泣き虫勇者と泣けない魔王

1章-出会う

1話-泣き虫勇者は行く。

ここは、君のいる世界とは少し違う。
言うなれば、『異世界』。
魔物や勇者、魔王もいる。
人々を魔物の脅威から守る勇者。圧倒的な強さで名を轟かせる魔王。
これは、そんな世界でのある勇者と魔王の物語。
しかし、その勇者には一つ大きな欠点が。
そう。
彼は、
『泣き虫』なのである。







「いやだよぉおおお~行きたくないよぉぉおぉお」
ある素朴な一軒家から泣き声が聞こえる。
彼の名はレオナ。レオナ=アンノルム。
これでも一応一国の勇者である。
勇者であるが、『任務』という言葉を聞いただけで怯えてしまう始末だ。
「行きますよ、レオナ様。大切な任務です。湖に魔物が住み着き、民が困っています。そのうち魔物が民に危害を加えるやもしれません！ここは私たちが行かねばなならないのです！」
快活で美人のこの女性はレオナの側近の一人、ラシス=ローレン。
国の騎士。ランクは最高位の金剛石(ダイヤモンド)だ。
「民が･･････困っている･･････」
「そうです、困っています」
「行くしか？」
「ありません」
「･･････」
「･･････」
しばらくのにらみ合い。
自分が行かねばならないことはよーくわかっている。だがしかし、怖いものは怖い。国の領土である湖に巣くうなんてロクな魔物じゃねーだろ。怖い。
でも、
「･･････わかったよ･･････」
「そうこなくては。さすがレオナ様！」
でも、国が、民が血まみれになるほうが怖い。もう、見たくない。
「こわいなぁ･･････はぁああ･･････」
ブツブツ言いながらも渋々着替えるレオナ。
「ラシス、パイロ呼んできて」
「彼は街の方にいます。先程使い魔を送ったので私たちが先に行っていましょう」
「えっ！･･････りょーかい」
できる側近である。
パイロ=コーツァル。彼もまた、レオナの側近である。勿論国の騎士で、勿論ランクは金剛石(ダイヤモンド)。
「はぁ･･････行くか」
「はい！」
町外れの素朴な一軒家から涙目で目元を赤くして腰に刀をさした勇者が現れる。
なんとも異様である。