結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの

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4話 全てが壊れた日

その日の夜、夢を見た。
シアが侯爵邸へ来る前の夢。
よく晴れた夏の日のことだった。


私が突然倒れたことで侯爵邸は大騒ぎになった。
両親は国中から名医たちを呼び寄せ、一人娘の治療に尽力した。


『アリサ、走ると危ないわよ』
『平気よお母様、私もう元気だもの!』


母が心配そうな顔で私を見ていた。
足元がふらついて転びそうになったそのとき、横から大きな手が伸びてきた。


『お父様!』
『まだ万全ではないようだな』


父は私を軽々と抱き上げると、そのまま歩き始めた。
横から母が私の頭を優しくなでた。
とても幸せな家族のように見える。


そうだ、父と母はシアが来る前までは優しかった。
どうして忘れていたんだろう。


『アリサ、今日はお前の好きなお菓子を持ってきたんだ』
『まぁ殿下、私のためにわざわざ買ってきてくれたのですか?』
『か、勘違いするな!たまたま私が食べたかったからだ!』
『ありがとうございます、殿下』


殿下も、今ほど私を嫌っていたわけではなかったような気がする。


そのすべてが壊れたのは、あの子がここへきてからだった――


『初めまして、シアといいます。お姉さま』
『……』


十歳になり、私は自分に腹違いの妹がいたことを初めて知った。
そして、父に愛人がいたということも。
信じられなかった、父と母は誰から見ても仲睦まじい夫婦だったから。


シアの母親が亡くなったことにより、侯爵家へ引き取られることになったのだという。


『私の大切な娘なんだ、よくしてやってくれ』
『もちろんです、旦那様。これからよろしくね、シア』


母は父の婚外子が突然現れたのにもかかわらず、ただいつものように優雅な笑みを浮かべているだけだった。


(どうして……どうしてお母様はお父様を問い詰めないの?)


本妻である自分に隠れて別の女性と不倫をしていたうえに、その相手との間に子供まで作っていた。
普通は怒って事情を問い詰めるものではないのだろうか。
しかしそれどころか、母は婚外子のシアを歓迎しているようにも見える。


『シア、屋敷内を紹介しよう。きっと君もここを気に入るはずだ』
『何か欲しいものはない?何だって買ってあげるわ』
『はい、お父様、お義母様!』


呆然とする私のことなど気にも留めず、二人はシアの手を引いて歩き出した。
その日から、彼らの目に私は映らなくなった。


親切にしてくれていた使用人たちもシアを心から愛するようになった。


『お姉さま、私、お姉さまの持っているあの髪飾りが欲しいわ!』
『シア……あれは王太子殿下からいただいたもので……』
『お姉さまったら、ケチね!ここにいる人たちは私の欲しいものは何でもくれるのに!』
『シア……』


『まぁ、アリサお嬢様ったらシアお嬢様に冷たいのね』
『いくらシアお嬢様のほうが愛されているからって、醜いったらありゃしない』


いつからか、私は妹に嫉妬する悪女というレッテルが貼られるようになった。


『シアに譲ってやったらどうだ』
『殿下……ですがあれは殿下が初めて私にくれたもので……』
『……そんなことどうだっていい、妹が欲しがっているのだから与えるべきだろう』
『殿下……』


『本当、どうして妹に優しくできないのかしら』
『育て方を間違えたな』


いつからか、殿下も両親も私をひどく嫌うようになった。
シアが愛されれば愛されるほど、私は嫌われる一方だった。


それから私は侯爵家で肩身の狭い思いをしながら生きる羽目となった。





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