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三章
たまたま出会ったのは……
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王宮に登城した私は、そこで予期せぬ人物と遭遇することとなる。
「まぁ、セシリア様ではありませんか!」
「あなたは……マリア・ヘレイス男爵令嬢……?」
目をキラキラ輝かせながらこちらに駆け寄ってくるのは前世で殿下と真実の愛に目覚めたはずのヘレイス男爵令嬢だった。
(何故男爵令嬢がここに……?)
そういえば前世だとこの時期は殿下と男爵令嬢がコソコソと密会をしていたはずだ。
しかし今世の殿下に限ってそれは絶対にありえない。
今の彼は信用に値する人だからそう言い切れる。
「お久しぶりですね、セシリア様!会えるなんて思ってなかったから、とっても嬉しいです!」
「え、ええ……そうね……ところで、マリア様は何故ここに?」
「お父様の仕事の都合で来たんですけど……やっぱり王宮っていつ見ても素敵なところですね!セシリア様はいつでもここに来れるだなんて羨ましいです」
「あら……お父君のお仕事で……」
そういえば殿下は男爵令嬢の父親である男爵と顔見知りのようだった。
そういうことなら王宮にいても不思議ではない。
(でも、どうしてわざわざ私に声をかけてくるのかしら……?)
男爵令嬢の考えがどうも理解出来ない。
近い将来王妃になる私と親しくなりたいという者は多いが、今目の前にいる男爵令嬢からはそのような打算的な考えは見られなかった。
「セシリア様は殿下に会いに来られたのですか?」
「え、えぇ……まぁ、そうね……」
「わぁ、やっぱり!」
私の答えに何故か男爵令嬢は満面の笑みを浮かべた。
「セシリア様と殿下って本当にお似合いですよね!誰から見ても相思相愛だし!仲が良さそうで羨ましいです!」
「え……そう見えるかしら?」
「はい!殿下の婚約者はセシリア様しかいません!」
「え、ええ……」
持ち上げられて悪い気はしない。
むしろそんな無垢な笑顔で言われたら何だか恥ずかしくなってしまう。
(私ってチョロいわね……)
自分でも驚いてしまったほどだ。
何故だか男爵令嬢の褒め言葉には耐性が無いらしい。
赤くなった顔を隠すように顔を背けていると、突然男爵令嬢が私の手をギュッと握った。
「セシリア様、何だか元気が無さそうですね。大丈夫ですか?」
「え、あ……」
ここ最近まともに眠れていなかったからか、どうやら顔色が悪く見えたようだ。
「何かあったら何でも言ってください。だって私たち……その……友達じゃないですか……」
「マリア様……」
「私はセシリア様のお役に立ちたいんです」
「……」
男爵令嬢の真剣な眼差しに、ついつい絆されそうになってしまっている自分がいた。
(もしかしてこの子……本当にいい子なのかしら……)
そんなことを思いながらしばらく彼女と見つめ合っていたとき、突然私たちの間に不機嫌そうな声が割り込んだ。
「おい、何してる」
声のした方を振り返ると、殿下が私と男爵令嬢をじっと見つめていた。
「あ、殿下……」
「王太子殿下……」
殿下はズカズカとこちらに向かって歩いてくると、男爵令嬢がギュッと握りしめていた私の手を取った。
そして、自然と引き寄せて抱きしめた。
(え、ええ!?)
彼に抱き締められたことは何度もあるが、流石に人前では初めてである。
「うわぁ……」
男爵令嬢の呆れ返ったような声が聞こえてくる。
「殿下、相変わらずですね」
「セシリアは俺の婚約者だ。何か問題でも?」
「人前でやるだなんて、セシリア様が可哀相ですよ?」
「そう思ってるのはお前だけだ」
そして何故だかバチバチと火花を散らし始めた。
(ちょ、ちょっと待って……どうしてこの二人が喧嘩しているの――!?)
「まぁ、セシリア様ではありませんか!」
「あなたは……マリア・ヘレイス男爵令嬢……?」
目をキラキラ輝かせながらこちらに駆け寄ってくるのは前世で殿下と真実の愛に目覚めたはずのヘレイス男爵令嬢だった。
(何故男爵令嬢がここに……?)
そういえば前世だとこの時期は殿下と男爵令嬢がコソコソと密会をしていたはずだ。
しかし今世の殿下に限ってそれは絶対にありえない。
今の彼は信用に値する人だからそう言い切れる。
「お久しぶりですね、セシリア様!会えるなんて思ってなかったから、とっても嬉しいです!」
「え、ええ……そうね……ところで、マリア様は何故ここに?」
「お父様の仕事の都合で来たんですけど……やっぱり王宮っていつ見ても素敵なところですね!セシリア様はいつでもここに来れるだなんて羨ましいです」
「あら……お父君のお仕事で……」
そういえば殿下は男爵令嬢の父親である男爵と顔見知りのようだった。
そういうことなら王宮にいても不思議ではない。
(でも、どうしてわざわざ私に声をかけてくるのかしら……?)
男爵令嬢の考えがどうも理解出来ない。
近い将来王妃になる私と親しくなりたいという者は多いが、今目の前にいる男爵令嬢からはそのような打算的な考えは見られなかった。
「セシリア様は殿下に会いに来られたのですか?」
「え、えぇ……まぁ、そうね……」
「わぁ、やっぱり!」
私の答えに何故か男爵令嬢は満面の笑みを浮かべた。
「セシリア様と殿下って本当にお似合いですよね!誰から見ても相思相愛だし!仲が良さそうで羨ましいです!」
「え……そう見えるかしら?」
「はい!殿下の婚約者はセシリア様しかいません!」
「え、ええ……」
持ち上げられて悪い気はしない。
むしろそんな無垢な笑顔で言われたら何だか恥ずかしくなってしまう。
(私ってチョロいわね……)
自分でも驚いてしまったほどだ。
何故だか男爵令嬢の褒め言葉には耐性が無いらしい。
赤くなった顔を隠すように顔を背けていると、突然男爵令嬢が私の手をギュッと握った。
「セシリア様、何だか元気が無さそうですね。大丈夫ですか?」
「え、あ……」
ここ最近まともに眠れていなかったからか、どうやら顔色が悪く見えたようだ。
「何かあったら何でも言ってください。だって私たち……その……友達じゃないですか……」
「マリア様……」
「私はセシリア様のお役に立ちたいんです」
「……」
男爵令嬢の真剣な眼差しに、ついつい絆されそうになってしまっている自分がいた。
(もしかしてこの子……本当にいい子なのかしら……)
そんなことを思いながらしばらく彼女と見つめ合っていたとき、突然私たちの間に不機嫌そうな声が割り込んだ。
「おい、何してる」
声のした方を振り返ると、殿下が私と男爵令嬢をじっと見つめていた。
「あ、殿下……」
「王太子殿下……」
殿下はズカズカとこちらに向かって歩いてくると、男爵令嬢がギュッと握りしめていた私の手を取った。
そして、自然と引き寄せて抱きしめた。
(え、ええ!?)
彼に抱き締められたことは何度もあるが、流石に人前では初めてである。
「うわぁ……」
男爵令嬢の呆れ返ったような声が聞こえてくる。
「殿下、相変わらずですね」
「セシリアは俺の婚約者だ。何か問題でも?」
「人前でやるだなんて、セシリア様が可哀相ですよ?」
「そう思ってるのはお前だけだ」
そして何故だかバチバチと火花を散らし始めた。
(ちょ、ちょっと待って……どうしてこの二人が喧嘩しているの――!?)
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