贈り、何度も彼女の生家である公爵邸を訪れては親交を深めていった。
オスカーの猛アタックにリーナの心が動かされるのにそう時間は掛からなかった。
オスカーは当時、令嬢たちの間で絶大な人気を誇っていた。
見目麗しく公爵家の嫡男という地位に加え、文武両道で非常に優秀な男だったからだ。
やがてオスカーはリーナにプロポーズをし、了承の返事を得ることに成功する。
そこからのオスカーの行動は早かった。
すぐに父に伝えに行き、オスカーとリーナは婚約を結んだ。
国王陛下はリーナが王太子の婚約者候補だったことで二人の婚約を渋っていたが、オスカーの父である当時のフルール公爵が国王陛下の旧友だったこともあり結局は認めた。
王妃陛下はリーナを実の娘のように可愛がっておりそのリーナがオスカーを望むならばと許可した。
「それからの旦那様は奥様を婚約者としてそれはそれは大切にされていました。奥様に近寄ろうとする令息を全て牽制したり……懐かしい話です」
「……」
私は空いた口が塞がらなかった。
執事から聞いた話が衝撃的すぎたからだ。
しかも周りにいる使用人たちも全く驚く素振りを見せていない。
みんな知っていたというのか。
私はとてもじゃないが信じられないというのに。
だって、私が知るお父様は……
「お嬢様が驚くのも無理はありません。今までの旦那様からは想像つかない話でしょうから」
「……お父様は、お母様を愛していたの?」
「はい。旦那様と奥様は恋愛結婚で、とても仲の良い夫婦だったのですよ」
そんな……
私はずっとお父様とお母様は政略結婚だと思っていた。
そうでなければお母様の娘である私を長年に渡って放置するはずがない。
「だけど……お父様は私を……」
「……お嬢様」
思わず俯いた私を見て、使用人たちが悲し気な表情を浮かべる。
「……何故、旦那様がああなってしまわれたのかは私たちにもよく分からないのです」
「……え?」
「奥様がお嬢様をお産みになった日、旦那様は急な仕事が入り、公爵邸にはいませんでした。一度は帰ったのですが再び王宮へ向かったようで……王宮から帰ってきた旦那様はまるで別人のようでした。妻子を気にも留めず、奥様についても「そんな女は知らない」の一点張りで」
信じられない。
そんなことが現実世界で本当にありえるのか。
それではまるで、お父様が何らかの魔法にかけられたようではないか。
「奥様のご懐妊を誰よりも喜んでおられたのは旦那様なのに……」
一人の使用人が呟いた。
その言葉を皮切りに、使用人たちが口々に言った。
「その日からでしたよね。公爵邸で奥様の話がタブーになったのって。奥様の話をすると旦那様の機嫌が悪くなるから」
「ええ、どうしてそうなったのかは私たちにも……」
「本当に突然のことだったから……」
「……」
衝撃の事実、とはこのことを言うのだろう。
お父様がお母様を愛していただなんて。
(でもそれならどうして急にお母様への愛は無くなったんだろう……)
「お嬢様、長い間隠していて申し訳ありませんでした」
そこで老執事が頭を下げ、使用人たちもそれに続いた。
「いいのよ。教えてくれてありがとう」
私はそんな彼らにニッコリ微笑んでみせる。
それを見た一人の使用人が私に対して言った。
「お嬢様、私たち使用人は奥様に恩がある者ばかりです。私たちは奥様が残していったセシリアお嬢様に人生を捧げるつもりでここにいるのです」
「私もです!」
「もちろん俺も!」
口々にそう言い始めた彼らを見て、私は少し感動してしまった。
「……ありがとう、みんな」
551
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私を見ないあなたに大嫌いを告げるまで
木蓮
恋愛
ミリアベルの婚約者カシアスは初恋の令嬢を想い続けている。
彼女を愛しながらも自分も言うことを聞く都合の良い相手として扱うカシアスに心折れたミリアベルは自分を見ない彼に別れを告げた。
「今さらあなたが私をどう思っているかなんて知りたくもない」
婚約者を信じられなかった令嬢と大切な人を失ってやっと現実が見えた令息のお話。
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜
平山和人
恋愛
王国宰相の地位を持つ公爵ルカと結婚して五年。元子爵令嬢のフィリアは、多忙な夫の言葉「君は自由に生きていい」を真に受け、家事に専々と引きこもる生活を卒業し、突如として身一つで冒険者になることを決意する。
レベル1の治癒士として街のギルドに登録し、初めての冒険に胸を躍らせるフィリアだったが、その背後では、妻の「自由」が離婚と誤解したルカが激怒。「私から逃げられると思うな!」と誤解と執着にまみれた激情を露わにし、国政を放り出し、精鋭を率いて妻を連れ戻すための追跡を開始する。
冒険者として順調に(時に波乱万丈に)依頼をこなすフィリアと、彼女が起こした騒動の後始末をしつつ、鬼のような形相で迫るルカ。これは、「自由」を巡る夫婦のすれ違いを描いた、異世界溺愛追跡ファンタジーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる