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三章
聖女の力
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私は一人馬車の中に取り残された。
殿下や騎士たちと違って剣を振るうことも出来ない私にはこうしているほかないのだ。
(殿下……どうか皆無事でいて……!)
外から激しく剣がぶつかり合う音が聞こえてくる。
殿下は誰よりも強いからきっと死ぬことは無いと信じているが、何故か嫌な予感が拭えなかった。
(今すぐにでも彼らの様子を見に行きたいけれど、きっと私が出ても足手まといになるだけ……)
そんなことを考えながら馬車の中でじっとしていると、再び頭の中に映像が流れてきた。
殿下や騎士たちがローブを着た暗殺者たちと戦っている様子だった。
「殿下……!」
足元にはいくつか暗殺者の死体が転がっている。
一見こちらが優勢かのように思えるが、騎士たちもかなり傷を負っている。
「みんな……!」
傷付いた彼らの姿に、胸が痛くなる。
何も出来ない自分がとても情けない。
(お願い、神様……!)
それからしばらくして、ようやく戦いが落ち着いてきた。
暗殺者が全員倒れたのを確認した私は、ゆっくりと馬車の扉を開けて外へ出た。
「殿下!」
「セシリア!」
私はすぐに返り血を浴びている殿下に駆け寄った。
「殿下、お怪我はしていませんか?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
「良かったです」
周囲に目をやると、傷を負った騎士たちが座り込んでいる。
「すぐに治療をしないと……」
「そうだな」
私は血まみれで地面に倒れている騎士に声をかけた。
「大丈夫ですか?しっかりしてください!」
「ううっ……」
私が話しかけると、彼は苦しそうにうめき声を上げた。
「あ、ああ……フルール公爵令嬢……」
「すぐに止血を……」
「令嬢……すみません……」
申し訳なさそうな顔をする騎士に、私はニッコリと笑いかけた。
「お気になさらないでください、私たちのために戦ってくださってありがとうございます」
「……」
騎士は何か思うところがあるのか、グッと俯いた。
「本当にすみません……フルール嬢……」
「……?」
小さく呟かれたその声に違和感を感じて彼の顔を見ると、突然後ろにいた殿下が大声で叫んだ。
「セシリア、そいつから離れろ!!!」
「――え?」
前に出た殿下が私を突き飛ばした。
「キャッ!!!」
地面に倒れ込んだ私は、目の前に広がった光景を見てあ然とした。
「うっ……」
――騎士が隠し持っていた短剣が殿下の胸に深々と突き刺さっていたのだ。
「殿下!!!」
他の騎士たちがすぐに男を取り押さえた。
私はその場に倒れた殿下に駆け寄り、彼の体を抱き締めた。
そんな殿下を見た男は狂気的な笑みを浮かべて呟いた。
「ああ、外れてしまった。まぁ、殿下でも良いか別に」
その発言に猛烈な怒りがこみ上げてくる。
「一体何が目的でこのようなことを……!」
「貴方の父であるフルール公爵に人生を壊された者の復讐……とでも言っておきましょう」
男は満足そうに笑った。
(私のお父様に人生を壊されたですって……?)
何のことを言っているのかよく分からないが、今はそれどころではない。
「セ……シリア……」
「殿下、しっかりしてください!」
胸の傷はかなり深く、彼の命の灯火が消えかかっていることをひしひしと感じた。
(そんな、殿下……!)
――殿下が死んでしまう。
やっと幸せになれたのに。
やっとすれ違っていた想いが通じ合って二人一緒になれたのに。
こんなところで終わってしまうというのか。
離れ離れになってしまうのか。
「セシリア……」
「殿下……!」
目から大粒の涙が溢れた。
彼はそんな私を見て困ったようにクスリと笑った。
最後に私の姿を見れて幸せだとでも言うように優しく微笑みながら彼がそっと目を閉じたそのとき――
(お願い、彼を助けて……!)
強くそう願ったのと同時に、真っ白な光が辺りを包み込んだ。
光は瞬く間に殿下の傷を癒やし、彼は再び目覚めた。
「……殿下?」
「……俺は、生きているのか?」
茫然とする殿下。
私も驚きすぎて言葉が出ない。
しかし、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
「殿下!!!」
私は起き上がった彼に思いきり抱き着いた。
そして胸で安堵の涙を流した。
「本当に良かったです……!」
「セシリア……」
彼は泣き崩れる私を優しく抱き締め返した。
殿下や騎士たちと違って剣を振るうことも出来ない私にはこうしているほかないのだ。
(殿下……どうか皆無事でいて……!)
外から激しく剣がぶつかり合う音が聞こえてくる。
殿下は誰よりも強いからきっと死ぬことは無いと信じているが、何故か嫌な予感が拭えなかった。
(今すぐにでも彼らの様子を見に行きたいけれど、きっと私が出ても足手まといになるだけ……)
そんなことを考えながら馬車の中でじっとしていると、再び頭の中に映像が流れてきた。
殿下や騎士たちがローブを着た暗殺者たちと戦っている様子だった。
「殿下……!」
足元にはいくつか暗殺者の死体が転がっている。
一見こちらが優勢かのように思えるが、騎士たちもかなり傷を負っている。
「みんな……!」
傷付いた彼らの姿に、胸が痛くなる。
何も出来ない自分がとても情けない。
(お願い、神様……!)
それからしばらくして、ようやく戦いが落ち着いてきた。
暗殺者が全員倒れたのを確認した私は、ゆっくりと馬車の扉を開けて外へ出た。
「殿下!」
「セシリア!」
私はすぐに返り血を浴びている殿下に駆け寄った。
「殿下、お怪我はしていませんか?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
「良かったです」
周囲に目をやると、傷を負った騎士たちが座り込んでいる。
「すぐに治療をしないと……」
「そうだな」
私は血まみれで地面に倒れている騎士に声をかけた。
「大丈夫ですか?しっかりしてください!」
「ううっ……」
私が話しかけると、彼は苦しそうにうめき声を上げた。
「あ、ああ……フルール公爵令嬢……」
「すぐに止血を……」
「令嬢……すみません……」
申し訳なさそうな顔をする騎士に、私はニッコリと笑いかけた。
「お気になさらないでください、私たちのために戦ってくださってありがとうございます」
「……」
騎士は何か思うところがあるのか、グッと俯いた。
「本当にすみません……フルール嬢……」
「……?」
小さく呟かれたその声に違和感を感じて彼の顔を見ると、突然後ろにいた殿下が大声で叫んだ。
「セシリア、そいつから離れろ!!!」
「――え?」
前に出た殿下が私を突き飛ばした。
「キャッ!!!」
地面に倒れ込んだ私は、目の前に広がった光景を見てあ然とした。
「うっ……」
――騎士が隠し持っていた短剣が殿下の胸に深々と突き刺さっていたのだ。
「殿下!!!」
他の騎士たちがすぐに男を取り押さえた。
私はその場に倒れた殿下に駆け寄り、彼の体を抱き締めた。
そんな殿下を見た男は狂気的な笑みを浮かべて呟いた。
「ああ、外れてしまった。まぁ、殿下でも良いか別に」
その発言に猛烈な怒りがこみ上げてくる。
「一体何が目的でこのようなことを……!」
「貴方の父であるフルール公爵に人生を壊された者の復讐……とでも言っておきましょう」
男は満足そうに笑った。
(私のお父様に人生を壊されたですって……?)
何のことを言っているのかよく分からないが、今はそれどころではない。
「セ……シリア……」
「殿下、しっかりしてください!」
胸の傷はかなり深く、彼の命の灯火が消えかかっていることをひしひしと感じた。
(そんな、殿下……!)
――殿下が死んでしまう。
やっと幸せになれたのに。
やっとすれ違っていた想いが通じ合って二人一緒になれたのに。
こんなところで終わってしまうというのか。
離れ離れになってしまうのか。
「セシリア……」
「殿下……!」
目から大粒の涙が溢れた。
彼はそんな私を見て困ったようにクスリと笑った。
最後に私の姿を見れて幸せだとでも言うように優しく微笑みながら彼がそっと目を閉じたそのとき――
(お願い、彼を助けて……!)
強くそう願ったのと同時に、真っ白な光が辺りを包み込んだ。
光は瞬く間に殿下の傷を癒やし、彼は再び目覚めた。
「……殿下?」
「……俺は、生きているのか?」
茫然とする殿下。
私も驚きすぎて言葉が出ない。
しかし、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
「殿下!!!」
私は起き上がった彼に思いきり抱き着いた。
そして胸で安堵の涙を流した。
「本当に良かったです……!」
「セシリア……」
彼は泣き崩れる私を優しく抱き締め返した。
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