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31 お出かけ
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領地に来てから数日が経った。
今日は私とエドモンドが伯爵領で暮らす最後の日である。
まだ子供とはいえ、エドモンドは伯爵家の後継者だった。
そのため、長くここにとどまるわけにはいかないのである。
(本当にあっという間だったなぁ……)
もうすぐここを離れなければいけないのだと思うと何だか寂しくなる。
今私たちは、最後の最後に思い出を作るために家族全員でお出かけをしていた。
「エドモンド」
「お祖父様!」
近くにあった店でソフトクリームを買ってきたお父様が、それをエドモンドに手渡した。
「わぁ!とっても美味しそう!ありがとうございます、お祖父様!」
エドモンドが笑みを浮かべながらソフトクリームを受け取ると、お父様は顔を綻ばせた。
(もう、本当に甘いんだから……)
お父様は家族たちの中でも最もエドモンドに甘い。
私やお母様以上である。
エドモンドは本当に良い子なので、そんなお父様の気持ちも理解出来ないことは無いが。
「ほら、エミリア。お前の分も買ってあるぞ」
「え、私の分も?」
そう言いながらお父様はもう片方の手に持っていたチョコレート味のソフトクリームを私に差し出した。
(お父様……)
どうやら私がチョコレート味のアイスが好きだということを覚えていたらしい。
エドモンドのを買うついでに私の分も買ってきてくれたというわけだ。
(私はもう子供じゃないのに……)
いつまでも子供扱いしてくる父に少し照れ臭さを覚えながらも、私は素直にお礼を言った。
「ありがとう、お父様」
それから私たちはエドモンドを近くにあったベンチに座らせ、一度休憩を取った。
「これ、本当に美味しいです!」
「そうか、それは良かった」
「叔母さんのそれは美味しいですか?」
「ええ、とっても美味しいわよ」
エドモンドは物珍しそうに私の持っているソフトクリームを眺めた。
「僕のとは色が違います」
「これはチョコレート味なのよ。一口食べてみる?」
「え、良いんですか!食べてみたいです!」
店から貰ったスプーンで一口分ソフトクリームをすくった私は、そっとエドモンドの口に運んだ。
「わぁ、こっちも美味しいです!」
「ふふふ、良かったわ。もっと食べる?」
「良いんですか!」
(せっかくお父様が私に買ってきてくれたけど……)
私は自分の分のソフトクリームをほとんどエドモンドにあげてしまった。
可愛いのだから仕方が無い。
食べ終えた後、私はエドモンドの口の周りに付いているクリームを持っていたハンカチで丁寧に拭いた。
私たちが食べ終わったのを確認したお父様とお母様が口を開いた。
「次はどこに行こうか」
「どこでも!お祖父様とお祖母様と叔母さんと行くところならどこだって楽しいです!」
「エドモンド……」
まだ七歳なのに何て良い子なんだ。
仮にお世辞だったとしてもこれは純粋に嬉しい。
結局、私たちはお母様の提案で行くところが決まるまで適当に街を散歩することになった。
私は三人の少し後ろを歩きながら久しぶりに訪れた領の街並みを眺めてみる。
(伯爵領も昔と比べたらだいぶ違う気がするわね……)
何だか前に来たときよりも活気に満ちている気がする。
前にとは言ってもオリバー様と結婚するよりも昔のことなので十年以上前の話だが。
(……何か私、今ものすごい自由を満喫してない?)
そう思うと何だか嬉しくなる。
今の私は何にも縛られていない、ただのエミリアだ。
あの頃とは違う。
(修道院に行くまでこのまま人生を謳歌してやるんだから!)
「…………あれ?」
そう意気込んだ私は、突如足を止めた。
長らく街並みに目を奪われていて気付かなかったが、前を歩いていたはずの三人の姿がどこにも見えない。
(お父様?お母様?エドモンド?)
周囲を見渡してみるも、どこにも彼らの姿は無い。
私は今完全に一人ぼっちだ。
(ま、待って……もしかして……)
この状況が意味するのはただ一つ。
どうやら私ははぐれてしまったようだ。
(ちょっと待ってよ!この年で迷子だなんて、恥ずかしい!)
私、エミリア・ログワーツは三十を前にして迷子になってしまったのだった。
今日は私とエドモンドが伯爵領で暮らす最後の日である。
まだ子供とはいえ、エドモンドは伯爵家の後継者だった。
そのため、長くここにとどまるわけにはいかないのである。
(本当にあっという間だったなぁ……)
もうすぐここを離れなければいけないのだと思うと何だか寂しくなる。
今私たちは、最後の最後に思い出を作るために家族全員でお出かけをしていた。
「エドモンド」
「お祖父様!」
近くにあった店でソフトクリームを買ってきたお父様が、それをエドモンドに手渡した。
「わぁ!とっても美味しそう!ありがとうございます、お祖父様!」
エドモンドが笑みを浮かべながらソフトクリームを受け取ると、お父様は顔を綻ばせた。
(もう、本当に甘いんだから……)
お父様は家族たちの中でも最もエドモンドに甘い。
私やお母様以上である。
エドモンドは本当に良い子なので、そんなお父様の気持ちも理解出来ないことは無いが。
「ほら、エミリア。お前の分も買ってあるぞ」
「え、私の分も?」
そう言いながらお父様はもう片方の手に持っていたチョコレート味のソフトクリームを私に差し出した。
(お父様……)
どうやら私がチョコレート味のアイスが好きだということを覚えていたらしい。
エドモンドのを買うついでに私の分も買ってきてくれたというわけだ。
(私はもう子供じゃないのに……)
いつまでも子供扱いしてくる父に少し照れ臭さを覚えながらも、私は素直にお礼を言った。
「ありがとう、お父様」
それから私たちはエドモンドを近くにあったベンチに座らせ、一度休憩を取った。
「これ、本当に美味しいです!」
「そうか、それは良かった」
「叔母さんのそれは美味しいですか?」
「ええ、とっても美味しいわよ」
エドモンドは物珍しそうに私の持っているソフトクリームを眺めた。
「僕のとは色が違います」
「これはチョコレート味なのよ。一口食べてみる?」
「え、良いんですか!食べてみたいです!」
店から貰ったスプーンで一口分ソフトクリームをすくった私は、そっとエドモンドの口に運んだ。
「わぁ、こっちも美味しいです!」
「ふふふ、良かったわ。もっと食べる?」
「良いんですか!」
(せっかくお父様が私に買ってきてくれたけど……)
私は自分の分のソフトクリームをほとんどエドモンドにあげてしまった。
可愛いのだから仕方が無い。
食べ終えた後、私はエドモンドの口の周りに付いているクリームを持っていたハンカチで丁寧に拭いた。
私たちが食べ終わったのを確認したお父様とお母様が口を開いた。
「次はどこに行こうか」
「どこでも!お祖父様とお祖母様と叔母さんと行くところならどこだって楽しいです!」
「エドモンド……」
まだ七歳なのに何て良い子なんだ。
仮にお世辞だったとしてもこれは純粋に嬉しい。
結局、私たちはお母様の提案で行くところが決まるまで適当に街を散歩することになった。
私は三人の少し後ろを歩きながら久しぶりに訪れた領の街並みを眺めてみる。
(伯爵領も昔と比べたらだいぶ違う気がするわね……)
何だか前に来たときよりも活気に満ちている気がする。
前にとは言ってもオリバー様と結婚するよりも昔のことなので十年以上前の話だが。
(……何か私、今ものすごい自由を満喫してない?)
そう思うと何だか嬉しくなる。
今の私は何にも縛られていない、ただのエミリアだ。
あの頃とは違う。
(修道院に行くまでこのまま人生を謳歌してやるんだから!)
「…………あれ?」
そう意気込んだ私は、突如足を止めた。
長らく街並みに目を奪われていて気付かなかったが、前を歩いていたはずの三人の姿がどこにも見えない。
(お父様?お母様?エドモンド?)
周囲を見渡してみるも、どこにも彼らの姿は無い。
私は今完全に一人ぼっちだ。
(ま、待って……もしかして……)
この状況が意味するのはただ一つ。
どうやら私ははぐれてしまったようだ。
(ちょっと待ってよ!この年で迷子だなんて、恥ずかしい!)
私、エミリア・ログワーツは三十を前にして迷子になってしまったのだった。
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