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三章
希望
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「お嬢様、殿下がいらっしゃっています」
「殿下が……?こんな夜中に一体何の用で……」
夜、いつものように父の看病をしていた私は突然公爵邸を訪問した殿下に驚きを隠せなかった。
彼がここを訪れるのはよくあることだが、こんな夜中に来たことは当然一度も無かったからだ。
「すぐに通してさしあげて」
そう言うと、侍女と入れ違いになるようにして部屋に殿下が入って来た。
何やら深刻そうな顔をしている。
もしかするとあの聖女とお母様の関係について何か分かったのか。
良くないことかもしれないと思うと胸がドキドキするが、目を背けてはいけない。
平然を装った私は殿下に駆け寄って尋ねた。
「殿下、このような時間に突然どうなさったのですか?」
「セシリア、お前に話がある」
「話……?」
「ああ、少し俺と話そう」
それから私たちは部屋にあったソファに隣り合わせで座った。
「聖女について分かったことがある」
「何でしょうか……?」
「――セシリア、お前の母親はおそらく聖女だ」
「……それは本当ですか?」
「ああ、まだ確定したわけではないが……お前の母親が聖女だというのなら父がお前を手に入れるのに躍起になっている理由も説明されるからな」
「……」
ある程度予想が付いていたことではあったものの、いざ直接そうやって言われると驚きを隠しきれない。
(やっぱり私のお母様は聖女だったのね……)
黙り込んだ私を心配した殿下が優しく声を掛けた。
「セシリア、大丈夫か?」
「はい、少し驚いただけです。お父様からも、周囲の人間からも、そんな話は一度も聞いたことが無かったから……」
「公爵夫人は周りに隠していたんだろうな、自分が聖女であることを」
「あ……」
そこで私は、昔王妃教育で聞いた聖女についての話を思い出した。
「聖女だということが判明すれば間違いなく王族と結婚させられてしまうから……」
「その通りだ」
それならお父様はお母様が聖女であることを知っていたんだろうか。
それに何故彼が愛する人の存在を忘れてしまったのか……。
聞きたいことは山ほどあるが、生憎本人は話が出来る状態ではなかった。
母が聖女であったことも驚きの事実だが、今は父の治療が最優先だろう。
何とかして父を目覚めさせなければ、真実が永遠にうやむやになってしまうかもしれない。
父を治療する方法は無いか、私は必死で考えた。
そして、あることを思い付いた。
(お母様が亡くなった今、陛下が私を狙っているということは……私が聖女である可能性も少なからず存在するということよね……?)
「殿下、たしか聖女には治癒能力があるのですよね?」
「……?あぁ、そうだな。どんなに大きな怪我でもその力を使えば治せると聞く。本当かどうかは分からないがな」
「なら、私が聖女としての能力を開花させればお父様の病気も治るのでは……!?」
「……!?な、何を……!」
殿下が正気かというような目で私を見た。
今能力を開花させるのは危険だということは私も知っている。
しかし、それ以上に父がこのまま永遠に目覚めないことのほうがもっと恐ろしかった。
「ダリウス様が言っていました……今お父様はやっと生きている状態だと……ハッキリ言って、回復する見込みは今のところありません」
「……」
「私はお父様に愛された記憶なんて無い。あの人は決して良い父親とは言えませんでした。だからこそ、このまま死なれると困るのです」
「……」
「隠された真実があるのなら、それを知りたい。どうかお願いします、殿下」
「……セシリア」
私の真剣な眼差しに、彼は折れたようだった。
「……分かった、だが絶対に聖女であることを周囲に気付かれてはならない。お前の身が一番大切だからな。あと何かあったらすぐに俺に言え」
「殿下……!ありがとうございます……!」
お父様が倒れてから数ヶ月、ようやく一筋の光が見え始めたのだった。
「殿下が……?こんな夜中に一体何の用で……」
夜、いつものように父の看病をしていた私は突然公爵邸を訪問した殿下に驚きを隠せなかった。
彼がここを訪れるのはよくあることだが、こんな夜中に来たことは当然一度も無かったからだ。
「すぐに通してさしあげて」
そう言うと、侍女と入れ違いになるようにして部屋に殿下が入って来た。
何やら深刻そうな顔をしている。
もしかするとあの聖女とお母様の関係について何か分かったのか。
良くないことかもしれないと思うと胸がドキドキするが、目を背けてはいけない。
平然を装った私は殿下に駆け寄って尋ねた。
「殿下、このような時間に突然どうなさったのですか?」
「セシリア、お前に話がある」
「話……?」
「ああ、少し俺と話そう」
それから私たちは部屋にあったソファに隣り合わせで座った。
「聖女について分かったことがある」
「何でしょうか……?」
「――セシリア、お前の母親はおそらく聖女だ」
「……それは本当ですか?」
「ああ、まだ確定したわけではないが……お前の母親が聖女だというのなら父がお前を手に入れるのに躍起になっている理由も説明されるからな」
「……」
ある程度予想が付いていたことではあったものの、いざ直接そうやって言われると驚きを隠しきれない。
(やっぱり私のお母様は聖女だったのね……)
黙り込んだ私を心配した殿下が優しく声を掛けた。
「セシリア、大丈夫か?」
「はい、少し驚いただけです。お父様からも、周囲の人間からも、そんな話は一度も聞いたことが無かったから……」
「公爵夫人は周りに隠していたんだろうな、自分が聖女であることを」
「あ……」
そこで私は、昔王妃教育で聞いた聖女についての話を思い出した。
「聖女だということが判明すれば間違いなく王族と結婚させられてしまうから……」
「その通りだ」
それならお父様はお母様が聖女であることを知っていたんだろうか。
それに何故彼が愛する人の存在を忘れてしまったのか……。
聞きたいことは山ほどあるが、生憎本人は話が出来る状態ではなかった。
母が聖女であったことも驚きの事実だが、今は父の治療が最優先だろう。
何とかして父を目覚めさせなければ、真実が永遠にうやむやになってしまうかもしれない。
父を治療する方法は無いか、私は必死で考えた。
そして、あることを思い付いた。
(お母様が亡くなった今、陛下が私を狙っているということは……私が聖女である可能性も少なからず存在するということよね……?)
「殿下、たしか聖女には治癒能力があるのですよね?」
「……?あぁ、そうだな。どんなに大きな怪我でもその力を使えば治せると聞く。本当かどうかは分からないがな」
「なら、私が聖女としての能力を開花させればお父様の病気も治るのでは……!?」
「……!?な、何を……!」
殿下が正気かというような目で私を見た。
今能力を開花させるのは危険だということは私も知っている。
しかし、それ以上に父がこのまま永遠に目覚めないことのほうがもっと恐ろしかった。
「ダリウス様が言っていました……今お父様はやっと生きている状態だと……ハッキリ言って、回復する見込みは今のところありません」
「……」
「私はお父様に愛された記憶なんて無い。あの人は決して良い父親とは言えませんでした。だからこそ、このまま死なれると困るのです」
「……」
「隠された真実があるのなら、それを知りたい。どうかお願いします、殿下」
「……セシリア」
私の真剣な眼差しに、彼は折れたようだった。
「……分かった、だが絶対に聖女であることを周囲に気付かれてはならない。お前の身が一番大切だからな。あと何かあったらすぐに俺に言え」
「殿下……!ありがとうございます……!」
お父様が倒れてから数ヶ月、ようやく一筋の光が見え始めたのだった。
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