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7 旦那様の暴挙 公爵家の侍女視点
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今、アルデバラン公爵邸の空気は全体的にどんよりと沈んでいる。
「ハァ……」
「ちょっと、しっかりしなさいよ。まだ仕事は終わっていないんだから」
「侍女長だって暗い顔してるじゃないですか」
「……」
使用人の誰もが溜息をつき、覇気が無い。
理由はハッキリしている。
三年前に公爵家へ嫁いできた奥様――アリス様がいなくなったからである。
(奥様、本当に良い人だったなぁ……)
侯爵家のご令嬢が来るというからとても高慢で気位が高い人かと思っていたが、アリス様は全くそんなこと無かった。
むしろ、何だか様子が変だった。
私たち使用人に対して敬語を使うし、旦那様を怯えた顔で見ていた。
初めて顔合わせをした日、侯爵家の令嬢だとは思えないほどみずぼらしい服を着ていたし、体つきもかなり痩せていた。
そのことを不思議に思った私たちは、旦那様に内緒でアリス様の過去や実家の侯爵家について調査をした。
調べた結果、とんでもないことが分かったのだ。
アリス様は侯爵家で虐げられていた。
両親から虐待を受け、いない者として扱われていたのである。
使用人たちの誰もが同情するほどに酷い過去だった。
そのときに私は決めた。
このまだ若い少女のことを奥様として大切にしようと。
「ああ……奥様……」
奥様が家を出て行ったあの日から、私はずっと後悔している。
アリス様を虐げていたあの侯爵家に彼女を帰してしまったのだ。
(これも全部旦那様のせいよ……!旦那様が離婚なんて突き付けなければ……!いいえ、アメリア殿下が帰って来なければ……)
旦那様は奥様の過去を知らない。
奥様が侯爵家でどのような扱いを受けていたのかも。
だからこそ、このような残忍なことを平然と出来るのだ。
(奥様は旦那様を慕っていらしたのに……そして旦那様もおそらく……)
奥様は知らないだろうが、旦那様はアリス様と結婚してから笑顔を取り戻したのだ。
王女殿下という最愛の人を失い、抜け殻のようになっていた旦那様が笑うようになったのは間違いなく奥様がここに来てからなのである。
「――大変よ!みんな!」
部屋の掃除をしている最中、一人の侍女が大慌てで扉を開けて中へ入って来た。
「何、どうしたの!?」
「旦那様が……アメリア王女殿下を公爵邸に滞在させるらしいわ!!!」
(嘘……でしょう……?)
その場の空気が一瞬にして凍った。
「そんな!まだ奥様が出て行って数日しか経っていないのに!」
「……私も驚いたわ。でも、明日にはもう王女殿下がここへ来るそうよ」
「「「……」」」
言葉が出ない。
旦那様は一体何を考えているのか。
(明日王女殿下が来るだなんて……そんな……)
そのとき、部屋に入って来た侍女が声を潜め、遠慮がちに尋ねた。
「ねぇ、皆はさ……あの噂についてどう思う?」
「……王女殿下が王太子殿下に浮気されて離婚したってやつ?」
「うん……」
その問いに、部屋の中に再度沈黙が流れた。
どうやら全員考えていることは同じなようだ。
「こんなこと言ったら王族に対する不敬罪になっちゃうだろうけど……」
「――王女殿下側に問題があったとしか、思えないのよね……」
「ハァ……」
「ちょっと、しっかりしなさいよ。まだ仕事は終わっていないんだから」
「侍女長だって暗い顔してるじゃないですか」
「……」
使用人の誰もが溜息をつき、覇気が無い。
理由はハッキリしている。
三年前に公爵家へ嫁いできた奥様――アリス様がいなくなったからである。
(奥様、本当に良い人だったなぁ……)
侯爵家のご令嬢が来るというからとても高慢で気位が高い人かと思っていたが、アリス様は全くそんなこと無かった。
むしろ、何だか様子が変だった。
私たち使用人に対して敬語を使うし、旦那様を怯えた顔で見ていた。
初めて顔合わせをした日、侯爵家の令嬢だとは思えないほどみずぼらしい服を着ていたし、体つきもかなり痩せていた。
そのことを不思議に思った私たちは、旦那様に内緒でアリス様の過去や実家の侯爵家について調査をした。
調べた結果、とんでもないことが分かったのだ。
アリス様は侯爵家で虐げられていた。
両親から虐待を受け、いない者として扱われていたのである。
使用人たちの誰もが同情するほどに酷い過去だった。
そのときに私は決めた。
このまだ若い少女のことを奥様として大切にしようと。
「ああ……奥様……」
奥様が家を出て行ったあの日から、私はずっと後悔している。
アリス様を虐げていたあの侯爵家に彼女を帰してしまったのだ。
(これも全部旦那様のせいよ……!旦那様が離婚なんて突き付けなければ……!いいえ、アメリア殿下が帰って来なければ……)
旦那様は奥様の過去を知らない。
奥様が侯爵家でどのような扱いを受けていたのかも。
だからこそ、このような残忍なことを平然と出来るのだ。
(奥様は旦那様を慕っていらしたのに……そして旦那様もおそらく……)
奥様は知らないだろうが、旦那様はアリス様と結婚してから笑顔を取り戻したのだ。
王女殿下という最愛の人を失い、抜け殻のようになっていた旦那様が笑うようになったのは間違いなく奥様がここに来てからなのである。
「――大変よ!みんな!」
部屋の掃除をしている最中、一人の侍女が大慌てで扉を開けて中へ入って来た。
「何、どうしたの!?」
「旦那様が……アメリア王女殿下を公爵邸に滞在させるらしいわ!!!」
(嘘……でしょう……?)
その場の空気が一瞬にして凍った。
「そんな!まだ奥様が出て行って数日しか経っていないのに!」
「……私も驚いたわ。でも、明日にはもう王女殿下がここへ来るそうよ」
「「「……」」」
言葉が出ない。
旦那様は一体何を考えているのか。
(明日王女殿下が来るだなんて……そんな……)
そのとき、部屋に入って来た侍女が声を潜め、遠慮がちに尋ねた。
「ねぇ、皆はさ……あの噂についてどう思う?」
「……王女殿下が王太子殿下に浮気されて離婚したってやつ?」
「うん……」
その問いに、部屋の中に再度沈黙が流れた。
どうやら全員考えていることは同じなようだ。
「こんなこと言ったら王族に対する不敬罪になっちゃうだろうけど……」
「――王女殿下側に問題があったとしか、思えないのよね……」
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