愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの

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三章

愛される王妃

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「お嬢様、とっても綺麗です……!」
「ありがとう、ミリア」


陛下が即位してから一ヶ月。
今日は私と彼の結婚式で、私が王妃になる日だ。


(前世では幸せな結婚とは程遠かったけれど……)


純白のウエディングドレスに身を包んだ私は、控室で待機していた。
そこにある人物がやってくる。


「セシリア……」
「お父様」


私のドレス姿を見たお父様の目に涙が滲んだ。
お父様が記憶を全て取り戻し、少しずつ公爵邸は変化していった。
タブーとなっていたお母様のことも、冷え切っていた父と私との関係も。


これまでのことに関しては一生をかけて償っていくとお父様は言った。
最初は複雑な気持ちだったが、本当は愛されていたのだと思うと、胸の奥が温かくなった。


「とても綺麗だ……リーナによく似ている……」
「ありがとうございます……」


お父様は軽く目元を拭うと、私に手を差し出した。
その優しい仕草も、今ではだいぶ慣れた。


「行こう、陛下が待っている」
「はい、お父様」


お父様にエスコートされ、陛下の元へと向かう。
部屋を出てしばらく歩くと、こちらに背を向けて立っている陛下の姿が見えた。


そこでお父様は私の手を離した。


「――陛下」


自由になった右手で彼の肩を優しく叩く。
振り返った陛下が私を見て目を丸くした。


「セシリア……!」
「陛下」


彼はこみ上げてくる笑いを堪えきれないというように口元を手で押さえて呟いた。
そんな彼も、今は真っ白なタキシードを着ている。


「とても綺麗だな……世界で一番美しい」
「大げさです、陛下」


昔のクールで冷静な彼は一体どこに行ったのか。
貴族たちが見たらさぞ驚くだろう。


「陛下、娘をよろしくお願い致します」
「ああ、絶対に守り抜いてみせる。だから安心するといい」


背後に控えていたお父様が目に涙を浮かべて言った。
その姿は紛れもなく愛する娘の幸せを願う父親だった。


そんなお父様に私の幸せを約束する陛下。
私まで泣いてしまいそうになる。


「行こう、セシリア」
「はい、陛下」


差し出した彼の手を取った私は、二人並んでバージンロードを歩いた。
多くの貴族たちが参列し、私たちの結婚を祝っている。


「セシリア様!」
「フルール嬢!」


既に号泣しているマリア・ヘレイス男爵令嬢とその横で笑うフォンド侯爵令嬢。
後ろにはフォンド侯爵令息や何度もお茶会をした友人たちもいる。


「二人とも!幸せになれよ!」
「陛下……フルール公爵令嬢……」


陛下の側近であるダリウス様やマルク様も訪れていた。
前世とは明らかに違う。


この場にいる全員が私たちを祝っている。
私は今とても幸せだ。


しばらく歩くと、私たちは向かい合わせになって止まった。
彼と目を合わせるのが恥ずかしくて下を向いていると、柔らかい声が耳に入った。


「――セシリア、俺の目を見ろ」
「陛下……」


顔を上げると、優しく微笑む彼が目に入った。


「愛してる」


彼は私の頬に手を添え、ゆっくりと顔を近付けた。
目を閉じると、柔らかいものが唇に触れる。


それと同時に、会場のあちこちで祝福の声が上がった。
目を開けると、彼が額を合わせて笑った。
その笑顔に、私もつられて笑ってしまう。


(お母様……私……やっと幸せになりました……)


天国にいるであろう母に向けて、心の中でそう呟いた。


愛されなかった公爵令嬢が、愛される王妃となった。
間違いなく、私の人生で最も幸せな日だった。






―――――――――――――――――――


ここまで読んでくださってありがとうございました!
なかなか更新出来なかったのに完結まで読んでくださって本当にありがとうございます!


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