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二章
縁談 王妃エリザベスside
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淡々とそう口にしたお父様は、まるで私の考えを読んでいるかのようにキッパリと告げた。
「分かっているとは思うが、お前に拒否権は無い。これはもう国同士で決められたことだ。覆すことなど出来ない」
「はい……分かっています……お父様……」
私はそう答えるしかなかった。
拒否権が無いのは事実だったから。
「それで……お父様。お相手はどなたなのですか?」
「ああ、オルレリアン王国の王太子だ」
「オルレリアン王国の……王太子殿下……」
オルレリアン王国は我が国の隣にある最近力を付けてきている国だ。
(そうね……一国の王女の相手としては相応しいわ……)
第一王女として何度か王太子殿下の姿を見たことはあったが、高身長で見目麗しい方だったのを覚えている。
しかし、口数は少なく、いつも真顔で立っており、何を考えているのかよく分からない人だった。
(そんな人と良い夫婦になれるんだろうか……)
――もし、マークが私の夫だったら。
「……!」
そんなとんでもないことをたった一瞬でも考えてしまっていた自分を恐ろしく感じた。
マークと結婚するなんて、そんなのはありえない。
だって彼はただの平民で、王宮に勤めているとはいえ私と釣り合う身分の人間では無かった。
愛があれば身分差なんて関係ないとよく言うが、かつて身分違いの結婚をした王女が辿った末路は悲惨なものだった。
王女として何不自由なく育てられた女に、市井での生活は苦痛でしかないのだ。
(私には駆け落ちなんてする勇気は無いわ……愛する人にも生まれた子供にも惨めな暮らしをさせてしまう……)
元よりそんな選択肢はない。
「どうだ?お前に相応しい相手だろう?」
「はい……そうですね……」
そう言った父親の口角が少しだけ上がっているような気がした。
それは娘の幸せを願う父親が浮かべる笑みではないということを、私はよく知っている。
厄介払いが出来て嬉しいのだろう。
お父様は昔から家族よりも国を優先する人だったから。
「オルレリアン王国の王太子はとても優秀な男だと聞いている。お前と歳も近いし……きっと幸せにしてくれるだろう」
「そうですね、お父様」
――幸せにしてくれるだろう。
その幸せ、とは一体何なのだろうか。
夫に愛され、仲睦まじい夫婦になること?
それとも王の子を産み、その子供を次期国王の座に就けること?
(それで私は幸せになれるのかしら……)
幸せとは一体何なのか。
答えは出なかったが、私は深く考えずに父親の執務室を後にした。
「……」
自室までの道のりを歩く足取りはとても重たかった。
こんなにも気分が沈んでいる日は久しぶりかもしれない。
トボトボと廊下を歩いていた私は、そのときふいに前から歩いて来たある人物と目が合った。
「エリザベス」
「……お兄様」
それはこの国の王太子殿下である私の実の兄だった。
「分かっているとは思うが、お前に拒否権は無い。これはもう国同士で決められたことだ。覆すことなど出来ない」
「はい……分かっています……お父様……」
私はそう答えるしかなかった。
拒否権が無いのは事実だったから。
「それで……お父様。お相手はどなたなのですか?」
「ああ、オルレリアン王国の王太子だ」
「オルレリアン王国の……王太子殿下……」
オルレリアン王国は我が国の隣にある最近力を付けてきている国だ。
(そうね……一国の王女の相手としては相応しいわ……)
第一王女として何度か王太子殿下の姿を見たことはあったが、高身長で見目麗しい方だったのを覚えている。
しかし、口数は少なく、いつも真顔で立っており、何を考えているのかよく分からない人だった。
(そんな人と良い夫婦になれるんだろうか……)
――もし、マークが私の夫だったら。
「……!」
そんなとんでもないことをたった一瞬でも考えてしまっていた自分を恐ろしく感じた。
マークと結婚するなんて、そんなのはありえない。
だって彼はただの平民で、王宮に勤めているとはいえ私と釣り合う身分の人間では無かった。
愛があれば身分差なんて関係ないとよく言うが、かつて身分違いの結婚をした王女が辿った末路は悲惨なものだった。
王女として何不自由なく育てられた女に、市井での生活は苦痛でしかないのだ。
(私には駆け落ちなんてする勇気は無いわ……愛する人にも生まれた子供にも惨めな暮らしをさせてしまう……)
元よりそんな選択肢はない。
「どうだ?お前に相応しい相手だろう?」
「はい……そうですね……」
そう言った父親の口角が少しだけ上がっているような気がした。
それは娘の幸せを願う父親が浮かべる笑みではないということを、私はよく知っている。
厄介払いが出来て嬉しいのだろう。
お父様は昔から家族よりも国を優先する人だったから。
「オルレリアン王国の王太子はとても優秀な男だと聞いている。お前と歳も近いし……きっと幸せにしてくれるだろう」
「そうですね、お父様」
――幸せにしてくれるだろう。
その幸せ、とは一体何なのだろうか。
夫に愛され、仲睦まじい夫婦になること?
それとも王の子を産み、その子供を次期国王の座に就けること?
(それで私は幸せになれるのかしら……)
幸せとは一体何なのか。
答えは出なかったが、私は深く考えずに父親の執務室を後にした。
「……」
自室までの道のりを歩く足取りはとても重たかった。
こんなにも気分が沈んでいる日は久しぶりかもしれない。
トボトボと廊下を歩いていた私は、そのときふいに前から歩いて来たある人物と目が合った。
「エリザベス」
「……お兄様」
それはこの国の王太子殿下である私の実の兄だった。
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