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49 第四皇女
「……第四皇女殿下にご挨拶申し上げます」
「まぁ、そんなに堅くならないでください。セレナイト公女様のことは私もよく知っています」
リラはフフッと優雅に微笑んだ。
その姿は我儘な悪女にはとても見えなかった。
「父上、母上、フィオナ。紹介します。私が結婚を考えている皇女殿下です」
「まぁ……」
キースの恋人が皇女だったことに、両親は驚きの声を上げた。
しかし、ずっと女性に興味の無かった彼が身を固める決意をしたことが嬉しいのか、反対はしなかった。
その中で誰よりも驚いていたのはフィオナだった。
リラ第四皇女殿下といえば、皇帝からも見放され、捨てられた皇女として有名だったからだ。
そんな彼女を妻として押し付けられた兄にずっと同情していたのに。
「皇女殿下、上がってください。皇宮に比べると小さな家ですが……」
「いえ、セレナイト公爵邸はとても素敵な場所です」
リラはキースの手を取って邸宅に入った。
その姿は上品で、穏やかな女性のように見えた。
それからすぐ、リラとセレナイト公爵一家での晩餐会が幕を開けた。
本当なら相手のご両親も呼ぶところだが、リラの母親は既に亡くなっているうえ、皇帝陛下は自身の子供たちに興味が無い。
「リラ皇女殿下はとても優しいんですのね」
「いえいえ、そんなことはありません」
リラはすぐに公爵夫妻と打ち解けた。
「こんな冷たい男の婚約者で本当にいいんですか?皇女殿下ならもっと良い相手を捕まえられるでしょうに」
「キース様はとっても素敵な方です。私はキース様と結婚したいんです」
彼女は終始キースの隣で幸せそうに微笑んでいた。
その姿は、完璧な恋人同士のように見える。
フィオナは正面に座るリラに尋ねた。
「あの……お兄様とはどのようにして出会ったのですか?」
「キース様とは皇宮で出会いました。兄弟たちになじめず、一人ぼっちでいた私を助けてくれたのが彼なんです」
リラは照れたように笑った。
「助けた?お兄様がですか?」
フィオナは懐疑的な目で彼を見た。
そんな妹の視線を不快そうにキースは受け止めた。
「はい……キース様は私の事情を知ってもなお、私を受け入れてくださいました。彼はとっても優しい方です」
「……優しい?」
リラ以外の全員の視線がキースに集中した。
「……やめろ、そんな目で見るな」
キースは身内にはまぁ不器用な優しさを見せるが、他人にはあまり興味のないタイプだった。
そんな彼が初めて会った皇女に優しくするなんて。
(やっぱり、何か考えがあるのでは?)
フィオナは深刻な面持ちでリラに助言した。
「殿下、今からでもやめておいたほうがいいのではないですか?もっと良い相手がいますよ」
「そ、そんな!私はキース様がいいんです!」
「フィオナ、お前最近俺が優しいからって調子に乗りすぎだ」
険しくなるキースの顔に、フィオナは慌てて口を噤んだ。
「まぁ、そんなに堅くならないでください。セレナイト公女様のことは私もよく知っています」
リラはフフッと優雅に微笑んだ。
その姿は我儘な悪女にはとても見えなかった。
「父上、母上、フィオナ。紹介します。私が結婚を考えている皇女殿下です」
「まぁ……」
キースの恋人が皇女だったことに、両親は驚きの声を上げた。
しかし、ずっと女性に興味の無かった彼が身を固める決意をしたことが嬉しいのか、反対はしなかった。
その中で誰よりも驚いていたのはフィオナだった。
リラ第四皇女殿下といえば、皇帝からも見放され、捨てられた皇女として有名だったからだ。
そんな彼女を妻として押し付けられた兄にずっと同情していたのに。
「皇女殿下、上がってください。皇宮に比べると小さな家ですが……」
「いえ、セレナイト公爵邸はとても素敵な場所です」
リラはキースの手を取って邸宅に入った。
その姿は上品で、穏やかな女性のように見えた。
それからすぐ、リラとセレナイト公爵一家での晩餐会が幕を開けた。
本当なら相手のご両親も呼ぶところだが、リラの母親は既に亡くなっているうえ、皇帝陛下は自身の子供たちに興味が無い。
「リラ皇女殿下はとても優しいんですのね」
「いえいえ、そんなことはありません」
リラはすぐに公爵夫妻と打ち解けた。
「こんな冷たい男の婚約者で本当にいいんですか?皇女殿下ならもっと良い相手を捕まえられるでしょうに」
「キース様はとっても素敵な方です。私はキース様と結婚したいんです」
彼女は終始キースの隣で幸せそうに微笑んでいた。
その姿は、完璧な恋人同士のように見える。
フィオナは正面に座るリラに尋ねた。
「あの……お兄様とはどのようにして出会ったのですか?」
「キース様とは皇宮で出会いました。兄弟たちになじめず、一人ぼっちでいた私を助けてくれたのが彼なんです」
リラは照れたように笑った。
「助けた?お兄様がですか?」
フィオナは懐疑的な目で彼を見た。
そんな妹の視線を不快そうにキースは受け止めた。
「はい……キース様は私の事情を知ってもなお、私を受け入れてくださいました。彼はとっても優しい方です」
「……優しい?」
リラ以外の全員の視線がキースに集中した。
「……やめろ、そんな目で見るな」
キースは身内にはまぁ不器用な優しさを見せるが、他人にはあまり興味のないタイプだった。
そんな彼が初めて会った皇女に優しくするなんて。
(やっぱり、何か考えがあるのでは?)
フィオナは深刻な面持ちでリラに助言した。
「殿下、今からでもやめておいたほうがいいのではないですか?もっと良い相手がいますよ」
「そ、そんな!私はキース様がいいんです!」
「フィオナ、お前最近俺が優しいからって調子に乗りすぎだ」
険しくなるキースの顔に、フィオナは慌てて口を噤んだ。
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