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7 夫と義母
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「ウィルベルト、よく来たわね!」
「お待たせしました、母上」
朝食の席に現れた息子の姿を見て、夫人は顔を綻ばせた。
(このお方が公爵様……)
幾度か舞踏会で見かけたことはあったが、改めて見るととても整った顔立ちをしている。
その中でも特に宝石のように輝く青色の瞳は近くで見ると目が離せなくなってしまうほど美しかった。
ウィルベルトは自身の母親に挨拶をした後、私の方を一度も見ることなく席に着いた。
「ちょうど貴方の話をしていたのよ。昨日は式へ来なかったけれど、どこへ行っていたのかしら?」
「どうしても外せない用があって参加することが出来ませんでした」
「そう、なら仕方ないわね……」
私には嫌味ったらしい夫人も、愛する息子にはとても甘いようだ。
じっと二人の姿を眺めていると、夫人がふいにこちらを向いて口を開いた。
「ちょっと、仕事から帰った夫を労う一言すら無いのかしら?」
「あ……」
その言葉でハッとなった私は、ようやく夫となった人に声をかけた。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「……」
返事は無く、黙々と食事を進めている。
「お仕事はいかがでしたか?お疲れではありませんか?」
「……」
二度目の問いかけにも返事は無い。
どうやら私をいない者として扱うつもりのようだ。
(ここまで嫌われているだなんて……)
そんな夫の姿を見た夫人が慌てたように口を開いた。
「大変だわ、本当に疲れているようね」
「平気ですから心配しないでください、母上」
「あら、そう?」
「はい」
さっさと食事を終えると、ウィルベルトが席から立ち上がった。
「今日はこれで失礼します、仕事が残っているので」
「分かったわ」
「あ……いってらっしゃいませ……」
控えめに声をかけたが、当然彼からの返事は無く、そのまま部屋を出て行った。
ウィルベルトが出て行ったことにより、再び夫人と二人きりとなった。
「貴方って本当にノロマで使えないのね」
「え……?」
手を止めて顔を上げると、夫人が不愉快極まりないという顔でこちらを見ていた。
「貴方のせいでウィルベルトの機嫌が悪くなったわ!」
「わ、私のせいですか……?」
「なら私のせいだって言いたいの!?」
「い、いえ……決してそういうわけでは……!」
夫人は椅子から立ち上がると、ヒールの音を鳴らしながらこちらへ歩いてきた。
「ここへ嫁いできた以上、ウィルベルトに相応しい妻でありなさい」
「は、はい……」
そしてグッと顔を近付けると、耳元で囁いた。
「――貴方はただあの子に従順な妻でいればいいの。そういう理由で貴方を選んだんだから」
「……」
それだけ言うと、夫人は踵を返してウィルベルトと同じように部屋を出て行った。
「お待たせしました、母上」
朝食の席に現れた息子の姿を見て、夫人は顔を綻ばせた。
(このお方が公爵様……)
幾度か舞踏会で見かけたことはあったが、改めて見るととても整った顔立ちをしている。
その中でも特に宝石のように輝く青色の瞳は近くで見ると目が離せなくなってしまうほど美しかった。
ウィルベルトは自身の母親に挨拶をした後、私の方を一度も見ることなく席に着いた。
「ちょうど貴方の話をしていたのよ。昨日は式へ来なかったけれど、どこへ行っていたのかしら?」
「どうしても外せない用があって参加することが出来ませんでした」
「そう、なら仕方ないわね……」
私には嫌味ったらしい夫人も、愛する息子にはとても甘いようだ。
じっと二人の姿を眺めていると、夫人がふいにこちらを向いて口を開いた。
「ちょっと、仕事から帰った夫を労う一言すら無いのかしら?」
「あ……」
その言葉でハッとなった私は、ようやく夫となった人に声をかけた。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「……」
返事は無く、黙々と食事を進めている。
「お仕事はいかがでしたか?お疲れではありませんか?」
「……」
二度目の問いかけにも返事は無い。
どうやら私をいない者として扱うつもりのようだ。
(ここまで嫌われているだなんて……)
そんな夫の姿を見た夫人が慌てたように口を開いた。
「大変だわ、本当に疲れているようね」
「平気ですから心配しないでください、母上」
「あら、そう?」
「はい」
さっさと食事を終えると、ウィルベルトが席から立ち上がった。
「今日はこれで失礼します、仕事が残っているので」
「分かったわ」
「あ……いってらっしゃいませ……」
控えめに声をかけたが、当然彼からの返事は無く、そのまま部屋を出て行った。
ウィルベルトが出て行ったことにより、再び夫人と二人きりとなった。
「貴方って本当にノロマで使えないのね」
「え……?」
手を止めて顔を上げると、夫人が不愉快極まりないという顔でこちらを見ていた。
「貴方のせいでウィルベルトの機嫌が悪くなったわ!」
「わ、私のせいですか……?」
「なら私のせいだって言いたいの!?」
「い、いえ……決してそういうわけでは……!」
夫人は椅子から立ち上がると、ヒールの音を鳴らしながらこちらへ歩いてきた。
「ここへ嫁いできた以上、ウィルベルトに相応しい妻でありなさい」
「は、はい……」
そしてグッと顔を近付けると、耳元で囁いた。
「――貴方はただあの子に従順な妻でいればいいの。そういう理由で貴方を選んだんだから」
「……」
それだけ言うと、夫人は踵を返してウィルベルトと同じように部屋を出て行った。
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