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三章
殿下の提案
「早く良くなってください……お父様」
「旦那様……」
あれから数日が経ち、私は変わらず父の看病を率先して行っていた。
普通は使用人に任せるものだが、お父様が死ぬかもしれないという恐怖心からかじっとしていられなかった。
実際、父はいつ亡くなってもおかしくない状態だったから。
(やっと希望の光は見えたけれど……でもどうすれば聖女の力が目覚めるのかしら)
殿下の話によると、聖女の能力は窮地にこそ開花するらしい。
殿下は私に聖女のことを詳しく教えてくれた。
古くから王族にのみ言い伝えられている聖女の特徴は金髪に緑色の瞳。
つまり私が聖女であることはほとんど確定しているようなものだということだ。
(まぁ、そうじゃなければ陛下が私を執拗に狙うわけないものね)
陛下の執着心も恐ろしいが、今はそれよりもお父様の方が心配だ。
「――今日も睡眠時間を削って看病しているのか」
「……殿下?」
突然聞こえた声に後ろを振り返ると、見慣れた秀麗な顔が目に入った。
王太子殿下だ。
いつの間にかさっきまで後ろに控えていた侍女と入れ替わるようにしてそこに立っていた。
部屋に入ってきた彼は目元にクマのある私を心配そうな顔で見ていた。
「殿下、いらっしゃっていたんですね……」
「ああ、使用人たちからお前が寝ずに父親の看病をしていると聞いたからな。居ても経っても居られなくなった」
「……」
「セシリア、公爵が心配なのは分かるが、このままではお前が倒れてしまうぞ」
彼は私の頬をそっと両手で包み込んだ。
私はそんなに疲れた顔をしているだろうか。
「ありがとうございます、殿下……私は平気ですから……」
「酷く疲れきった顔をしている、やはり一度休んだ方がいい」
「ですが……」
「今ダリウスがこっちに向かっている。俺たちがいても診察の邪魔になるだけだ」
「……」
(ダリウス様が……)
殿下の言う通りだ。
何の医学も無い私が父の傍にいるよりもダリウス様に任せておいた方が安全だろう。
「はい、殿下……」
私は殿下に肩を支えられながら部屋を出た。
それから私たちは自室のソファに二人隣り合わせで座った。
すると殿下は、私の頭を優しく包み込んで自身の膝の上に寝かせた。
「で、殿下……?」
「疲れただろう、今はこうしているといい」
「……」
私は殿下の膝の上に頭を置いて目をそっと閉じた。
こうしているととても落ち着く。
(殿下の言う通り、かなり疲れていたみたいね……)
そのまま眠りに就こうとすると、頭上から声がした。
「セシリア、一つ提案があるんだが……」
目を開けると、殿下がじっとこちらを見下ろしていた。
「……何でしょうか?」
「近々二人で旅行でもしないか」
「旅行……?」
私がきょとんと首をかしげると、彼は照れ臭そうに言った。
「その……久しぶりに休みが取れたんだ。せっかくだからお前と過ごしたいと思って……」
「……」
(お父様のことが心配だけれど……少しは休むべきよね。ダリウス様に任せていれば安心だろうし……)
せっかくの殿下の誘いを断るわけにはいかない。
それに私も一度くらいは彼と遠出してみたかったし。
「はい、いいですよ」
「ほ、本当か!」
承諾の返事をすると、殿下はホッとしたように笑った。
そんな彼の愛らしい表情に胸がときめいたのも束の間、急激に睡魔が襲ってきた。
(何だか眠いわ……)
「セシリア……」
「殿下……」
もう少し彼の顔を見ていたかったが、眠気に勝てなかった私はゆっくりと目を閉じた。
薄れゆく意識の中、聞き慣れた声が耳に入る。
「俺がお前を……絶対に――」
殿下が何か口にしたような気がしたが、何を言っているのかまでは分からなかった。
「旦那様……」
あれから数日が経ち、私は変わらず父の看病を率先して行っていた。
普通は使用人に任せるものだが、お父様が死ぬかもしれないという恐怖心からかじっとしていられなかった。
実際、父はいつ亡くなってもおかしくない状態だったから。
(やっと希望の光は見えたけれど……でもどうすれば聖女の力が目覚めるのかしら)
殿下の話によると、聖女の能力は窮地にこそ開花するらしい。
殿下は私に聖女のことを詳しく教えてくれた。
古くから王族にのみ言い伝えられている聖女の特徴は金髪に緑色の瞳。
つまり私が聖女であることはほとんど確定しているようなものだということだ。
(まぁ、そうじゃなければ陛下が私を執拗に狙うわけないものね)
陛下の執着心も恐ろしいが、今はそれよりもお父様の方が心配だ。
「――今日も睡眠時間を削って看病しているのか」
「……殿下?」
突然聞こえた声に後ろを振り返ると、見慣れた秀麗な顔が目に入った。
王太子殿下だ。
いつの間にかさっきまで後ろに控えていた侍女と入れ替わるようにしてそこに立っていた。
部屋に入ってきた彼は目元にクマのある私を心配そうな顔で見ていた。
「殿下、いらっしゃっていたんですね……」
「ああ、使用人たちからお前が寝ずに父親の看病をしていると聞いたからな。居ても経っても居られなくなった」
「……」
「セシリア、公爵が心配なのは分かるが、このままではお前が倒れてしまうぞ」
彼は私の頬をそっと両手で包み込んだ。
私はそんなに疲れた顔をしているだろうか。
「ありがとうございます、殿下……私は平気ですから……」
「酷く疲れきった顔をしている、やはり一度休んだ方がいい」
「ですが……」
「今ダリウスがこっちに向かっている。俺たちがいても診察の邪魔になるだけだ」
「……」
(ダリウス様が……)
殿下の言う通りだ。
何の医学も無い私が父の傍にいるよりもダリウス様に任せておいた方が安全だろう。
「はい、殿下……」
私は殿下に肩を支えられながら部屋を出た。
それから私たちは自室のソファに二人隣り合わせで座った。
すると殿下は、私の頭を優しく包み込んで自身の膝の上に寝かせた。
「で、殿下……?」
「疲れただろう、今はこうしているといい」
「……」
私は殿下の膝の上に頭を置いて目をそっと閉じた。
こうしているととても落ち着く。
(殿下の言う通り、かなり疲れていたみたいね……)
そのまま眠りに就こうとすると、頭上から声がした。
「セシリア、一つ提案があるんだが……」
目を開けると、殿下がじっとこちらを見下ろしていた。
「……何でしょうか?」
「近々二人で旅行でもしないか」
「旅行……?」
私がきょとんと首をかしげると、彼は照れ臭そうに言った。
「その……久しぶりに休みが取れたんだ。せっかくだからお前と過ごしたいと思って……」
「……」
(お父様のことが心配だけれど……少しは休むべきよね。ダリウス様に任せていれば安心だろうし……)
せっかくの殿下の誘いを断るわけにはいかない。
それに私も一度くらいは彼と遠出してみたかったし。
「はい、いいですよ」
「ほ、本当か!」
承諾の返事をすると、殿下はホッとしたように笑った。
そんな彼の愛らしい表情に胸がときめいたのも束の間、急激に睡魔が襲ってきた。
(何だか眠いわ……)
「セシリア……」
「殿下……」
もう少し彼の顔を見ていたかったが、眠気に勝てなかった私はゆっくりと目を閉じた。
薄れゆく意識の中、聞き慣れた声が耳に入る。
「俺がお前を……絶対に――」
殿下が何か口にしたような気がしたが、何を言っているのかまでは分からなかった。
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