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7 ブローチ
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あの後、私はずっと自室で呆然としていた。
気付けばもう夜だった。レアも王妃も既に寝ている頃だろう。
(・・・信じられない。いや、信じたくない。)
あの侍女の話を聞いて私はずっと考え込んでいた。あの侍女の様子からして嘘をついているとは思えなかった。だけど、レアがそのようなことをするというのも私からしたらまた信じられないことだった。
(私は・・・どちらを信じればいい・・・?)
私はそればかりを考えていた。本当なら愛する女の方を信じたかった。しかし、あんな姿を見たあとではよく分からなかった。
(・・・今日は疲れた、もう寝よう。また明日考えればいいことだ。)
私はそう思ってベッドに横になった。
王族の部屋に備え付けられているベッドというのは無駄に広い。王妃は華奢な体をしているから余計に広く感じた。それと同時に、どこか寂しさを感じている自分もいた。
(王妃は・・・結婚してからずっとこんな思いをしていたのか・・・?)
私はあの女の部屋に訪れたことはない。行きたくもなかった。夜はいつも愛しいレアと過ごしていた。
あの女の気持ちなど考えたこともなかった。
(・・・もしかしたら、私は随分前から間違えていたのかもしれないな。)
そう思いながらも、私は目を閉じて眠りについた。
◇◆◇◆◇◆
朝になった。
(体が戻るまであと二日か・・・。)
あと二日もすれば元の体に戻れるというのに、何故だか私の気持ちは沈んだままだった。自分でもよく分からない。レアに会いたいという気持ちもいつの間にかなくなっていた。
私はそんな気持ちのままベッドから起き上がった。
「ん・・・?あれは・・・」
そのとき、私は王妃の机の上にあった”ある物”に目を奪われた。
それにはどこか見覚えがあった。懐かしい感じがする。
(間違いない。あれは―)
私が昔、王妃の誕生日に贈ったブローチだ。
(何故あれがあんなところにあるんだ?私があれを贈ったのは・・・)
もう、十年以上も前の話だ。
そんな昔の物を何故今も持っているのか。あのブローチに特別な思い入れがあるわけでもない。私はそのことが不思議でたまらなかった。
そんな私に気付いたのか、部屋にいた侍女が声をかけた。昨日声を荒げていた侍女とは別の侍女だ。
「王妃陛下、陛下から頂いたあのブローチを本当に大切にされていますよね。」
「え?あ、あぁ・・・」
私はわけも分からず、ただ頷くことしか出来なかった。
「王妃陛下は、本当に陛下のことが大好きなのですね。」
「・・・」
(好き・・・だと?あの女が、私のことをか?)
この侍女は一体何を言っているんだ。あの女が私を好きだなんてそんなことあるはずがない。現に、十年以上も婚約していながら一度もそんなことは言ってこなかった。
私は侍女のその言葉の意味が理解出来なかった。
気付けばもう夜だった。レアも王妃も既に寝ている頃だろう。
(・・・信じられない。いや、信じたくない。)
あの侍女の話を聞いて私はずっと考え込んでいた。あの侍女の様子からして嘘をついているとは思えなかった。だけど、レアがそのようなことをするというのも私からしたらまた信じられないことだった。
(私は・・・どちらを信じればいい・・・?)
私はそればかりを考えていた。本当なら愛する女の方を信じたかった。しかし、あんな姿を見たあとではよく分からなかった。
(・・・今日は疲れた、もう寝よう。また明日考えればいいことだ。)
私はそう思ってベッドに横になった。
王族の部屋に備え付けられているベッドというのは無駄に広い。王妃は華奢な体をしているから余計に広く感じた。それと同時に、どこか寂しさを感じている自分もいた。
(王妃は・・・結婚してからずっとこんな思いをしていたのか・・・?)
私はあの女の部屋に訪れたことはない。行きたくもなかった。夜はいつも愛しいレアと過ごしていた。
あの女の気持ちなど考えたこともなかった。
(・・・もしかしたら、私は随分前から間違えていたのかもしれないな。)
そう思いながらも、私は目を閉じて眠りについた。
◇◆◇◆◇◆
朝になった。
(体が戻るまであと二日か・・・。)
あと二日もすれば元の体に戻れるというのに、何故だか私の気持ちは沈んだままだった。自分でもよく分からない。レアに会いたいという気持ちもいつの間にかなくなっていた。
私はそんな気持ちのままベッドから起き上がった。
「ん・・・?あれは・・・」
そのとき、私は王妃の机の上にあった”ある物”に目を奪われた。
それにはどこか見覚えがあった。懐かしい感じがする。
(間違いない。あれは―)
私が昔、王妃の誕生日に贈ったブローチだ。
(何故あれがあんなところにあるんだ?私があれを贈ったのは・・・)
もう、十年以上も前の話だ。
そんな昔の物を何故今も持っているのか。あのブローチに特別な思い入れがあるわけでもない。私はそのことが不思議でたまらなかった。
そんな私に気付いたのか、部屋にいた侍女が声をかけた。昨日声を荒げていた侍女とは別の侍女だ。
「王妃陛下、陛下から頂いたあのブローチを本当に大切にされていますよね。」
「え?あ、あぁ・・・」
私はわけも分からず、ただ頷くことしか出来なかった。
「王妃陛下は、本当に陛下のことが大好きなのですね。」
「・・・」
(好き・・・だと?あの女が、私のことをか?)
この侍女は一体何を言っているんだ。あの女が私を好きだなんてそんなことあるはずがない。現に、十年以上も婚約していながら一度もそんなことは言ってこなかった。
私は侍女のその言葉の意味が理解出来なかった。
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