結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの

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2話 鋭い言葉

重苦しい空気の中、王太子は苦虫を噛み潰したような顔で続けた。


「死んだのがお前だったのなら、全員が幸せだった。私たちがここまで苦しむことはなかった」
「……」


そのような残忍なことを言われたところで、今さら驚きもしなかった。
ただ口にしなかっただけで、両親も侯爵邸にいる人間たちも全員がそう思っているのはわかりきっていたことだったから。
ただ、いざ言葉にされると、胸がズキズキと痛んだ。


「彼女を失って以来、私は夜も眠れない。そのくせお前は今でものうのうと生きている。シアはもう帰ってこない」
「殿下」
「悪いがお前を抱くことなんてできない」


王太子はそれだけ言うと、荒々しい様子で部屋から出て行った。



***


王太子が部屋から出て行ったあと、私は一人広いベッドで眠りにつき、目が覚めると朝になっていた。
王太子妃になったというのに、使用人の一人も部屋に訪れないとは。


当然だろう。
初夜を行わなかった花嫁がどのような扱いを受けるかなんてわかっていた。


仕方なく一人で着替えを終わらせた私は、執務をする準備を始めた。
王太子妃として遂行しなければならない仕事が山積みだった。
いくら自分が辛い状況にあるとはいえ、サボってなどいられない。


仕事にとりかかろうとしたそのとき、部屋の扉がノックされた。
扉から顔をのぞかせたのは王宮の侍女だった。
彼女は冷たい目で私を見つめていた。
やはり王宮にいる人間は私のことをあまりよく思っていないのだろう。


王太子はシアを愛しており、実際彼らはとてもお似合いなカップルだったからだ。


「殿下、王妃様がお呼びです」
「王妃様が?」
「はい、すぐに部屋に来るようにと」
「わかったわ」


返事をすると、侍女はわざとらしい様子で強く扉を閉めた。


(相変わらずの態度ね、王太子妃として私を尊重する気はないのね)


リタ王国王妃・エリザベート
王太子テオドールの母親で、陛下の唯一の妃だ。
冷たい性格で、誰にでもキツく当たる王妃エリザベートは、シアにだけは優しく接していた。


(たしか王妃様は私をものすごく嫌っていたはず……急にどうして……)


王妃はシアを可愛がる反面、私のことは蛇蝎のごとく嫌っていた。
王家主催のパーティーで彼女に会うと、必ずといっていいほど人前で辱めを受けるのだ。


(本当はシアを王太子と結婚させたかったんだろうな……)


この世界は恐ろしいくらいシアを中心に回っている。
誰もが彼女のことを好きになり、彼女の敵である私を嫌う。


私が彼らに何かしたわけではない。
ただシアにとって邪魔な人間だから、嫌うのだ。


(行ったところで罵倒されるのは目に見えているけれど……)


無視でもしたら何があるかわからない。
私は重い足を動かして王妃の部屋へ向かった。



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