自由な女神様!~種族人族、職業女神が首を突っ込んだり巻き込まれたりの物語。脇に聖女を添えて~

時雨

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本編

08.異能とは

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「さて……。あの時以来であるな」
「どうも、はい。あの時ぶりです……」

 やはり、王に報告は上がっていたようだ。先ほどまでの厳かな表情から一転。ニヤリ、と面白そうに笑う。それに苦笑いして、瑞姫はさしあたりない言葉を返した。

「カグラ殿、気づいてたのかい?」
「あはは、まあ」
「気づいていて、あの態度か……。侮れんな」

 最初は心臓に悪い、とは思っていたものの、慣れた。前の世界の上司に似ていて、いつの間にか緊張も探さないでください、と永久に帰ってこない家出をしたのである。シリウス達には、王に会ったことを伝えておらず、ただ親切な人が道案内してくれた、とだけだ。この場にいるものは皆、報告を受けていて驚いてはいないが、彼女が王に気づいていたことには驚いたようだった。
 と、まあ、雑談はここまでにして、本題に入るようシリウスが声をかける。

「さて、カグラ殿に話というのは、シノノメ殿のことだよ」
「あ、はい」
「前に、世界が違うのではないか、と気にしていたからね。貴女の仰ったとおりに質問してみたんだ」

 武器を調達する際に、シリウスとセイラン、リカルドとシゼルには元の世界での職業を異能のことのみ、伏せて伝えてあった。その時に戦えることも伝えたのだが、それは恐らく自分だけでゆりあは無理だろう、ということも。あまりにも平和ボケした雰囲気を持っているので、違う世界なのではないか、ということも伝えてあった。
 シリウスの言う質問とは、“護身術は両親から習っているか”、“学校で護身術の授業があるか”、“異能は知っているか”である。

「ない、と返答があったよ。護身術などそんなに必要ないとも。“異能”も聞いたことないとも」
「やっぱり……。確定ですね。私と彼女では世界が違います。お手数おかけしました。ありがとうございます」
「いえいえ」
「思ったのだが、世界が違うものの、日本とやらは同じなのだろう?そこまで気にすることなのか?」

 シリウスに頭を下げれば、ふんわりと笑って首を横に振られた。気にすることか、と王が言うが、気にすることである。

「んー……。私が戦闘をできると聞いて、じゃあ、東雲さんは?って思いませんでした?」
「……やはり、演技ではなくできないのか」
「できません。絶対に。筋肉なさすぎですし、足さばきも気配も素人同然です。演技ということもありません。表情を取り繕うこともできないようですし」

 そこまで言って、いったん言葉を止めて全員の顔を見回した。瑞姫の思った通り、自分が戦闘できるので、ゆりあもできると思っていたらしい。

「私の世界では、幼少期から護身術を親から習いますので、ある程度戦えるんですよ。犯罪が多発してて身近に死の恐怖がある、っていうのも少なくないです。人を殺すことはご法度なので、手をかける機会はないですけど。まあ、犯罪もそう頻繁に起こることでもないんですけどね」
「では、彼女は本当に素人……。一般人なんですね。貴族のご令嬢ということですか?」
「それも、ないと思いますけどね……。生活水準は、一般人のそれと一緒なんじゃないかな、とは思いましたけど……」

 初日に着ていた服を見る限り、自分の世界のものとそう変わらないように見えた。貴族というのならば、もう少し質のいいものを着ていそうなものであるし、侍女からも教養がなさそうだ、ということも聞いている。

「まあ、確かに、シノノメ殿も自分は平民と言っていたし。とりあえず、この話はここまでで。……さて、カグラ殿。異能って何だい?」

 シリウスの言葉に、ずいぶん直球だな、と思った。今までの会話は“ついで”で、こちらが本題のようだ。いつかは話さなければと思っていたので、構わないが。

「……生まれてくるすべての人間に与えられる能力、ですね」
「魔法とは違うのかな」
「はい。全くもって魔法とは異なります」

 一人ひとり持っている能力は異なり、たとえ似ていても、何かしら違っていること。火を操るものでも、着火条件が“指でこする”“口から吐く”など、また、威力など、様々な理由で若干異なってくる。一定の動物になれる、この世界の魔法のように、属性どれか一つ操れる、植物を操れるなど、多種多様。その異能は、多すぎてすべて把握しきれていないこと。
 前の世界では八百万の神が住んでいるといわれ、古くからの伝承では、神が人間に力を授けるとされていること。異能は一人一つだが、稀に力を授ける人間が被ったのではないかと言われており、二つ持つ人もいること。

「ドライアドの言葉から察するに、カグラ殿は後者……。二つお持ちなのですね」
「えぇ、まあ……。あの、女神ってどの位置になりますか?聖女と比較すると……?」
「トップですね」
「とっぷ」
「女神様ですから。人族、ということですが、魂が欠片と言えど女神様のものですのでヒエラルキーで言えば、頂点になります」

 彼女の疑問に答えてくれたのは、レスニアだ。更には、加護持ち。当然のことであった。なんとなくそうじゃないか、とは思っていたが、聞きたくなかった新事実である。折角、違う世界に来たというのに、超目立つ。目立ちすぎる立場に眩暈がした。これでさらに、異能……魔法とは違う能力もちで、元の世界でも特殊だったこれを暴露してもいいものなのか。しかし、まてよ、と思う。

「本来なら、異能は他人に豪語するのは、暗黙の了解で禁止なんですけど……」

 この世界でのトップであるなら、それだけでもう、しっかりばっちり注目の的。ならばこの異能は、“だって女神だから”の魔法の言葉が使える。どうせ自分一人しかいないし、女神の記録はあまり残っていないとドライアドも言っていた。なら、誤魔化しがきくのではないか、と思えた。
 これから、狙われるかどうかは、そうなってみないとわからない。が、発表されてない今でさえ、知らない気配が自分の周りをウロチョロとしている。追い払われているのか、すぐいなくなる。追い払う側は、守るかのようにして近くに待機しているのは、こっちに来て二日目で気づいたことだ。たまに交代する気配はあるが、今のところ何の問題もない。

「厄介なことでも引き寄せるのか?」
「さっきも言いましたけど、同じ火の異能でも、着火条件や威力も異なってきます。差別が生まれると、妬みや恨みを招きますし、二つ持ちだとさらにですね。危険なんですよ。人間の欲は限りなくて、命さえ奪いかねない危険な異能も多く存在するので」

 リカルドの言葉に頷いた。法律はある。必要でない限り、異能は使用禁止だとか、いろいろ。それでも、馬鹿は湧いて出てくるもので。

「私は二つ持ちで、両方とも攻守ともに優れた面があります。使い勝手も抜群です。一つは普通、ですけどまあ、強い部類でしょうね。もう一つが……、これのおかげで、国の保護指定人間になりました」

 保護指定人間。名前の通り、国の保護指定を受ける人間のことだ。
 指定される人は、その異能のあり方、使い方によって様々だ。例えば、貴重なもの。争いが生まれる火種になる存在。強すぎて、裏に引きずり込まれそうなもの。などある。その人を守る為にある法律の一つで、簡単に死んでしまわないように、国が指定して保護するのだ。
 ちなみに、異能はわかった時点で国に報告する義務がある。毎年百件以上は報告があるので、全ての把握は無謀というものだ。

「お、お待ちくださいっ。重要な秘密を、我々にも教えていただけるのですか!?」

 大げさに言ったのは、第六騎士団団長のフラン・レトナー。

「そうですね。私も初対面の人をそう簡単に信用できるほど、綺麗な人間じゃないので、正直不安もあります。ですけど、遅かれ早かればれると思うんですよ。その時の状況によりますけど、言っておけばよかったと後悔はしたくないんです」

 なんらかの出来事でばれたとき、それがどんな状況かに因るが、最悪の場合、国自体に迷惑がかかるかもしれない。勝手に喚び出したのはこちらの世界の人たちで、こちらの世界での衣食住の保証は喚びだした当人たちがやるのは当然だ。だが、それを差し置いてもかなり待遇がよかった。そこに、聖女になるから、という建前もあるだろう。王族が喚び出したのだから、という建前も。それでも、割と自由にさせてもらえている。
 こちらの世界に来て一月は経つ。その間、ほぼ毎日のように、シリウスは瑞姫のもとを訪れ、リカルドもまた、シリウスほどじゃないにしろ、気にかけてくれている。シュバルツもそうだ。そんな中で、彼らが信用できる人に値するところまで行く時間は大いにあった。
 シリウスやリカルドは、まだ一度も嘘をついてない。言えないことならばはっきり言えない、もしくは秘密、という言葉を使ってくれる。だからこそ、彼女は国に、というより、シリウス達に迷惑をかけたくないと思っていた。王のことは、城下町であった時から、なんとなくこの人信用できそう、と漠然とした思いがあった。

「ただ、団員さんには……、あー、第二と第三の合同訓練を見たあとでは……ちょっと……」
「うむ……、面目ありませんな……」
「あれを信用してくれ、とはさすがに申し上げられません。我々がお聞きしてもよろしいのでしたら、他言無用と誓いましょう」

 セレネイズとソレイユの眉を寄せる表情からして、解決までにはまだ至ってないようだ。他の団長、副団長達も悩みの種らしく、いい顔はしていない。まあ、あの日からそれほど日数はたっていない。言ってすぐに聞くようなら、あぁまでにはなっていないだろう。
 その場の者たちは皆、他言無用と誓います、と言ってくれた。それに嘘偽りがないのを確認し、頷いた。

「私の異能は、水と、――――宝石です」

――――な、なん、だと……!?

 という、心の声が聞こえてくるような、全員が驚いた表情をしていて、思わず笑いそうになった。叫ぶ者もいるかと思ったが、驚きのあまり声が出ないらしい。しかし、それも数秒。動揺は見られるが、冷静になれるくらいには落ち着いたようだ。

「まずは、水のほうから説明しますね。とはいっても、これは簡単で、空気中に含まれる水分を操ります。なんでもできますよ」
「なんでも、とは」

 恐る恐るレスニアはきいてきた。こうやって、と彼女は実際に操って答えを見せる。ピン、と立てた右の人差し指の上に直径10センチチセルくらいの水玉が出来上がり、様々な形へと変化する。

「攻守ともに優れた能力です。私のイメージで自由自在です。詳細は、説明に時間がかかるので今は省かせてもらいますけど。水でできることは、恐らくすべてできる、と思います」
「水で……」
「空気中に含まれる水分、ということは、雨であるとか、海、又は川の近くであれば……、威力?それとも、扱える水分量が増える、ということですかねえ」
「両方ですね。あ、天候を操ることはできないですけど、雨を降らせそうな分厚い雲が空にあれば、雨を促すことは可能ですよ」

 シュバルツの問いに、一つ頷く。実際、水場では独断場と言っていい。普段であれば時間がかかる大技であるが、そこでは短時間で可能だ。雲一つない快晴であれば雨は作れないが、そこに積乱雲があれば、上手くいけば落雷を伴うものになって、雷をも攻撃手段として使えるものになる。手を払えば、水は霧散して消えた。

「この城を、水で満たすこともできる、と?」
「それは、難しいと思います。ここが海、もしくは天候がバケツひっくり返したような大雨の時であれば……、まあ、十分の一くらいはできる……かも?ってところですね。その前に、私が保つかどうかですけど」
「体力を消耗するのですか?」
「それもそうですけど、大技を使うとなれば、絶大な集中力が必要で、えぇっと、要は魔力切れと同じかと思います」
「では、我々魔術師と、そういうところは少なからず似ている、と考えてよろしいんですね」

 魔力を使いすぎると枯渇し、昏睡状態になるところ、だろう。まあ、間違ってはないので、第四騎士団団長イズミル・ウォーレンの言葉には頷いた。
 水の異能に関しては、これくらいでいいだろうか。質問も今はなさそうなので、次。宝石の異能に関して、だ。
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