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8 嫌がらせ
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私はあの後、侍女の発言を不思議に思ったがとりあえず王妃としての執務を一通りこなした。思ったよりも仕事の量は多く、王妃というのはこんなにもやることが多いのかと少し驚いた。
そして今からは夕食の時間だ。
普通なら夫である国王と共に食事をするものだが、私は王妃と食事をしたことは一度も無かった。
(・・・そういえば、あの女はどこで食事をしていたのだろうか)
王宮にある大きな食堂はいつも私とレアが使っていた。それなら一体王妃はどこで食事をしていたのだろう。
私はそう思いながらも部屋でじっとしていた。きっと侍女が食事をする部屋まで案内してくれるはずだ、とそう思っていた。
そのとき、自室の扉がノックされた。
―コンコン
「王妃陛下、お食事をお持ちいたしました」
そう言って一人の侍女が部屋に入ってきた。
「えっ・・・」
「・・・?王妃陛下?どうかされたのですか?」
「・・・いや、何でもない」
(まさか、あの女は自室で食事をしていたのか・・・?)
私はそのことに衝撃を受けた。
王妃がここに嫁いできてからどのような生活をしていたか私は全く知らなかった。興味すらなかった。あの女のことだから贅沢三昧な暮らしをしているのだろうと思っていたが・・・。
そこで私はクローゼットに目をやった。
(・・・そのわりには、ドレスはシンプルな物が多いし宝石やアクセサリーも少ししかない)
クローゼットの中にあったのはシンプルなデザインのドレスが数枚だけだった。宝石やアクセサリーもほとんどなく、あったとしても安物だ。
(・・・これなら愛妾であるレアの方がよほど良い物を身に着けているぞ)
レアはドレスや宝石を集めることが好きだった。彼女は一回着たドレスは絶対に着ないタイプの人間だ。あのときはレアの欲しいものは何でも買ってあげたいと思っていたが、今はよく分からなかった。
私は彼女が欲しいと言ったものは全て買い与えてきた。しかし、今彼女に何かをねだられたら私はどうするだろうか。
(・・・そういえば、あの女は王宮ではいつも地味な服を着ていたな)
王妃は本当に地味な女だった。私に会うというのに着飾ることすらしていなかった。私のことなどどうだっていいのだと感じた。それと合わせていつも陰鬱な顔をしていたものだから余計に地味に見えた。
あのときはそんな王妃に腹が立った。しかし、今考えてみれば―
(着飾らなかったのではなく、着飾れなかったのか・・・?)
スカスカのクローゼットを見て、私はそう思わざるを得なかった。
「・・・」
「―王妃陛下?どうかなさいました?」
「あ・・・いや・・・何でもない」
私はそこで一旦考えるのをやめ、目の前に食事に手を付けた。いつまでも考え込んでいては怪しまれるだけだ。
そう思って食事をし始めた。
しかし―
「うっ!!!」
私は思わず口に入れた物を吐き出しそうになった。
(何だ、これは!)
私に出された食事は明らかに味付けがおかしかった。しょっぱすぎるのだ。それも吐き出しそうになってしまうほどである。
「こ、これは・・・」
私は食事を持ってきた侍女の方を見た。
「・・・!」
驚くことに、その侍女は私を見て笑みを浮かべていた。
(・・・・・・・・・あれ、この女よく見たら・・・)
そのとき、私はその女に見覚えがあることに気が付いた。
間違いない。この女は―
(・・・・・・レアに仕えている侍女だ)
そりゃあ見覚えがあるはずだ、と思った。彼女はいつもレアの傍にいて、レアが最も信頼を置く侍女だったからだ。
「王妃陛下、何をしていらっしゃるのですか?早くお食べになってください、いつものように」
侍女はそう言ってクスクスと笑った。
「・・・!」
(まさか、あいつはこれを毎日残さず食べていたというのか!?)
そのことに驚くと同時に、王族にこんなものを出していたこの侍女に怒りを覚えた。本当なら皿でも投げつけてやりたいがそんなことをしたら怪しまれるだろう。
(・・・何よりあの女はこれを食べたんだよな)
結局私は、何度か吐き出しそうになりながらも出されたものを全て食べきった。
そして今からは夕食の時間だ。
普通なら夫である国王と共に食事をするものだが、私は王妃と食事をしたことは一度も無かった。
(・・・そういえば、あの女はどこで食事をしていたのだろうか)
王宮にある大きな食堂はいつも私とレアが使っていた。それなら一体王妃はどこで食事をしていたのだろう。
私はそう思いながらも部屋でじっとしていた。きっと侍女が食事をする部屋まで案内してくれるはずだ、とそう思っていた。
そのとき、自室の扉がノックされた。
―コンコン
「王妃陛下、お食事をお持ちいたしました」
そう言って一人の侍女が部屋に入ってきた。
「えっ・・・」
「・・・?王妃陛下?どうかされたのですか?」
「・・・いや、何でもない」
(まさか、あの女は自室で食事をしていたのか・・・?)
私はそのことに衝撃を受けた。
王妃がここに嫁いできてからどのような生活をしていたか私は全く知らなかった。興味すらなかった。あの女のことだから贅沢三昧な暮らしをしているのだろうと思っていたが・・・。
そこで私はクローゼットに目をやった。
(・・・そのわりには、ドレスはシンプルな物が多いし宝石やアクセサリーも少ししかない)
クローゼットの中にあったのはシンプルなデザインのドレスが数枚だけだった。宝石やアクセサリーもほとんどなく、あったとしても安物だ。
(・・・これなら愛妾であるレアの方がよほど良い物を身に着けているぞ)
レアはドレスや宝石を集めることが好きだった。彼女は一回着たドレスは絶対に着ないタイプの人間だ。あのときはレアの欲しいものは何でも買ってあげたいと思っていたが、今はよく分からなかった。
私は彼女が欲しいと言ったものは全て買い与えてきた。しかし、今彼女に何かをねだられたら私はどうするだろうか。
(・・・そういえば、あの女は王宮ではいつも地味な服を着ていたな)
王妃は本当に地味な女だった。私に会うというのに着飾ることすらしていなかった。私のことなどどうだっていいのだと感じた。それと合わせていつも陰鬱な顔をしていたものだから余計に地味に見えた。
あのときはそんな王妃に腹が立った。しかし、今考えてみれば―
(着飾らなかったのではなく、着飾れなかったのか・・・?)
スカスカのクローゼットを見て、私はそう思わざるを得なかった。
「・・・」
「―王妃陛下?どうかなさいました?」
「あ・・・いや・・・何でもない」
私はそこで一旦考えるのをやめ、目の前に食事に手を付けた。いつまでも考え込んでいては怪しまれるだけだ。
そう思って食事をし始めた。
しかし―
「うっ!!!」
私は思わず口に入れた物を吐き出しそうになった。
(何だ、これは!)
私に出された食事は明らかに味付けがおかしかった。しょっぱすぎるのだ。それも吐き出しそうになってしまうほどである。
「こ、これは・・・」
私は食事を持ってきた侍女の方を見た。
「・・・!」
驚くことに、その侍女は私を見て笑みを浮かべていた。
(・・・・・・・・・あれ、この女よく見たら・・・)
そのとき、私はその女に見覚えがあることに気が付いた。
間違いない。この女は―
(・・・・・・レアに仕えている侍女だ)
そりゃあ見覚えがあるはずだ、と思った。彼女はいつもレアの傍にいて、レアが最も信頼を置く侍女だったからだ。
「王妃陛下、何をしていらっしゃるのですか?早くお食べになってください、いつものように」
侍女はそう言ってクスクスと笑った。
「・・・!」
(まさか、あいつはこれを毎日残さず食べていたというのか!?)
そのことに驚くと同時に、王族にこんなものを出していたこの侍女に怒りを覚えた。本当なら皿でも投げつけてやりたいがそんなことをしたら怪しまれるだろう。
(・・・何よりあの女はこれを食べたんだよな)
結局私は、何度か吐き出しそうになりながらも出されたものを全て食べきった。
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