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一章
国王陛下とのお茶会
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使用人たちに両親のことを聞いたあの日から一ヶ月が経った。
あれから何だか使用人たちとの距離が前よりも縮まったような気がする。
私に対して隠していることが何も無くなったからだろう。
私も彼らが大好きなので、そのことが嬉しくてたまらない。
お父様が何故突然ああなったかは、未だに分からない。
使用人たちも本当に知らないようだったから。
いずれはそのことについても真実を突き止めたいと思ってはいるが、手掛かりが何も無いためかなり先の話になりそうである。
そしてこの日、私はいつものように王宮に来ていた。
目的は殿下に会うため……ではなく、国王陛下だ。
実は国王陛下から「グレイフォードとの近況を聞きたいから一緒にお茶でもしないか」と誘われたのだ。
国王陛下から一人で呼ばれたのは初めてなので、少しだけ緊張している。
陛下と謁見するときはいつだってお父様と一緒だったから。
(でもまぁ、陛下ならきっと悪いようにはしないわ)
国王陛下は前世で唯一優しくしてくれた人だった。
そんな陛下の誘いを断るわけにはいかない。
しかし一つだけ疑問点があった。
(どうしてわざわざ私を王宮に呼んだりしたのかしら?近況を聞くのなら殿下に聞けばいいわよね。わざわざ私に聞く必要があるのだろうか……)
このときの私はそう思っていたが、殿下はきっと王太子教育で忙しいのだろうと結論を出して深くは考えなかった。
「フルール公爵令嬢、よくお越しくださいました」
王宮に訪れた出迎えてくれたのは、陛下の侍従だ。
陛下が即位してからずっと傍にいるらしく、最も信頼を置いている方だと聞く。
「陛下の誘いを断るわけにはいきませんから」
「ハハハ、陛下もフルール公爵令嬢にそう言ってもらえて喜ぶでしょう。早速部屋にご案内いたします」
侍従は穏やかな笑みを浮かべながら、私を陛下のいる部屋へと案内した。
「陛下、フルール公爵令嬢がお越しになりました」
「――入れ」
私が侍従に案内された部屋に入ると、既に陛下が座っていた。
陛下は私を見ると愛娘を見るかのような優しい笑みを浮かべた。
「セシリア、よく来てくれたな」
「国王陛下にご挨拶いたします。フルール公爵家の長女、セシリアです。今回は招待してくださりありがとうございます」
私は丁寧なカーテシーで国王陛下に挨拶をした。
国王陛下はそんな私をじっと見つめ、軽く拍手をしながら口を開いた。
「流石だな。美しいカーテシーだ。未来の王妃にふさわしい」
「恐縮です」
「さぁ、座りなさい。お茶にしよう」
国王陛下は私を向かいの椅子に座らせ、侍女にお茶を注がせた。
先ほど案内してくれた侍従が、椅子に座っている陛下の後ろに控えた。
テーブルの上にはたくさんのお菓子が並んでいた。
驚くことに、そのどもれが私の大好物だった。
(マカロンにチョコチップクッキー……全部私の好物だわ。それにこのお茶も私が好んでいる茶葉のものじゃない)
とてもじゃないが偶然とは思えなかった。
陛下に自分の好きな物について話したことがあっただろうか。
そのことを不思議に思ったものの、今は陛下との会話に集中することにした。
「それで、最近グレイフォードとはどうなのだ?」
お茶を一口飲んだ国王陛下が私に尋ねた。
殿下と婚約破棄しようとしている私は、一瞬返答に悩んだ。
しかし、優しい国王陛下に変な心配はかけたくなかった。
「あ、はい……グレイフォード殿下とは親しくさせていただいております」
私は遠慮がちに言った。
嘘ではない。
前世と比べたら私たちはかなり仲良くなったのだから。
「……そうか」
私の答えに、陛下は何か思うところがあるかのような素振りを見せた。
(グレイフォード殿下の私に対する態度を知ってるから信じてないのかしら……?国王陛下は優しい方だから気にしているのね……)
そう思った私は彼と共に過ごした日々のことを細かく話した。
「殿下は優しい方です。今年の誕生日にプレゼントをくれましたし、王都の素敵な場所へ連れて行ってくださったんです。それに……結婚してからも側妃や愛妾を迎えないって言ってくれました」
今世で経験した彼との思い出の数々。
こうして口にしてみると、前世と明らかに違っているということに気が付いた。
前世ではあれだけ冷たくされていたというのに、大きな変化だ。
しかし、それを聞いた国王陛下の眉がピクリと動いた。
「それは本当か?」
「……え?」
そう口にした国王陛下の目は、今までに見たことがないほど鋭かった。
不愉快極まりない、とでも言っているような顔だった。
(な、何……?)
いつも私に優しい目しか向けないはずの陛下が、激しく非難するかのような目で私を見ていた。
「へ、陛下……?」
「それは本当かと聞いているんだ!」
陛下はドンッと拳をテーブルに振り下ろした。
「キャッ!」
そんな陛下が恐ろしくて、思わず悲鳴を上げてしまった。
国王陛下の前だというのに、無礼にもほどがある。
しかし私の体は、小刻みに震えていた。
陛下が凍てつくような冷たい目で私を見下ろしていたから。
「……」
私が怯えていることに気づいたのか、陛下は一瞬で表情を戻して椅子に座った。
「すまないな、セシリア。少し驚いてしまっただけだ。ほら、アイツはいつもセシリアに冷たかっただろう?」
その顔は普段と変わらず優しかった。
だけど怖かった。
目の前にいるこの人が怖くてたまらなかった。
相変わらず怯えている私を見て、陛下が言った。
「セシリア、今日はもう帰ったほうがいい。公爵家の馬車まで侍従に送らせよう」
「い、いえ大丈夫です!一人で帰れますので!」
私は体の震えを抑えて無理矢理立ち上がった。
「それでは失礼いたします」
それだけ言うと、私は急いで部屋を出た。
部屋から退出した私は、廊下を早歩きで歩いた。
その間もずっと陛下の恐ろしい姿が頭から離れなかった。
(何だったの……?)
陛下のあんな顔は初めて見た。
国王陛下はいつだって私に優しい人だったから。
私に無関心なお父様よりも実の父親に近いほどだった。
「……」
私が何か陛下の気に障るようなことを言ったのだろうか。
しかし、どれだけ考えても心当たりは無い。
(それに……何故かしら?)
――冷たくされるのは慣れているはずなのに、こんなにも震えが止まらないのは何故なのだろうか。
(怖い……嫌……)
――ドンッ!
いつの間にか王宮の廊下を走ってしまっていた私は、角を曲がったところで誰かとぶつかった。
私は後ろへ倒れて軽く尻もちをついた。
「あ、すみませ……」
「……お前、王宮に来ていたのか?」
頭上から聞こえてきたのは、よく知った人物の声だった。
その声に、ゆっくりと顔を上げた。
「殿下……!」
座り込んでしまった私をじっと見下ろしていたのは殿下だった。
何だか彼の姿を見て安心した自分がいる。
「殿下……」
「おい、大丈夫か?」
殿下が倒れた私に手を差し出し、私は驚きながらも彼の手にそっと自分の手を重ねた。
彼の手の温もりが伝わってきた。
そして立ち上がった私の肩を、殿下が優しく掴んだ。
「珍しいな、お前がこんな風に廊下を走るだなんて」
「……」
殿下は笑いを堪えきれないというようにクスッと笑みを溢した。
「いつもの完璧な淑女の姿はどこいったんだ?」
「……」
殿下は茶目っ気のこもった顔で笑った。
その言葉は少なくとも、不注意で王太子にぶつかってしまった私を責めるものではなかった。
こんなにも優しい殿下を見ると、泣きそうになってしまう。
「で、殿下……」
「おい、どうした!」
突然涙目になった私に、殿下が驚いたような顔をした。
無理もない、私は人前では滅多に泣かない子だったから。
困惑したような殿下の声が聞こえてくる。
「殿下ぁ……」
「とりあえず、ちょっとこっち来い!」
焦った殿下は、私の腕を引っ張って歩き出した。
―――――――――――――――――――――――
かなり長くなりそうなので、章を分けようと思います!
あれから何だか使用人たちとの距離が前よりも縮まったような気がする。
私に対して隠していることが何も無くなったからだろう。
私も彼らが大好きなので、そのことが嬉しくてたまらない。
お父様が何故突然ああなったかは、未だに分からない。
使用人たちも本当に知らないようだったから。
いずれはそのことについても真実を突き止めたいと思ってはいるが、手掛かりが何も無いためかなり先の話になりそうである。
そしてこの日、私はいつものように王宮に来ていた。
目的は殿下に会うため……ではなく、国王陛下だ。
実は国王陛下から「グレイフォードとの近況を聞きたいから一緒にお茶でもしないか」と誘われたのだ。
国王陛下から一人で呼ばれたのは初めてなので、少しだけ緊張している。
陛下と謁見するときはいつだってお父様と一緒だったから。
(でもまぁ、陛下ならきっと悪いようにはしないわ)
国王陛下は前世で唯一優しくしてくれた人だった。
そんな陛下の誘いを断るわけにはいかない。
しかし一つだけ疑問点があった。
(どうしてわざわざ私を王宮に呼んだりしたのかしら?近況を聞くのなら殿下に聞けばいいわよね。わざわざ私に聞く必要があるのだろうか……)
このときの私はそう思っていたが、殿下はきっと王太子教育で忙しいのだろうと結論を出して深くは考えなかった。
「フルール公爵令嬢、よくお越しくださいました」
王宮に訪れた出迎えてくれたのは、陛下の侍従だ。
陛下が即位してからずっと傍にいるらしく、最も信頼を置いている方だと聞く。
「陛下の誘いを断るわけにはいきませんから」
「ハハハ、陛下もフルール公爵令嬢にそう言ってもらえて喜ぶでしょう。早速部屋にご案内いたします」
侍従は穏やかな笑みを浮かべながら、私を陛下のいる部屋へと案内した。
「陛下、フルール公爵令嬢がお越しになりました」
「――入れ」
私が侍従に案内された部屋に入ると、既に陛下が座っていた。
陛下は私を見ると愛娘を見るかのような優しい笑みを浮かべた。
「セシリア、よく来てくれたな」
「国王陛下にご挨拶いたします。フルール公爵家の長女、セシリアです。今回は招待してくださりありがとうございます」
私は丁寧なカーテシーで国王陛下に挨拶をした。
国王陛下はそんな私をじっと見つめ、軽く拍手をしながら口を開いた。
「流石だな。美しいカーテシーだ。未来の王妃にふさわしい」
「恐縮です」
「さぁ、座りなさい。お茶にしよう」
国王陛下は私を向かいの椅子に座らせ、侍女にお茶を注がせた。
先ほど案内してくれた侍従が、椅子に座っている陛下の後ろに控えた。
テーブルの上にはたくさんのお菓子が並んでいた。
驚くことに、そのどもれが私の大好物だった。
(マカロンにチョコチップクッキー……全部私の好物だわ。それにこのお茶も私が好んでいる茶葉のものじゃない)
とてもじゃないが偶然とは思えなかった。
陛下に自分の好きな物について話したことがあっただろうか。
そのことを不思議に思ったものの、今は陛下との会話に集中することにした。
「それで、最近グレイフォードとはどうなのだ?」
お茶を一口飲んだ国王陛下が私に尋ねた。
殿下と婚約破棄しようとしている私は、一瞬返答に悩んだ。
しかし、優しい国王陛下に変な心配はかけたくなかった。
「あ、はい……グレイフォード殿下とは親しくさせていただいております」
私は遠慮がちに言った。
嘘ではない。
前世と比べたら私たちはかなり仲良くなったのだから。
「……そうか」
私の答えに、陛下は何か思うところがあるかのような素振りを見せた。
(グレイフォード殿下の私に対する態度を知ってるから信じてないのかしら……?国王陛下は優しい方だから気にしているのね……)
そう思った私は彼と共に過ごした日々のことを細かく話した。
「殿下は優しい方です。今年の誕生日にプレゼントをくれましたし、王都の素敵な場所へ連れて行ってくださったんです。それに……結婚してからも側妃や愛妾を迎えないって言ってくれました」
今世で経験した彼との思い出の数々。
こうして口にしてみると、前世と明らかに違っているということに気が付いた。
前世ではあれだけ冷たくされていたというのに、大きな変化だ。
しかし、それを聞いた国王陛下の眉がピクリと動いた。
「それは本当か?」
「……え?」
そう口にした国王陛下の目は、今までに見たことがないほど鋭かった。
不愉快極まりない、とでも言っているような顔だった。
(な、何……?)
いつも私に優しい目しか向けないはずの陛下が、激しく非難するかのような目で私を見ていた。
「へ、陛下……?」
「それは本当かと聞いているんだ!」
陛下はドンッと拳をテーブルに振り下ろした。
「キャッ!」
そんな陛下が恐ろしくて、思わず悲鳴を上げてしまった。
国王陛下の前だというのに、無礼にもほどがある。
しかし私の体は、小刻みに震えていた。
陛下が凍てつくような冷たい目で私を見下ろしていたから。
「……」
私が怯えていることに気づいたのか、陛下は一瞬で表情を戻して椅子に座った。
「すまないな、セシリア。少し驚いてしまっただけだ。ほら、アイツはいつもセシリアに冷たかっただろう?」
その顔は普段と変わらず優しかった。
だけど怖かった。
目の前にいるこの人が怖くてたまらなかった。
相変わらず怯えている私を見て、陛下が言った。
「セシリア、今日はもう帰ったほうがいい。公爵家の馬車まで侍従に送らせよう」
「い、いえ大丈夫です!一人で帰れますので!」
私は体の震えを抑えて無理矢理立ち上がった。
「それでは失礼いたします」
それだけ言うと、私は急いで部屋を出た。
部屋から退出した私は、廊下を早歩きで歩いた。
その間もずっと陛下の恐ろしい姿が頭から離れなかった。
(何だったの……?)
陛下のあんな顔は初めて見た。
国王陛下はいつだって私に優しい人だったから。
私に無関心なお父様よりも実の父親に近いほどだった。
「……」
私が何か陛下の気に障るようなことを言ったのだろうか。
しかし、どれだけ考えても心当たりは無い。
(それに……何故かしら?)
――冷たくされるのは慣れているはずなのに、こんなにも震えが止まらないのは何故なのだろうか。
(怖い……嫌……)
――ドンッ!
いつの間にか王宮の廊下を走ってしまっていた私は、角を曲がったところで誰かとぶつかった。
私は後ろへ倒れて軽く尻もちをついた。
「あ、すみませ……」
「……お前、王宮に来ていたのか?」
頭上から聞こえてきたのは、よく知った人物の声だった。
その声に、ゆっくりと顔を上げた。
「殿下……!」
座り込んでしまった私をじっと見下ろしていたのは殿下だった。
何だか彼の姿を見て安心した自分がいる。
「殿下……」
「おい、大丈夫か?」
殿下が倒れた私に手を差し出し、私は驚きながらも彼の手にそっと自分の手を重ねた。
彼の手の温もりが伝わってきた。
そして立ち上がった私の肩を、殿下が優しく掴んだ。
「珍しいな、お前がこんな風に廊下を走るだなんて」
「……」
殿下は笑いを堪えきれないというようにクスッと笑みを溢した。
「いつもの完璧な淑女の姿はどこいったんだ?」
「……」
殿下は茶目っ気のこもった顔で笑った。
その言葉は少なくとも、不注意で王太子にぶつかってしまった私を責めるものではなかった。
こんなにも優しい殿下を見ると、泣きそうになってしまう。
「で、殿下……」
「おい、どうした!」
突然涙目になった私に、殿下が驚いたような顔をした。
無理もない、私は人前では滅多に泣かない子だったから。
困惑したような殿下の声が聞こえてくる。
「殿下ぁ……」
「とりあえず、ちょっとこっち来い!」
焦った殿下は、私の腕を引っ張って歩き出した。
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かなり長くなりそうなので、章を分けようと思います!
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